2015年07月12日

トルコの巨匠ジェイラン監督の映画とレクチャーでお腹いっぱいになったあと、東京ジャーミィで断食月の振る舞い料理 (咲)

7月8日(水)、『雪の轍』公開記念、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン映画祭 オープニングイベント 昼の部へ。
9月29日(火)−10月3日(土)に開催される映画祭のオープニングとして上映されたのは、短編『繭』(1995)と『五月の雲』(1999)の2本。
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『五月の雲』を観たのは、どこだったか思い出せなかったのですが、2001年のアジアフォーカスだったと判明。監督の故郷を舞台に、両親や知り合いが借り出されて、カメラの前で四苦八苦していたとしか記憶にありませんでした。
最初に36歳の時に製作し、カンヌで認められた短編『繭(koza)』の上映。台詞や説明のないモノクロの美しい映像。あ、これは見覚えのある顔! 『五月の雲』に出演していた監督の両親の姿でした。
続いて上映された『五月の雲』で、舞台になっている村からチャナッカレの町に行く場面が出てきて、『繭』で出てきた船に乗っている場面は、ダーダネルス海峡をいく船だったのだろうとわかりました。ダーダネルス海峡に臨むチャナッカレの町は、32年前に初めてトルコに行った時に、最初に泊まった町。町の目抜き通りの真ん中にあった古い時計台や、湾曲した静かな海辺を懐かしく思い出しました。
上映後、トルコ研究者の野中恵子さんのレクチャー。ジェイラン監督の故郷は、トロイ遺跡にも近いチャナッカレ県の村と説明ありました。今のトルコ共和国建国以来、政教分離の世俗主義はいいとして、過去の遺産を否定してつぶしてきたことが語られました。オスマン帝国時代には、イスラームのもと、キリスト教徒もユダヤ教徒も、様々な民族が共に暮らしてきたのに、今のトルコ共和国はトルコ至上主義。古代ギリシャ哲学が生まれたのも、アナトリアの地。トルコもギリシャも元は一つ、同じ歴史を背負ってきたのに、トルコ共和国設立後、今のギリシャに住むイスラーム教徒と、トルコ共和国となった地に住むギリシャ系民族を住民交換するという理不尽な出来事がありました。
これまで映画やドラマなどの娯楽産業で歴史を描くことは国民に余計な知識を与えるとして避けられてきたのが、最近、この住民交換のことも含めて、映画で歴史が描かれるようになりました。きっかけとなったのは、10年程前のロシアから妻を迎えたスレイマン大帝を描いたドラマの大ヒット。過去を否定する必要はないという風潮が生まれ、オスマン帝国からトルコ共和国に変わったのは何だったのか?というテーマの映画やドラマが作られるようになってきたそうです。ジェイラン監督にも、他国とタイアップして歴史映画を是非撮ってほしいと野中さん。
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映画とレクチャーをたっぷり楽しんだあと、代々木上原の東京ジャーミィへ。ラマダーン月のイフタール(日没後の食事)が振る舞われるのがお目当て。思えば、このモスクはトルコ共和国の大きなバックアップで出来たもの。世俗国家トルコは、やっぱりイスラーム色の強い国なのだと感じた夜でした。
posted by sakiko at 10:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月01日

継続は力なり! レスリー・チャンを語り継ぐ「哥哥的一天」208回目の会に参加してきました (咲)

今日は7月1日。18年前のこの日、香港島中腹にあるYWCAの部屋から、香港総督邸の屋上の旗が真っ赤な旗に変わったのを眺めていたのを思い出します。今朝の東京は、あの日の激しい雨を彷彿させるような雨模様でした。前日、英国領最後の日の香港を駆けずり回って、疲れ果てて起き上がれなかったのですが、旅仲間の若いYちゃんが、どしゃぶりの雨の中、記念すべき日の新聞を買いに行ってくれたのでした。そのお宝、我が家のどこかにあるはず・・・ (私があの世にいったら、ゴミですね)

それにしても、香港返還から18年!  
初めて香港に遊びに行ったのが1979年で、その時に、18年後には香港が中国に返還されると聞いたのをよく覚えています。ほんとに時の経つのは早い・・・

前置きが長くなったのですが、香港の新聞繋がりのことを報告したかったのでした。
6月28日、レスリー・チャンを語り継ぐ「哥哥的一天」に参加してきました。その第一部が、香港カルチャーライター水田菜穂さんによるアジアンシネマ講座。「香港映画を楽しませてくれた映画館の思い出」と題して、この6月に閉館したシネマート六本木を中心に、支配人の村野さんがキネカ大森にいた時代から、いかにアジア映画を盛り立ててくださったかを語ってくださいました。まさに村野さんありきで、私たちは新旧のアジア映画をたっぷり楽しむことができたことを、あらためて知りました。

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キネカ大森での懐かしいイベントの話などもたくさん出た最後に、水田さんからのプレゼントコーナー。かつて集めた香港の新聞の切抜きの中から、レスリー・チャン出演作の広告をたくさん持参してくださったのです。これはファンにとっては、まさにお宝!

香港に通い詰めていた時代、まず行きのキャセイ航空の機内で、香港の新聞を数紙ゲットして、映画覧などをチェック。滞在中は、毎朝、近くで数紙購入して、追っかけ情報をチェック。香港の新聞には、モールでのイベントのほか、芸能人の記者会見情報なども載るのです。こうして、その日の行動を決めるのが楽しみでした。
滞在中に購入した新聞は積んでおいて、最後の晩には欲しい記事がないか再度チェック。娯楽版だけでなく、思いもかけないところにレスリーの記事が載っていたりするので、もう大変! 持ち帰った新聞の切抜きは、今もお宝として置いてあるのですが、これもいつかはゴミですねぇ・・・

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話がまたそれてしまいましたが、「哥哥的一天」に参加させていただいたのは、発行したばかりのシネマジャーナル94号に、今年の4月1日のレスリー・チャンの命日の報告記事が掲載されているので、販売させていただくのが主目的でした。
お買い求めくださった皆さま、ありがとうございました。

レスリー・チャンが逝ってしまった後も、1年に11回、ずっと開催されていることに、まさに継続は力なりと頭がさがります。レスリーのファンだった人も、彼を知らない人も、ぜひ一度お出かけになってみてください。

★次回の「哥哥的一天」★ 
日時: 7月26日(日)14:15〜16:45
会場: 四谷地域センター 「10F 音楽室」
内容: 第1部 トークゲスト:島津美穂さん(写真家)
       トークテーマ:「一人紅白歌合戦 第6弾!」
    第2部 哥哥的一天<レスリー・チャン ファンの集い> vol.209 
詳細はこちらで ↓
http://gogo0912.seesaa.net/
posted by sakiko at 22:43| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『Beauty of Tradition-ミャンマー民族音楽への旅-』トークショー

6/27(土)公開初日に大石始さん(ライター)と川端潤監督のトークショーがありました。進行は佐伯誠さん(インタビュアー)
ポレポレ東中野にて
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左から佐伯誠さん(司会)、川端潤 監督、大石 始さん

作品紹介
これまで日本ではほとんど紹介されることのなかったミャンマーの伝統音楽。ピュアなミャンマーの伝統音楽を残したいという想いで、2013年4月から5月の40日間、ミャンマーの最大都市ヤンゴン、その中心部から離れたプロデューサーの自宅に併設されたスタジオに機材を持ち込み、録音。アーカイブとしても非常に価値のある音源CD制作。その一部始終を撮影した貴重なドキュメンタリー。
全ての演奏は現地の演奏家によるもので、収録曲はおよそ100曲。その中でサインワイン、フネー、チーなどの楽器の演奏風景を中心に描かれる。ミャンマーの伝統楽器をミュージシャン達がどの様に演奏し、歌い、考え、悩み、相談してレコーディングしていくのかが描かれる。
伝統音楽を知らしめたいというこの試み。僧院やヤンゴン芸術大学の若者たちの姿も出てくるし、ミャンマーの正月の水かけ祭りの様子も収められ、変貌しつつあるミャンマーの現状も見えてくる―。
公式HP http://www.airplanelabel.com/myanmar/
シネマジャーナル作品紹介
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/421161156.html

「ひょんなこと」をキーワードにトークショー
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ひょうんな出会い、ひょんなことから始まったミャンマーでのレコーディング。
「サインワイン」という楽器のことがひとしきり話題に。21の太鼓から作られていて、バーカッションのようなメロディを出す。宇宙的な感じ。チューニングの方法は漆などを塗ったりして面白い。リズムがよれていたり、音が外れているように感じたりもするけど、決めの部分はあるので、全体でこういう音なんだとわかる。
これまで、ミャンマーの情報はほとんどなかったし、ミャンマーの人自身が、アーカイブ(保存記録)されていなかったと思うので、今回の企画はとても貴重。
文献を通してではなく、映像で観ると、ミャンマーにどんな音楽があるか体感できる。
今回はミャンマーの伝統音楽を収録しているのだけど、ミャンマーの若者は、今、海外から音楽がどんどん入ってきて、海外の音楽にあこがれている部分もあるのでは?
今回の映像は水かけ祭りや、街中の光景もずいぶんあり、物売りの声とか、雑踏、ノイズなど、ミャンマーの空気感にあふれている。
水かけ祭り、雨の音、川など、アジアの湿気のよさが伝わってくる。
今は、ミャンマー=ヤンゴンが、すごい勢いで変わっている時期。その貴重な時期を描いていると思う。
というようなことが話されました。
なおヤンゴンとは「戦いの終わり」という意味だそうです。
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サインワイン

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ビルマの竪琴
(c)株式会社プロジェクトラム

私自身も、この映画を観て、「サインワイン」という楽器に、「これはなんだー!」と心惹かれました。この楽器の中に入って演奏するという演奏スタイルも面白いと思いました。太鼓を使った楽器が多いなと思いましたが、他の東南アジアの国の楽器とも共通するようなものもあり、とても興味深かく感じました。「ビルマの竪琴」も出てきて、こういう形、音の響きの楽器だったんだと驚きました。ハープに近いかなと思いました。(暁) 
posted by akemi at 06:03| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする