まずは、学生審査員賞の発表。若い方たちは、『彼女のそばで』(イスラエル)を選びました。先日、日記で紹介しましたが、障害を持つ妹と暮らす姉の思いが実に率直に描かれた物語。ストーリー展開も見事でした。
次に、観客賞。モフセン・マフマルバフ監督がグルジアで撮った『プレジデント』が受賞! ある見知らぬ国の独裁者がクーデターで地位を失い、孫と共に逃げ惑う姿を描いた物語。マフマルバフらしいダイナミックな架空の世界。
いよいよ5人の審査員が選んだ賞の発表。
まず、スペシャル・メンションが、『シャドウデイズ』(中国)に贈られました。私は残念ながら観ていないのですが、観た友人から「中国国家の恐ろしさが描かれていて怖かった」と聞いていました。一人っ子政策の歪みを描いた凄まじい映画は以前にも観たことがありますが、こうした題材を映画にする勇気に感服します。
「これからも撮り続ける自信が持てました」と語るチャオ・ダーヨン監督
次に、審査員特別賞が『彼女のそばで』に。学生審査員賞とダブル受賞です。
そして、最後に最優秀作品賞の発表。フィリピンの『クロコダイル』が栄光に輝きました。あ〜これも観ていない!
受賞を喜ぶフランシス・セイビヤー・パション監督
コンペティション12作品の半分しか観てなくて、観ていない作品と比較することはできないのですが、私のイチオシ『ディーブ』と『数立方メートルの愛』は受賞できず、残念!
会場の記者から、「個人的には『ディーブ』が好き。賞を貰えなかった理由を」と質問が出ました。(よくぞ聞いてくださった!)
審査員のお一人リチャード・ローマンドさんが、「賞は最終的に全員の意見がまとまって決めました。好みがどうしても出てきます。異なる作品を同じ土俵に乗せるのは難しい」と答えました。結局はどこの映画祭でも受賞する作品は、その時の審査員次第なのだと、つくづく思います。
審査委員長のジャ・ジャンクー監督が総評として「皆、レベルの高い作品で、背景にある社会状況や人間の関係性を知ることのできる素晴らしいものでした」と語ったように、コンペに選ばれる作品は、どれが賞をとってもおかしくないということでしょう。
ちょっと疲れてしまったので、授賞式はやめて帰ろうかなと思ったのですが、なんとか頑張って参加。
記者会見の時にはまだ届いてなかったモフセン・マフマルバフ監督からのメッセージをショーレ・ゴルパリアンさんがペルシア語で読み上げてくださって、授賞式に残った甲斐がありました。現在、ロンドンにいるマフマルバフ監督。時差があるので、夜更かししているであろう息子のメイサムさんに電話してメッセージを依頼。朝早くたたき起こして書いていただいたメッセージは、世界の皆が民主的な社会で暮らせることを願う監督の思いに溢れたものでした。昨年のフィルメックスで毎日のようにマフマルバフ監督にお会いしたことを昨日のように思い出したひと時でした。
最優秀作品賞として『クロコダイル』が発表され、挨拶に立ったフランシス・セイビヤー・パション監督は、会場にいた主演女優のアンジェリ・バヤニをはじめ、関係者を舞台に呼び込みました。厳しい状況の中で撮った作品の受賞を喜ぶ『クロコダイル』チームでした。
最後に審査員と受賞者のフォトセッションで授賞式は終了しました。