2月17日から京橋のフィルム・センターで行われている「現代アジア映画の作家たち 福岡市総合図書館コレクションより」も、早や2週目に入りました。
今週は、インドネシアのリリ・リザ監督と、イランのアスガル・ファルハーディー監督特集。どちらも大好きな監督で、福岡でインタビューさせていただいたことがあります。
始めて観たリリ・リザ監督作品の『GIE』では、インドネシアでも共産党員を虐殺した過去があったことを知って衝撃を受けました。作品も素晴らしかったのですが、主役のニコラス・サプトラがとても魅力的で、ぐっと惹かれました。彼は『永遠探しの3日間』でも主役を務めています。『GIE』の上映は終わってしまいましたが、『永遠探しの3日間』の方は、27日(金)7時からもう一度あります。
『虹の兵士たち』と『夢追いかけて』も、28日にもう一度チャンスがあります。
ファルハーディー監督の方は、初期の3作品が取り上げられています。
『火祭り』(2006年)は、主として中流家庭のアパートの1室を中心に物語が展開し、後の『別離』などにも繋がる作風ですが、初期の『砂塵にさまよう』(2003年)と『美しい都市』(2004年)は、貧困層を描いた力強い作風。がらっと違うスタイルにびっくりすることと思います。
初期の2作品に主演されたイランのベテラン俳優ファラマルズ・ガリビアンさんに、福岡でお話をお伺いしたのを懐かしく思い出しました。当時のスタッフ日記に、こんなことを書いていました・・・・
『砂塵にさまよう』では、かつて人殺しをし、脱走して毒蛇取りを生業としている男、『美しい都市』では、娘を殺された父親役。どちらも強面の役柄でしたが、ご本人は笑顔の素敵なダンディな方。これまで85本の映画に出演しているけれど、自分に近い役を演じたことがないとのこと。「静かな紳士」がご自分に近い役柄で、憧れは、『サヨナラ』でマーロン・ブランドが演じた芸者に恋をする役と、微笑まれました。デビュー作は、マスウード・キミアイ監督の第二作『大地』。実はキミアイ監督とは小学生の頃、家が隣同士でよく一緒に映画を観た仲。お金のない時には映画館の外で漏れ聞こえてくる台詞を聞きながら、「今はあの場面だね」などと話していたそうです。二人で俳優になろうと言っていたのが、なぜかキミアイは監督になったとおっしゃいました。(美男子のガリビアンさんに俳優を譲ったのでしょう!)
今回上映される3作品をちょっと紹介しておきましょう。
『砂塵にさまよう』2003年
長編デビュー作。一目惚れして結婚したものの家族の反対ですぐに離婚した青年。慰謝料を払う為、毒蛇を取って金を稼ごうとする。砂漠を舞台にした骨太な作品。
『美しい都市』2004年年
恋人を殺した少年が十八歳になり死刑執行されるのを、同じ刑務所にいた少年が、被害者の父親にかけあって執行停止を求めようと奔走する。加害者の少年の姉との間に恋心が芽生えるが、被害者の義理の妹(障害者)と結婚すれば死刑執行停止に同意すると持ちかけられる。なんとも切ない物語。
『火祭り』2006年
結婚を間近に控えた若い女性が、家事手伝いに行った家で垣間見る夫婦間のひと悶着。時は年末。原題Chaharshanbe Suriは、無病息災を願って火の上を飛ぶ行事のこと。イランのお正月である春分の日前の最後の火曜日の夜から水曜日の未明にかけて行われるもの。
テレビ局勤務の旦那が、大晦日に放映する番組で少女の髪の毛が見えているのを隠せと呼び出されてしまう。一見メロドラマ風の物語にこういう場面をさりげなく入れるところが、監督らしい。