どれもお奨めなのですが、中でも、『ガザを飛ぶブタ』は、2011年の東京国際映画祭の時に、タイトルを観ただけで気になり、映画を観る前に監督インタビューを申し入れてしまった作品。観てさらに気に入り、観客賞も受賞したことだし、これはきっと公開される!と、シネジャ83号の表紙画像にも採用したのですが、公開ならず・・・ やっと、今回のイスラーム映画祭で日の目をみることになりました。
皆さん、お見逃しなく!
という次第で、鑑賞のご参考に監督インタビューをお披露目します。
『ガザを飛ぶブタ』
2010年・フランス=ベルギー/99分/カラー/DCP
監督:シルヴァン・エスティバル
パレスチナ人の猟師がイスラーム教徒にとって不浄なブタを釣り上げてしまう。困惑していたら、入植地にいるユダヤ人がブタを有効利用していると知り、売り込みにいく。ユダヤでもブタは不浄なもの。どう利用しているの?と、想像しただけで可笑しい。(思いもかけない利用法は、映画で確認ください!)
『迷子の警察音楽隊』で実直な音楽隊長が印象的だったサッソン・ガーベイが、ブタに羊の毛皮をかぶせて歩く姿がなんとも可愛いです。
◎インタビュー
2011年の東京国際映画祭の折に来日したシルヴァン・エスティバル監督&ミリアム・テカイアさん インタビューをご披露します。
(シネジャ83号に掲載したものから構成しました。ご購入いただければ嬉しいです♪)

当時、監督はウルグアイ在住。記者会見は英語、合同取材ではフランス語・・・ 思わず、「監督、あなた何者?」と質問してしまいました。
監督は、パリ生まれのフランス人。キリスト教の家庭に育ったけれど特に教会には行かない。2011年当時、AFP通信の記者で中南米担当としてウルグアイに駐在。主演女優のミリアム・テカイアさんはチュニジアのイスラーム教徒の家庭で育った方。監督とはプライベートでもパートナー。監督はお蔭で自然にアラブ文化に接するようになったとのことです。とてもラブリーなカップルに、お話を伺いました。
◆ブタは国によって捉え方に大きな違いがある!

記者会見の時に、「黒ブタちゃんは今?」と質問され、「食べちゃった! 冗談冗談」と答えた監督。物語を思いついたとき、「ブタはどこにいても汚い。男といっしょ」「イスラエル兵と話すなんて、ブタを飼うよりタチが悪い」といったジョークがすぐに思い浮んだそうです。ミリアムさんにムスリムの人がメンタル的に考えてどんなセリフなら大丈夫かアドバイスして貰い、失礼のないように配慮したとのことです。
ブタはある種の国境がある動物。中国やフランスなどはブタがすごく好きな国。フランスではカードの絵柄に愛嬌のある動物として使われます。一方、イスラームやユダヤでは不浄なもの。地域差のあるのが面白い。ベトナムのブタは黒。西洋のピンクのブタと色も違います。
◆ジョージ・クルーニーのペットのブタちゃんを起用
ジョージ・クルーニーがベトナム豚をペットとして飼っていて、あまりにもよく食べて困っていると聞きつけて、5匹分けてもらってマルタに連れていき、一番顔のいいシャルロットちゃんを主人公に抜擢。メスだけれど、映画ではオス役。忌むべきものを豊穣に使うというシンボリックな設定。
国連事務局にブタを売り込みにいくのですが、けんもほろろに追い返されます。大きな問題に手を焼いていて爆発寸前なのにブタの話をされてもという次第。人道的なことには対応できても、根本的な解決ができない。結局国連が何もできないことを象徴している場面。
◆パレスチナ人の奥さんとイスラエル兵が一緒に観ているのはブラジルのドラマ
パレスチナ人の家の屋上をイスラエル兵の見張り台に貸しているのですが、居間でテレビドラマを観ている奥さんの脇にイスラエル兵が立って一緒に楽しむ場面もあって微笑ましいです。観ているブラジルのドラマの最後は皆が仲良く暮らすという設定。現地の女性たちがドラマをよく観ていて、エジプトのドラマが多いのかと思っていたら、ブラジル等のドラマも観るというので採用したそうです。ただし、使ったのはほんとのドラマではなく、適当に繋ぎ合わせたもの。
『ガザを飛ぶブタ』上映日程
12月13日(日)19:00〜
12月15日(火)13:00〜
上映後 トークセッション
『パレスチナの今―戦火の中の子どもたち―』 【ゲスト】古居みずえさん
12月18日(金)16:00〜