渋谷から歩いて8分の東京ウィメンズプラザホール。
華やかさこそはいつもの青山スパイラルに負けるが、スタッフさんたちのきびきびした対応が気持ちよかった。
2日間で5作品観たので、簡単に感想をまとめてみた。
7月・12日〜15日に青山スパイラルで上映されるので、良かったら参考にしていただきたい。
『ヨッシ』エイタン・フォックス監督/イスラエル/日本初上映
軍隊時代の恋人の死から立ち直れないヨッシ。彼は腕のいい心臓外科の医師だが、同僚とも打ち解けず、不眠にさいなまれながら味気ない日々の中、診療を機械的にこなしていた。
そんな時、偶然、亡くなった恋人の母親が受診にやってくる。
この作品は『ヨッシ&ジャガー/第13回上映』の続編。と言っても前作を観ていなくても不都合はない。
主演のヨッシを演じる男優さんが小太りで手もぷっくらしていて私好み。
身体から「ナイーブで優しい」オーラが出ていた。
約10年前の恋人が忘れられなくて、今でも悶々としている様子を見ていて「しっかりしろ!」とイラッとしたが、ヨッシ・ペースの時間で次の「恋」に進んでいけそう・・・という期待感で幕となる。
10年後のヨッシを観たいと思わせる作品だった。
『ヨッシ&ジャガー』の内容は忘れちゃったが、「自衛隊、警察関係の方は500円キャッシュバックします」と場内アナウンスされて、みんな笑ったのを思い出した。
『ミスター・エンジェル』ダン・ハント監督/アメリカ/日本初公開
ゲイポルノの世界に新しいジャンルを築いたトランスセクシュアルのポルノスター・バック・エンジェル。幼少の時から心と身体の性の不一致に悩み続けた彼は、若い時代はファッションモデルとしての成功をつかんだが、薬物乱用や自殺未遂を繰り返し、仕事もうまく行かず、ホームレスにまで転落した。
どこから見てもイケてるマッチョな中年おじさん。
幼い時の写真で見ると紛れもなく「ちょっとお転婆な女の子」だ。
ファッションモデル時代の彼は今とは想像もつかないほど美しい。
彼のポリシーとして男性になりたいが手術などはしない。だが、男らしく身体を保つためにホルモンの薬は飲んでいるので、女性「そのもの」が異様に変形していた。
それは、まるで大きな蝶のようになっていた。
ご両親のインタビューでは、母親の寛容さと、父親の後悔の涙に「今までの葛藤」が滲み出ていた。
『モスキータとマリ』アウロラ・グレロ監督/アメリカ/日本初上映
LAに暮らすメキシコ系のヨランダは大学進学を夢見る15歳の優秀な高校生。両親は教育熱心で暮らし向きもいい。そんなある日、ヨランダの近所に個性的な少女・マリが越してきた。そして、偶然同じクラスなり二人は親しくなる。
ヨランダは裕福な家族、一方のマリは不法移民の家族という境遇の違いが、仲良くなるにしたがって浮き彫りにされていくが、その速度が、知らないもの同士が仲良くなっていくのと同じ速さなので、展開がとても自然だった。
何かが急に変化する事柄はなく、二人の結びつきも淡いもの。青春のちょっと甘酸っぱい思い出として描かれていた。
※モスキータの意味は「虫の羽音や蚊のなきごえ」のことで、マリが付きまとうヨランダのことを「あんたはモスキータみたいにうるさいよ」という台詞がある。
※二人がふざけながら、大きな冷蔵庫のドアに大好きな写真を順番の貼っていくシーンが印象深い場面だった。
『幸せの選択』グレン・ゲイロード監督/アメリカ/日本初上映
ニューヨークでカメラマン助手として働くイギリス人のジャックは、亡き兄の妻子を精神的に支えながら暮らしていた。
就労ビザの更新が却下されたので、ジャックは兄家族のためにアメリカに留まれるように、レズビアンの親友アリと偽装結婚をする。
しかし移民局の強引で執拗な調査に、アリが嘘がばれるのが恐くなり2人は離婚。それならばとジャックのゲイの恋人マノにプロポーズをするが・・・。
一番いいのは世話になっている義理の姉と結婚すればいいのに・・・と思ったが、義理姉には、はっきり断られている。でもどうしてもイギリスには帰りたくなくて、こっちがダメならあっちと、ちょっと強引な展開についていけなかった。
移民局の偽装結婚調べは、娘がオーストラリア人と結婚しているので、こと細かく調べられるのは承知している。だから、そういう知識がないなんて考えられない。
同性婚で配偶者ビザを得ることはできないと言うのも既に知っていないといけない事柄ではなかったのか?と、手厳しくジャックを叱ってしまったが、
彼の姪っ子(亡き兄の忘れ形見/おしゃまで可愛い/全てお見通しの台詞を言う)に免じて、おばぁは許すことにしよう。
『ママったらアルゼンチン』リリアーナ・パオリネッリ/アルゼンチン/日本初上映
40歳のルースは10年以上もガールフレンドと同棲しているが、母エステラには「家をシェアしている友人」と紹介していた。
だが、2人の関係に気づいてたエステラは、ショックを受けるが、娘を理解しようといろいろ勉強したり、友人に相談したりして努力するのだった。
ママ偉い!始めはダサい「おばさん」服を着ていたが、一念発起していろいろ調べていくうちに見違えるほど「それなり」に美しくなり、服もセンスアップしている。
ママの方は、意識をどんどん新しくさせ、生き生きしてくるが、娘たちカップルは・・・。
是非ご覧いただきたい特上コメディ。
※音楽が◎、打楽器(ひょっとしたら鍋やヤカンを叩いているのかも)の音にあわせて文字が飛び出すエンドロールが秀逸!もちろん衣装もヘアスタイルも!
今のところ、エステラ・ママに主演女優賞!