映画をたくさん観るようになって16、7年になる。それまでは年に5本くらいだから、それまでの「観るべき作品」がすっぽり抜け落ちている。
今日、その観るべき作品
『ゆきゆきて、神軍』と、今現在の日本をあらわにした作品
『マイク・ミルズのうつの話』を鑑賞することができたのは幸運だった。
『マイク・ミルズのうつの話』マイク・ミルズ監督/アメリカ/10月公開
日本人の15人に1人は罹っているといわれる「うつ病」。2000年くらいまでは「うつ」という言葉は精神科以外ではあまり聞かれなかった。なぜ、わずかな年数で「うつ」が蔓延したのか。
『サムサッカー』『人生はビギナーズ』のマイク・ミルズ監督は、その理由の一つに製薬会社の「うつは心の風邪」という広告が元と考えその実態を追った。
監督が選んだ撮影地は、急速に「うつ」が広がった日本。
条件は「抗うつ剤を飲んでいる」「ありのままの生活を撮らせてくれる」の2つだ。
2000年頃にはあまり聞いてなかったという「うつ」という言葉だが、私は今から20年以上前に友人の旦那様、同僚の方が罹っていた。ちゃんと「うつ病」と聞いていた。その方たちは責任ある仕事や一家の大黒柱の人で若い方ではなかった。傍で見たり聞いたりしていても深刻な問題だった。
それから10年以上たったころか「ウツは心の風邪」という言葉を耳にするようになった。
「う〜ん、うまいこと言うなぁ〜」と感心した覚えがある。
その宣伝文句が功をそうしたのかウツの薬は爆発的に使われるようになった。
だが「ウツより怖いウツの薬」
映画中で、始めこそ人生が明るくなったように感じた薬も、慢性的になって改善されないので、薬をやめたいと思って実行したが、3、4日で根をあげてしまった。私の周りにこれと同じ体験をした方がいた。薬は怖い、本当に怖い・・・飲んだら最後、やめられない怖さが付きまとう。
そんな怖い薬を「自己申告」と簡単な問診で出してしまう日本の精神科医師。もちろん、薬があるからやっと生活できている人、仕事が続けられている人もいる。
この作品を観て、正直思ったことは、
映っている方々には悪いが本当に「ウツ」で苦しんでいる人がカメラに耐えられるだろうか?
この作品はに出てくる方は若者ばかり。条件に合う中年はいなかったのか?年寄りはいなかったのか?と少し不満に思った。
監督さんが日本人だったら、この撮り方はできなかったのではと思うところがあったことと、画面の切りとり方が素晴らしいカメラだった。私的には少し不満もあったが是非観ていただきたい作品。
『ゆきゆきて、神軍』原一男監督/1987年/キネカ大森
1982年、兵庫県神戸市。妻・シズミとバッテリー工場を経営する奥崎謙三は、ニューギニア戦の生き残りだ。1969年に死んだ戦友の怨念をこめて天皇にパチンコ玉4個を発射した男だ。
奥崎の所属部隊・独立工兵第36連隊で終戦後23日もたってから「敵前逃亡」の罪で二人の兵士が射殺された事件があったことを知った奥崎は、真実を探るため射殺された兵士の遺族と共に、処刑したとされる上官たちを訪ねる。
会場は大森のキネカ。夜8時上映開始で5分前に到着。
「もう立ち見もありません」と言われて戻ろうとしたら、偶然1名だけ「座布団で座っていただくなら」と本当に最後の1人!で入れてくれた。
このときこの作品がこんなに刺激的なものとは思いもしなかった。
運がよかった。
凄いものを
観た!
カメラを意識している奥崎謙三さん、自分の言いたいこと、聞きたいことをズバズバ言っている。
戦時中のおぞましい出来事をアポなしで当時の上官で責任者本人を訪ねる、無礼な態度には暴力、自分から警察を呼ぶ、国家権力には動じない・・・。
監督さんそっちのけで役割も決める。
「あんたは殺された兵隊の妹になってくれ、いや、なにも喋らなくてもいい、おれがみんな喋るからおってくれるだけでいい」と自分の妻に言う。
またこの奥様が100パーセント旦那様とは正反対の方。
反論しない妻、奥崎謙三を知り尽くしている妻、いざという時は激した奥崎の暴力を自分で受け止める妻・・・このご夫婦像がこの作品の中で一番鮮明に残っている。
※こんなにびっくりした作品は観たことがない。だから感想を書くまでとても時間がかかった、
「昔の映画で、観るべき作品を教えてください。お願いします。」と頭を下げたいくらいの気持ちだ。