2015年11月29日

東京フィルメックス  パナヒ監督が運転するのもありえるテヘランの『タクシー』事情 (咲)

今晩29日(日)21:15から、もう一度上映されるジャファル・パナヒ監督の『タクシー』は、監督自ら運転するタクシーに次々に乗ってくる客との会話で進んでいく物語。パナヒ監督らしく、ちょっと作りこみ過ぎた感はあるのですが、テヘランの乗り合いタクシーのシステムなら、充分ありえる展開です。どんな人たちが乗ってくるのかは、まだ今晩の上映があるので、それをご覧いただくことにして、ここでは、ちょっとテヘランのタクシーについて、システムの説明と私の経験を。

テヘランでは流しのタクシーは、基本、乗り合い。座席に空きがある車に向かって、行き先を叫んで乗せてもらいます。以前は助手席に2名乗車していましたが、今は助手席1名と規則が変わっています。後ろは定員3名。大型バスが前と後ろで男女別になっているのに、タクシーは男女が密着して座ることになります。最近は、女性運転手による女性専用タクシーも出現しているようです。
流しのタクシーは、通りをまっすぐ行くのが基本なので、違う方向に行きたい場合は、交差点で降りて、また別のタクシーをつかまえます。
それが面倒な場合は、「ダル・バスト(貸切)」にしてもらいます。映画の中でも、「貸切にしてくれ」と客に言われる場面があります。その場合は、行きたい場所まで行って貰えますが、もちろん料金は高くなります。値段は交渉次第。これで運転手とバトルすることもしばしば。
でも、乗り合いでちょっと乗るだけなら、「お代はいいですよ(ガーブル ナダーレ」と言われることも。もっとも、イランで買い物したりしても、決まり文句でそう言われるので、通常はちゃんと払います。私は外国人なので、「メヘマーネ・マー(私たちのお客様)」と、代金を取られなかったり、同乗していたほかのイランの方から「私が払うから」と言われたりしたこともあります。
初めてイランに行った1978年のこと(まだ王政の時代!)、イラン在住の先輩に連れられてタクシーに乗ったのですが、途中でタクシーを止めて助手席に乗ってきた男性が運転手と親しく話しているので、友人をちゃっかり乗せたのかと思ったら、初めて乗せた客でした。イランの人たちは、ほんとにおしゃべり好き。知らない人とも、すぐ親しげに話します。
タクシーの認可かどうなっているのか知らないのですが、運転手さんから「実は教師をしているけど、安月給なので」とか、「僕は大学生」とか言われたことも。
なので、映画を作れないでいるパナヒ監督が生活費稼ぎにタクシーの運転手をしているのもありえます。もっとも、身分がばれちゃったら、「映画のネタにね」と言えば、皆、納得ですよね。

パナヒ監督の運転するタクシーに乗ってくる人たちからは、これまで監督が作った映画を彷彿させられるエピソードがいっぱい。でも、これまでの作品を観ていない人にも、ちゃんと楽しめる作りになっています。
乗客をちょっとだけご紹介。赤い薔薇の花束を持って乗り込んでくる女性がいるのですが、本物の弁護士さんで、女性たちを擁護した罪で収監され、実際にハンストをされた有名な方だと、イランの友人が教えてくれました。

金魚の入った鉢を持って乗り込んでくるチャードル姿の女性二人が、「アリの泉に行ってちょうだい」と言います。(注:29日の夜、もう一度観てみたら、チャードルではなく、柄物のスカーフにコート姿でした)
アリの泉は、テヘランの南にあるレイという古い町にある泉で、そのまわりの岩肌に絨毯を干してあるのが有名なところ。
姪を学校に迎えに行かなくてはいけないからと、パナヒ監督は別のタクシーに彼女たちを乗り換えさせます。なにしろ、テヘランの南ですから、渋滞してなくても、恐らく1時間はかかるのでは。
taxi.jpg
そして、その姪っ子のハナちゃん。小学生高学年かと思うのですが、学校で映画作りのワークショップをしているのです。思わず、9歳で映画を初めて作ったハナ・マフマルバフを思い起こしてしまいます。偶然同じハナちゃん。『タクシー』がベルリン映画祭で金熊賞を受賞しましたが、国外に出られないパナヒ監督に代って、ハナちゃんがトロフィーを受け取りました。こちらのハナちゃんも、女優として監督として将来有望で楽しみです。
posted by sakiko at 09:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする