25周年を迎えたアジアフォーカス・福岡国際映画祭。シルバーウィークの5連休を挟んだ9月18日(金)〜25日(金)の期間で開催されました。
キャナルシティの運河に浮かぶレッドカーペットでのオープニングセレモニーも気になったけれど、旅費が高くつくので連休2日目の20日から24日の4泊5日で6月末に手配。
そしたら、なぁんとインドネシアの美男俳優ニコラス・サプトラがオープニングに登場とのニュース! きっと私が着く頃には入れ違いで帰ってしまっているのでは・・・と、広報担当者の方へのメールでつぶやいたら、お忙しい中、「22日まで滞在されます!」との返事が速攻で返ってきて、もうウキウキ♪
事前にイラン、トルコ、キルギスの3作品のゲストへのインタビュー時間を設定していただいたので、合間に福岡在住の友人たちと会う日程も決めて、用意周到で、20日の早朝7時半発のフライトで、いざ福岡へ。
ところが、着陸態勢に入ってから、先行の飛行機が着陸時に鳥と衝突して滑走路点検の為、低空旋回して待機することに・・・ お蔭様でたっぷり福岡の町を上空から楽しみました。
10時からのインド映画『裁き』(原題:Court法廷)には大幅遅刻!
プロデューサ−のヴィヴェーク・ゴームベールさんとチャイタニヤ・タームハネー監督
法廷のシーンだけでなく、女性検察官や若い弁護人たちの日常生活に重点を置いたとQ&Aで語っていたのが印象に残りました。下水掃除人の自殺を促したとして捕まった差別撤廃を歌う65歳の歌手を巡る裁判。半分しか観られず、いつかちゃんと観たい作品。
1時 トルコ『望郷のうた』
1990年代、東トルコの故郷からイスタンブルへの移住を余儀なくされたクルド人のアリ。小学校教師となったアリの年老いた母親は故郷の村で死にたいという・・・
助演のアジズ・チャプクルトさんが来日。クルド語の使用が禁止されていた1990年代初頭に、クルド語で授業をした罪で捕われる教師役を熱演。
アジズさん自身、15歳の時、東トルコのカルス郊外からイスタンブルに移住。警察の検査に備えて、クルド音楽のカセットテープは、マイケル・ジャクソンなどのカバーに変えていたと笑います。
エロル・ミンタシュ監督とは古い友人。小学生に語る孔雀になろうとしたカラスの物語は、姿を変えてもアイデンティティは変えられないという思いを込めた監督のオリジナルの寓話。
6時半 インドネシア『サガルマータ』
空のてっぺんサガルマータ(ヒマラヤ)を目指す女性二人の物語。一人は小説家志望、もう一人は写真家志望。二人で本を出そうと夢見るが登山途中で友情に亀裂が入り、一人が行方不明になる・・・
主演女優ランガニ・プスパンディアさんとプロデューサーのアブドゥル・マナフさんが登壇。
インドからネパールへと実際にロケしたロードムービー。資金が底をつき、帰路、インドの駅やマレーシアの空港で寝る羽目に。絶対忘れられない貴重な経験と語りました。
9月21日
9時45分 イラン『未熟な柘榴』
大邸宅に一人で住む認知症の老婦人の世話をする妻と、溶接工の夫。貧しくも仲の良い二人は、いつも待ち合わせて郊外の家に帰る。ある日、夫が現われない。作業用ゴンドラから落ちて入院し、意識はいつまでたっても戻らない。そんな折、結婚して8年にして身篭ったことがわかる・・・
意識不明の夫を抱えながら、仕事先では、老婦人に立ち退きを迫る持ち主の代理人と対峙する気丈な女性を演じたアンナ・ネーマティさん。映画での地味な姿と対照的に華やかな雰囲気。「自分と遠い役柄に挑戦できたのは運命」と語りました。次作の撮影が迫っていて、このQ&A直後に帰国。個別取材はできませんでした。残念!
2時からの監督インタビューの打ち合わせも兼ねて、12:05からの中国映画『赤い季節の忘却』は諦めて、佐賀在住のペルシア語科卒業生のTさんとスペイン料理のランチ。
マジドレザ・モスタファウィ監督と、女優さんと見紛う美しい奥様。
奥様は著名な画家で、映画に出てくる大邸宅の壁を飾る絵はすべて奥様の描かれたものとのこと。
上映後のQ&Aで、社会派ドラマで、前大統領の時代には、検閲に通る可能性がなかったとおっしゃっていたので、前大統領時代と今とどう変わったかをお伺いしたら、堰を切ったようにあれこれお話されました。(詳細は本誌で!)
4時 インドネシア『動物園からのポストカード』
月夜にジャカルタの動物園に置き去りにされ、動物と共に育ったラナ。不意に現われたカウボーイ姿のマジシャンと恋に落ちる・・・
実は4時半からの台湾映画『その夏に抱かれて』を観る予定だったのですが、ニコラス・サプトラ出演作なので、急きょ変更! 思惑通り、Q&Aに登壇。やっと会えました!
ニコラス演じるマジシャンは自ら箱に入って、ラナに火をつけさせるのですが、そのまま消えてしまいます。「ファンの私としては、あれきり再登場しなかったのは寂しかった。マジシャンが自分自身を永久に消してしまったのはどんな思いから?」と、思わず質問してしまいました。
福岡でニコラスはリリ・リザ監督の『GIE』(2005年)の主役として人気。多くの人がサインやツーショットを求めました。もちろん、私も! (久しぶりにミーハー心が沸きました!)
エドウィン監督とニコラス・サプトラ
6時40分 インドネシア『モルッカの光』
1999年、モルッカ諸島でイスラム教徒とキリスト教徒が大衝突する。そんな中、サッカーで子どもたちの心を暴力から救おうとする青年の物語。
上映前にアンガ・ドゥイマス・サソンコ監督が登壇。「人間性と寛容を忘れてはいけない。この映画は意見表明となっています」と語りました。
最後まで観たかったのですが、途中で7時半からの台湾映画『コードネームは孫中山』に走りました。面白い映画ではあったのですが、『モルッカの光』を最後まで観るべきでした。
この後、インドネシア映画『オペラジャワ』の途中から入って、伝統音楽や舞踊によるミュージカルをちょっぴり味わって、福岡の映画サークルの友たちとの映画談義へ。
9月22日
10時 インドネシア『黄金杖秘聞』
黄金杖の奥義を受け継ぐチュンパカ師の後継者を巡る4人の弟子の争い。
上映前に主演のニコラス・サプトラが登壇。「インドネシアで1980年代に流行った武侠映画も、20年以上作られていませんでした。新しい解釈の武侠映画を楽しんでください」とアピール。
上映後、再度登壇。すべての役者が武術の経験なく、撮影前6ヶ月にわたり様々な武術を特訓したとのこと。「強い力を持ったとき、良い心を持つことが何より大事」と語りました。次回作は、『ビューティフル・デイズ』(2002年公開)の15年後を描いた作品。10月にインドネシアで公開予定とのこと。日本での公開が待ち遠しいです。
1時 キルギス『山嶺(さんれい)の女王 クルマンジャン』
『Little Big Master(原題)』(香港・中国)と共に観客賞候補と、福岡の映画サークルの方たちが口々に語っていた作品。口コミで評判を呼んだのか、あっという間に満席に。入れなかった方が続出。シネジャの美さんも入れず。
19世紀初頭、キルギスの部族長(ダトカ)に嫁ぎ、夫亡き後、部族長としてキルギスの各部族をまとめ、人々に慕われた実在の女性クルマンジャンの生涯を描いた壮大な物語。
アソシエート・プロデューサーのイディリソワ・チョルポンさんに個別取材。
クルマンジャンの息子の嫁役として出演もしていますが、女優としてよりも、製作側で活躍するため、モスクワに留学したいと意欲的。
キルギスでは、長編は年に4〜5本しか製作されていませんが、中・短編は120本位製作さていて、若い世代の半分は女性監督。クルマンジャンのように女性の活躍がめざましいようです。
既婚女性は、まるで包帯をぐるぐる巻きにしたような被り物をしています。(右のポスター参照) お聞きしたら、通常2〜3キロ。重いものでは5キロ位のものも。姿勢をよくする効果のほか、遠出中に出産した時には赤ちゃんのおくるみに、戦で怪我した時には包帯になるとのこと。見た目の印象に間違いはなかった!
取材を終えて、携帯をみたら、レスリー・チャン追っかけ仲間のお友達が亡くなられたとのメール・・・ 実はちょうどこの時、レスリーの思い出があるグランドハイアットのロビーで、福岡在住の追っかけ仲間と待ち合わせしていたのです。もう、会うなり涙の報告でした。闘病されていたことも知らず、2年前の4月1日にお会いしたのが最後になってしまいました。会いたい人には、できるだけ会えるチャンスを作って会っておかないと・・・と、しみじみ。
6時半 観客賞授賞式
まずは観客投票第2位に贈られる熊本市賞から発表。
キルギスの『山嶺(さんれい)の女王 クルマンジャン』が受賞。
そして、福岡観客賞は、香港・中国映画『Little Big Master(原題)』に! まさに私の周りで予想していた通りでした。
エイドリアン・クワン監督、受賞の喜びを語りながら、涙ぐむ姿がなんとも可愛かったです。
9月23日
10時 香港・中国『Little Big Master(原題)』
福岡観客賞受賞後の上映とあって、朝からほぼ満席!
香港の新界の村にある幼稚園が園児5人になって閉園の危機にあるのを、わずかな報酬で園長に就任して立て直し、貧しい家庭の園児たちを救った実話をもとにした映画。
ミリアム・ヨンが園児たちを思いやる園長を好演。歴史博物館の学芸員の夫役はルイス・クー。眼鏡をかけてグッと地味な雰囲気で、これまた好演。
監督・脚本のエイドリアン・クワンさん(左)と脚本のハンナ・チャンさん
この日のQ&Aでも、エイドリアン・クワン監督、語りながら何度も涙していました。
ぜひ観客の皆さんと一緒に撮りたいとの希望で、和気藹々の記念撮影となりました。
午後、福岡在住の大学の同級生と 能古島散策。
姪浜からフェリーでわずか10分! まるで香港のスターフェリーのよう!
檀一雄の終の棲み家となった能古島のご自宅裏にある文学碑
船着き場近くの能古保育園。島に幼い子はどれくらいいるのでしょう・・・
『Little Big Master』に出てきた香港の過疎の幼稚園を思い出してしまいました。
7時 フィリピン『インビジブル』
日本で働くフィリピン人の姿を福岡と旭川で撮影。
さっき能古島から観た福岡タワーも出てきました。
(実は、同じ時間帯に上映された『なつやすみの巨匠』はオール能古島ロケの映画でした。『インビジブル』は東京国際映画祭で上映されるとわかり、そっちを観るべきだったと残念!)
9月24日
地下鉄の一日乗車券を買って、映画の前に大濠公園と、祇園の東長寺へ。
東長寺に大仏様がいらっしゃると福岡の友人に聞いて行ってみたのですが、ほんとに立派な大仏様。高さ10.8メートル、平成4年完成。
無料拝観できるのですが、蝋燭とお線香を50円で購入してお供え。大仏様の脇から地獄巡りができるようになっていて、8つの地獄の説明のあと、真っ暗なところを手摺を頼りに歩きます。抜け出たところは極楽!(明るくなっただけでした・・・)
蝋燭とお線香の係の女性の方が追いかけてきて、「お彼岸ですから」と、おはぎ(3個入り!)を下さいました。あ〜これが極楽だったのね!
毎朝お参りした櫛田神社にも、最後のお参り。
10時半 トルコ『望郷のうた』を再度観ることに。
アジズ・チャプクルトさんがまだ滞在されていて、上映後、会場の外で観客の方から質問を受けるのをそばで聞くことができました。
1時 ドキュメンタリー特集 アジア・リミックスとして上映されたトルコ映画『Remake, Remix, Rip-off』
1960年代以降のトルコの娯楽映画の歴史。アメリカ映画のぱくりが続出。ターザンやドラキュラ、スーパーマン。中には、ゾンビに忍者や、西部劇にカンフーの組み合わせと、ハチャメチャ。ブルース・リー、トルコでも人気だったのですね。日本では社会派監督として知られるユルマズ・ギュネイがアクション映画スターとして活躍する姿も観れました。あ〜面白かった!
この後、『山嶺(さんれい)の女王 クルマンジャン』の最後の30分を観に行きました。
平日にもかかわらず、ほぼ満席!
上映が終わって、福岡の映画サークルの方たちやシネジャの美さんと会場の脇で最後の映画談議。ロールケーキの差し入れをいただいたり、あれこれお土産をいただいたり、ほんとに福岡の方たち、優しい! 楽しいおしゃべりが続きましたが、後ろ髪をひかれる思いで、6時のフライトに急ぎました。
5日間で観たのは、10作品。その他4作品の一部を鑑賞と、ちょっと少な目。
同じ日程で東京から参加した友人は、18本観ているのですが、個別取材もできたし、町歩きも出来たし、何より毎晩、福岡や地方から来た方たちと映画談議もできたので良しとしよう!
☆オマケ
映画祭では、合間に食事をする時間がなかなかないので、今回はホテルの朝食付きパッケージに。お気に入りのホテルエクレール博多はプチホテル風。
朝食は1階のアイリッシュ・パブで。パン、ヨーグルト、コーヒーなどはお代わり自由。たっぷり食べて一日に備えます。
映画の合間には、皆さんからいろいろ差し入れも飛び交って、美味しい福岡でした。