2015年07月20日

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 『絶え間ない悲しみ』の圧倒的な映像に、メキシコ女性の苦悩をひしひし (咲)

7月19日(日)、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015のコンペティション長編部門、トップを切って上映されたのは、メキシコの『絶え間ない悲しみ』。
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背の高い棒のようなサボテンが立ち並ぶ乾いた大地、青空に映える真っ白な塩田・・・ 圧倒的な映像に一気に映画に惹き込まれました。
5月、聖母マリアの月。破水したチェバは一人で赤ちゃんを生み落します。夫は出稼ぎに出て3年帰ってこず、赤子の父親は塩田で働く男シルベストレ。急に夫が帰宅することを知り、赤子をシルベストレの義理の娘アンヘレス・ミゲルに無理矢理預けます。このアンヘレス・ミゲルもシルベストレの子を身籠っていて、別の家庭を持つシルベストレの身勝手ぶりに唖然としてしまいます。喜ぶべき子どもの誕生を悲しむしかない女性二人の絶望的な思いが、色彩豊かな象徴的な映像から、ひしひしと伝わってくる作品でした。

上映後、ホルヘ・ペレス・ソラーノ監督が登壇。Q&Aが行われました。
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司会は、本映画祭の長編部門第一審査員でもある映画評論家の国弘よう子さん。
会場から次々に質問の手があがり、監督から象徴的な場面の意味が解き明かされました。

公式サイトのQ&A報告はこちら→
http://www.skipcity-dcf.jp/news/dailynews/150720_1.html
ここに出ていないことを中心に、こちらで報告します。

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リアルな出産シーン。「赤ちゃんは本物?」との問いに、「あれはロボットで、私の養子にしましたのでご安心ください」と監督。
臍の緒を駕籠に入れて木に吊るす場面があります。メキシコでは地方によって木に吊るすか、土に埋めるのが習わしとのこと。監督は父親から臍の緒を埋めた場所を教えられ、そこで死ななければならないと言われたそうです。土地を離れてほしくないという願いとのこと。今のメキシコの村々は、アメリカに移民してゴーストタウン化しているという現状を抱えています。

教会の下に広がるサッカー場。ここで、選挙演説やアクロバットのイベントが行われるのですが、どちらも盛り上がりません。メキシコの村では、政治家の来訪やお祭りは、本来幸せを与えてくれるもの。それが全く期待に答えてくれないものだという象徴なのだそうです。

塩田は、実は海から60キロ離れた地にあるもの。地層に海の名残りがあり、かつては海の一部だったと思われる場所。塩田は500年の歴史があるそうです。収益はあまりないものの伝統として続けているそうです。

時折出てくる蝶々。魂が出口を見つけようと彷徨う姿を象徴しているそうです。
チェバは、ほんとうだったら夫がもう出稼ぎに行かず家に居てくれることを喜ばないといけないのに、預けた赤子を戻すこともできず、自分がどう解決しなければいけないかジレンマに陥っています。青空に映えるサボテンの彼方に飛んでいく蝶々が印象的でした。

男尊女卑の考えがまだまだ根強いメキシコの社会で生きる女性の苦悩を描いた力強い作品。
7月22日(水)14:30から、もう一度上映されます。監督も登壇予定です。
お奨めの一作です!
作品詳細 (予告編もあります!)
http://www.skipcity-dcf.jp/films/films06.html
posted by sakiko at 10:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする