pdf入稿に変更してから、以前のような切った貼ったの手作業はなくなり、集まって行う作業もぐっと減りました。でも、編集を機会に皆で顔を合わせたいもの。Sさんの美味しい手料理で映画談議に花が咲きました。これがなかなか面白い! 映画って、観る人によって、ほんとに感じ方が違うもの。次号には、ぜひ本誌にトークを復活させたいものです。
88号は、6月下旬発行予定です。
さて、無事シネジャの編集も終わって、19日、東京大学 東洋文化研究所で開催された中東映画研究会の企画による「映画から見る中東社会の変容」の第1回研究会に行ってきました。
第1回のテーマは、イラン映画『別離』のはずだったのですが、用意していたブルーレイが機械に対応しなくて、急きょ、次の回に予定していた『忘却のバグダード』に変更されました。ただし、次回までに日本語字幕を付ける予定だった為、日本語字幕なし。アラビア語やヘブライ語でしゃべっているところには英語字幕が付いていたのですが、英語でしゃべっているところは、人によっては聴き取りにくい英語でした。

私自身は、『忘却のバグダード』をアラブ映画祭で日本語字幕付きで観たことがあって、しかも鮮烈に覚えている作品だったので、比較的フォローできました。
(アラブ映画祭、5年前くらいだったかなと思っていたら、なんと、2005年のことでした!)
この映画で一番衝撃だったのは、イラク政府が、イスラエル建国後、イラク国内に住むユダヤ人約12万人の国籍を剥奪し、財産も没収して、手荷物一つでイスラエルに強制移住させたということでした。紀元前597年のバビロン捕囚でイラクに連れて来られたユダヤ人の子孫にとって、それ以来先祖代々住み続けてきた地。それがユダヤ人のための国が出来たからと言って、無理やり移住させられるとは! 母語はアラビア語なのに、慣れないヘブライ語も覚えなければならなかった人たち・・・ アイデンティティーのことなど、いろいろと考えさせられる映画でした。
『忘却のバグダード』は、イラクからイスラエルに移住したユダヤ人作家4人と、イラク系ユダヤ人の両親を持つ女性(ニューヨーク在住)が自らを語るドキュメンタリーですが、随所に挿入されていたのが、『サラー・シャバティ氏』(イスラエル、1964年)の場面でした。去年の東京フィルメックスで組まれた特集上映 日本イスラエル60周年『イスラエル映画傑作選』の内の1本で、イスラエルに移民してきた東方系ユダヤ人一家を描いたユーモアあふれる風刺劇。この映画が挿入されていたことは、記憶に全くなかったので、ちょっと嬉しい驚きでした。
『サラー・シャバティ氏』も、いずれ中東映画研究会で取り上げることになりそうです。

映画上映後には、臼杵先生が急きょ解説もしてくださって、充実の研究会でした。
「映画から見る中東社会の変容」研究会は、今年度計12本の映画を取り上げる予定とのこと。今後も出来るだけ参加したい興味深い研究会です。
http://www.asnet.u-tokyo.ac.jp/files/img/20130619%20midmovie.pdf