『はじまりのみち』原恵一監督/6月1日公開
木下惠介監督生誕100年記念映画として作られた。原恵一監督は『河童のクゥと夏休み』『カラフル』の方ではじめての実写作品。
第二次世界大戦中、木下惠介監督(加瀬亮)が病身の母(田中裕子)を疎開させるために、リアカーにのせて、兄の敏三(ユースケ・サンタマリア)と便利屋(濱田岳)の3人で山を越えたという実話が描かれている。
その頃監督は、映画『陸軍』で、会社(松竹)から最後の部分が国の検問にひっかかり、直せ、直さないで、上司と揉めて辞表を出して来たばかりの帰郷だった。
だが、この里帰りは無駄ではなかった。
故郷山梨や道中の中で、これ以後監督が手がける作品の構想の基になったシーンや数々の名場面で出てくる。
根っからの田舎もんを濱田岳(便利屋)が好演していた。
この無学な便意屋さんが時代に合わないと不評に終わった『陸軍』の最終場面を一生懸命語りだすのだ。語っている相手が監督さんとは知らずに・・・。このシーンは泣けた
※2012年のベストテンでこの『陸軍』を福岡のFさんがあげていらっしゃった。
そのとき『陸軍』のことなど、恥ずかしいが何も知らなかった。
チャンスがあれば、木下恵介の作品をたくさん観たいと思う。
『二人で歩いた幾春秋』木下恵介監督/1962年/岐阜ロイヤル劇場
昭和21年、復員した野中義男(佐田啓二)は故郷の山梨で道路工夫になったが、生活は貧しかった。
両親と妻とら江(高峰秀子)と息子・利幸は小さな借家に5人で住んでいた。
誠実な性格がかわれた妻のとら江は土木出張所の小使になり、義男の一家3人は小使室に住むことが許された。
・試写室でお会いする若いお兄さんに是非と薦められたので岐阜に行った。
入ろうとすると、そのお兄さんがちょうど出てこられたところで「ここは、入れ替えなしだから2回も観てしまった」と嬉しそう話しかけてくれた。
そう、ここは500円で入れ替えなしだからいい。日本で何箇所こんな劇場があるのだろうか。
東京では渋谷シネマヴェーラが「旧作2本立てシニア1000円」で入れ替えなし。
私はこの二つしかしらない。
あっ、映画の話しなきゃ。
貧しい夫婦の心温まる人生の旅路が描かれている。つい先日試写で観た『はじまりのみち』で木下恵介の作品をみたいと思ったので岐阜にきたのだが、
淡々と映し出される「家族」や「近隣の人々」を思う、当時ではなんでもない田舎暮らしがとても新鮮に感じた。
貧しい父母をこれ以上の苦労をかけられないと思う息子に「お前が生きがいだ。だから大学は続けてくれ」と涙ながらに懇願する老いた両親。
木下恵介関連の二つの映画ではからずも涙を抑えることができなかった。
持ち味は庶民の生活、そして観ている者を納得させるためか、最後の最後までみせてくれるという点だとおもう。それを「こんなに最後のハッピーエンドまでみせなくっても」と不満をもたせず、
「ア〜、うまく解決して良かった。幸せになれた!」としあわせのおすそ分けをしてもらったような嬉しい気分にさせてくれることだ。
もっと監督さんの作品が観たくなった。当分、岐阜ロイヤル劇場に通うことになりだろう。