3月20日(木)有楽町の外国人記者クラブにて試写上映後の
ジョシュア・オッペンハイマー監督来日記者会見へ行ってきました。
こちらの作品、去年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で
『殺人という行為』と云う題名で上映され最優秀賞を受賞しております。
*その時の様子はシネジャ89号に掲載有り今回『アクト・オブ・キリング』として劇場公開されるのは
オリジナル159分を121分に再編集したものです。
私は劇場版は未見なのですが、劇場公開版のほうが面白いという方も
いらっしゃいました。2時間超の長尺は劇場公開には不利なのでしょうし
あまりにも重いテーマですので…。1960年代半ば、インドネシアで実際に
あった大虐殺を加害者側(アンワル氏ほか)から描いた作品です。
カンボジアの虐殺についてはメディアでも取り上げられ、日本でも話題に
なりましたが10万人から100万人ともいわれる規模の大虐殺が
インドネシアであったなんて まったく知りませんでした。
ポル・ポトによる虐殺なら大騒ぎしても、インドネシアのスハルト政権を
支援していたアメリカや日本では「不都合な真実」だったんでしょうか…。
もともと監督は、インドネシアのパーム油プランテーションで働く人たちの
ドキュメンタリーを撮るつもりだったそうですが、パンチャシラ青年団のことを
映画にして すべての人に向けて「恐怖を感じずに過去と向き合う場をつくる」
という強いモチベーションで この映画の制作に取り組んだということです。
虐殺の当事者たちに取材を申し込み、41人目にしてOKをもらったのが
アンワル氏。撮影した映像は、1200時間もあったそうです。
世界中の映画祭で50以上の賞を獲り、アカデミー賞にもノミネートされ
この映画の影響で、インドネシア政府のスポークスマンが
「65年の虐殺は間違いだった」と正式発表したということです。
アンワル氏は、場合によっては「極悪人」と呼ばれるような人かもしれない。
しかし、インドネシアではずっと「悪の共産主義を倒したヒーロー」として
要職にありました。
映画の中で虐殺を再現するアンワル氏は、この映画の内容をほとんど
忘れていました。自分が苦悩し、嘔吐する場面も覚えていなかったそうです。
本国インドネシアで上映できないこの映画を、アンワルさんにもう一度
みせる機会を監督はもうけました。アンワルさんは、
「自分であるという事がどういうことかわかる」と言ったそうです。
殺人という行為は、被害者のいのちだけでなく、加害者の心をも破壊
「自分が自分であること」をわからなくさせてしまうんですね。
オッペンハイマー監督は、この映画がアンワルさんの「癒し」になったと
理解しているようです。 殺人が心を破壊し、映画が心を癒す…。
いろいろと御意見は分かれる映画だと思いますが、この春、
必見の映画であります。
〜孫に囲まれ笑顔のアンワル氏〜
(C)Final Cut for Real Aps, Piraya Film AS and Novaya Zemlya LTD, 2012
アクト・オブ・キリング公式サイト2014年4月12日より渋谷イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!
(取材 山村千絵)