
男手一つで子育てをしている水道工事屋のレオ(ヴァレリオ・マスタンドレア)は、反抗的な娘(セレーナ・ピント)はネット上でトラブルに合い、息子(ルカ・ディローディ)はなぜかコウノトリに夢中になり学校をサボるなど、身辺は落ち着かない日々を送っていた。
個性的な佳品。
街の広場にたつ歴史的な銅像に世の中の変わりようをつぶやかせたり、レオの亡くなった奥様の亡霊に愚痴を聞いてもらったりする。それがとっても

家族3人がそれぞれ経験する出来事は辛いことだが、命は無事だからホッとできた。亡くなったママが守ってくれているんだと気持ちが和らいでくる。
脇の俳優も個性派揃い。インテリの偏屈男に『人生、ここにあり!』のジョゼッペ・パッティストン。その下宿人の貧乏絵描きの女性に『ボローニャの夕暮れ』のアルバ・ロルヴァケル。
街の銅像だって、コウノトリだって演技しているように見えてくる。これは公開を熱望したい作品。
最後に皮肉めいたオチもあるが、その「やられた!」感も心地良い。


レコード店経営のウリッセ(カルロ・ヴェルドーネ)、芸能リポーターのフルヴィオ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)、不動産営業のドメニコ(マルコ・ジャッリーニ)の中年男3人は共に離婚経験者。それによって経済的にも住まいにも厳しい状況下にあった。
天国は満席だけど朝日ホールも満席! この男3人はまったくの他人だが、ひょんなことから同居が始まる。1人なら無理だが3人ならどうにかやっていけそうと判断したのだ。
でも、そううまく行くはずもなく、ドタバタといろんなことが降りかかって来る。
口元が緩む程度の笑いはあったが、題名から期待した笑いはなかった。
笑える題材ではあるがイタリア人なら笑って許せることでも、日本人には見過ごせないっていう場面が目についた。例えば、自営するレコード店をぐちゃぐちゃにされても仲直りする男女(女は非常にオカシイ女医)。最後は常識的に丸く収めているが、これが「イタリア喜劇」の本質かとも思った。

生徒に勉学の意欲をわかせようと熱心に取り組む国語の臨時教師・ジョヴァンニ(リッカルド・スカマルチョ)、情熱を失ってしまった美術史の老教師(ロベルト・エルリッカ)、細やかなことに気がつくしっかり者の女校長先生(マルゲリータ・ヴイ)。ローマの高校教師3人の日々を描いている。
心に残る作品。
先生たちの個人的な生活、生徒への関わりかた、教師として踏み外していけないという線上での悩みや決断が現実的にきっちりと描かれている。
いつも派手な格好でよくずる休みする女生徒が、今度は連絡もなしに長い間休んで、しばらくぶりで登校して来て「母親が死んだから休んだ」と言う。
他の生徒は「嘘だ、母娘でいるとこ見たぞ」と言う。教師たちは今までの行いと今回のあまりにもひどい嘘で退学処分にする。
本人は「学校なんか出ても出なくても、私の人生は変わらない」と平然としているが、後から、本当に母親は死んでいて母親の妹(双子)といるところを見られていたのだ。
教師の思い込みや信じてあげられなかった後悔が、ジョヴァンニを打ちのめしていたのは言うまでも無いが、
その生徒は「家まで訪ねて来てくれた」ジョヴァンニ先生にありがとうと言っていた。
全般的に◎の作品ではなかったが、この場面は秀逸だった。これも公開してほしい!