『ひろしま 石内都・遺されたものたち』公開を記念して、初日から3日連続して開催されたリンダ・ホーグランド監督とゲストとのトークショー。7月22日の石内 都さんとリンダ・ホーグラド監督のトークショーを遅ればせながら紹介します。写真を撮影した石内都さんが、作品の世界観について語っています。

リンダ・ホーグランド監督と石内都さん
写真家の石内都さんが、広島の平和記念資料館に収蔵されている原爆犠牲者の遺品を撮影したシリーズ「ひろしま」。このドキュメンタリーは、石内さんの個展がカナダ、バンクーバーの人類学博物館で開催されることになり、遺品の撮影から個展開催中の人々の反応までを記録している。
最初に、石内さんからは「私ではなく、作品を主役にして」と言われましたと、リンダ監督

石内さんは、初めての海外での写真展で、どうしてバンクーバー?と思ったけど、ウラン鉱石を原住民が掘っていたということを知り、また、現地に行ってトーテムポールと向き合った時、納得しました。原爆の遺品たちはモノクロで固いイメージだったけど、広島へ行ってみたらそんなことはなかった。いわば自分はよそ者としての目線で、遺品と向き合い撮影しましたと語り、現在、広島県立美術館で、この「ひろしま」の展示を行っています(2013年10月14日まで)。丸木位里・俊夫妻の巨大な「原爆の図」の隣りに展示されていて、最初はどうなんだろうと思ったけど、とてもいい。原爆の図は裸、そして私の作品は洋服ということで、とても合っていましたと語りました。
写真展のタイトルについては、ずいぶん迷ったけど、女文字であるひらがなはやわらかい感じがするので「ひろしま」にしました。海外でもそのまま「ひろしま」として使っています。「ひろしま」を英語に直すこともせず、世界へ広めていきたい。
海外では美術教育がなされており、まず見せること、そして自分の目で見て、感じてほしい。自分の言葉で語ってほしいと考え、展示写真に一切の キャプションを付けず、“提示するだけ ”としていることについても触れた 。大きい写真の上に小さい写真、大きな写真は引いて見て、小さいのは近づいて見てほしいと思い、そのように展示しました。
リンダ監督も、バンクバーでの写真展を映画におさめたことについて、「この素晴らしいアートの体験を、80分間一緒に美術館で見ている感じに撮った。それがこの作品の狙い」と語った。そして悲惨な画面は撮らない。チェロやバイオリンなど情緒に訴えるような楽器は使わず、遠慮がちなマンドリンを使ったそうです。

石内さんは、新しい経験としての「ひろしま」の写真展 は“美しすぎる”という人もいるけど、 原爆が投下される前はもっと美しかったんだよと伝えている。「美しいものは美しい」と言いたい。「過去の時間は撮影できないけれど、遺品たちの時間は、今も尚ここにある」というリアティを感じてほしいと話した。その “今も尚”というリアティを保つためにも「ひろしま」はもっと 新しい体験をしなければならないと語った。
また、「女性は大きいと思う」と、この作品では、自身やリンダ監督、プロデューサー、サブプロデューが女性である点にも言及した。「今までは戦場の男的な広島のイメージが 強かったけれ ど、女性はきちんと “ひろしま ”と出逢ったのかなと、今作で思った。美しいものは美しいとストレートに言える、やっとそこへ辿り着いた」
また、リンダ監督の映画は“遺品から魂を呼び戻して送り出してあげたいという祈りを表現している。リンダ監督は、体は大きいけど優しい人。それが、この作品に出ていると語った。
今年の原爆記念日は過ぎましたが、映画は8月16日まで公開中ですので、ぜひ観に行ってみてください。
7月 20 日(土)〜 日(土)〜 8月 16 日(金)岩波ホールにて特別上映
・上映期間中、劇場ロビーにて「世界ヒバクシャ展」を開催。
6人の日本人写真家(森下一徹、伊藤孝司、桐生広人、豊崎博光、本橋成一、森住卓)が撮った世界の核被害の真実を展示。
http://www.no-more-hibakusha.net/
リンダ・ホーグランド監督インタビューが、本誌シネマジャーナル87号、橋本佳子プロデューサーインタビューがシネマジャーナル88号に掲載されています。ぜひ購読ください。また、二人へのインタビュー記事のHP掲載も企画中ですが、もう少しお待ちください。
また、リンダ・ホーグランド監督の初監督作『ANPO』での監督インタビューがHPに掲載されています。こちらもぜひ読んでみてください。http://www.cinemajournal.net/special/2010/anpo/index.html