2016年11月05日

東京国際映画祭 香港の名優フランシス・ンが脱皮して7変化!? 『シェッド・スキン・パパ』にほろり   (咲)

東京国際映画祭会期中に、できるだけ書くつもりでいたのに、朝早く出かけ、帰宅は午前様という怒涛の毎日で挫折してしまいました。忘れないうちに、お気に入りの作品や女性監督の作品を紹介します。

コンペティション
◆シェッド・スキン・パパ   
監督:ロイ・シートウ 2016年 中国=香港

まずは、今回の映画祭で一番楽しみにしていた『シェッド・スキン・パパ』から!
名優フランシス・ン(ン・ジャンユー)演じる父親が脱皮して、どんどん若くなる!?  これはもう、笑えるに違いない!と、ワクワク。

さて、映画は・・・
ルイス・クー演じる挫折した映画監督。母親を亡くし、妻からは離婚を突きつけられ、借金も抱えている。そんな折、認知症の父親が脱皮してどんどん若くなっていく・・・
原題『脫皮爸爸』がしっくりきます。
80代の老いた父親は、これ、ほんとにフラさま?(フランシス・ンのことです)と疑うほど、認知症の爺さんに成りきっています。脱皮して、3度目、実年齢に近づいてくると、確かにフラさま! さらに脱皮して、息子よりも若くなってしまう父親。七変化ならぬ6つの年代を見せてくれます。抜け殻に命が吹き込まれて、6世代が一緒に食事するシーンは圧巻。
父親がどんな姿になっても、父として接する息子の姿にじ〜んとさせられました。

記者会見には、原作「ぬけがら」の著者、佃 典彦氏も登壇。「佃氏がいなければ、この映画はなかった」とロイ・シートウ監督。佃氏も、「信じられない気持ちでいっぱい。3つ違いの監督は血は繋がってないけどブラザー」と固く握手。
映画監督である主人公の部屋には、『野良犬』『自転車泥棒』『ゴッド・ファーザー』のポスター。ロイ・シートウ監督自身の好み。特に、親子の情を描いた『自転車泥棒』は、この映画にも繋がるものがあります。

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左から、佃 典彦(原作/脚本)、ロイ・シートウ(監督/脚本)、フランシス・ン、フランシスの息子さん、ルイス・クー、ジャッキー・チョイ、ジェシー・リー

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監督の「父親役はフランシス・ンしかありえない」という言葉を受けて、「監督が知っている俳優の数が少ないんです。もっと付き合いを広げればいい人がいると思います」と謙遜するフランシス。

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ルイス・クーは、「それほど年齢の変わらないジャンユーの息子役と聞いてびっくり。配役が決まって、ジャンユーが僕の父と一緒にご飯を食べたいと我が家にやってきました。僕と父の関係を観察していったのですが、80代のパートでは僕の父にだんだん似てきました」と語りました。
さらに、「一番難しかったのは、脱皮して息子と同じ年代になった時。見た目は同年代でも、あくまで父親ですから」とルイス。

離婚を突きつける妻役のジェシー・リーと、母親の若い時代を演じたジャッキー・チョイの二人は、口をそろえて、名監督、そして、名優の二人と仕事が出来た喜びを語りました。
ジェシー・リーは、「私だったら、ルイスと離婚するなんて、絶対言いません」とも。

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ルイス演じる映画監督の少年時代を、フランシス・ンの実の息子さんが演じていて、夜遅い舞台挨拶にも一緒に登壇。眠たそうな息子をあやすパパの姿が微笑ましかったです。(こちらの写真は、26日夜の上映後で、23:30頃!)
posted by sakiko at 12:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月03日

東京国際映画祭 東京グランプリ『ブルーム・オヴ・イエスタデイ』はドイツ流の渋いラブコメ  (咲)

東京国際映画祭も最終日。受賞作が発表されました。
審査結果はこちら!

東京グランプリは、『ブルーム・オヴ・イエスタディ』に決定!
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クリス・クラウス監督(10/27 Q&A)

続く、審査委員特別賞『サーミ・ブラッド』のアマンダ・ケンネル監督(こちらは残念ながら、写真撮ってません・・・)
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最優秀監督賞は『私に構わないで』のハナ・ユシッチ監督と、二人の女性監督が受賞したのは嬉しい限りです。
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また、国際交流基金アジアセンター特別賞をインドの女性監督アランクリター・シュリーワースタウ(『ブルカの中の口紅』が受賞しました。

下馬評の高かった『天才バレエダンサーの皮肉な運命』は無冠。ちょっと残念です。

受賞作やお気に入りの作品については後日ご紹介しますが、取り急ぎ、東京グランプリとWOWOW賞をダブル受賞した『ブルーム・オヴ・イエスタディ』をご紹介します。

◆『ブルーム・オヴ・イエスタディ』
(2016年 ドイツ=オーストリア)
ホロコーストの加害者と被害者の孫が出会い、恋に落ちる!
ドイツ人でホロコースト研究者のトトは頑固者。同僚と口論しているそばで教授が急逝。遺された犬のガンジーを引き取り、ホロコーストを語る会の開催に向け奔走する。そんな折、フランスからやってきた研究者の女性と知り合うが、彼女はユダや人だった・・・

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クリス・クラウス監督(左)と、カトリン・レンメさん(プロデューサー)
(10/28 記者会見にて)

ドイツでは、8歳の頃からホロコーストについて学び続けるけれど、加害者の子孫であっても、個人的痛みとして感じていないことがほとんど。被害者側とのぎくしゃくした関係を克服するには、痛みに直接向き合うことが大切と、クラウス監督。
また、ドイツでは、ユダヤ人の生き残りはいい人に見せないといけないという風潮がありますが、そのタブーを破って、嫌味なタイプの女性を登場させたとのこと。
コメディータッチで描きながらも、ホロコーストの痛みは持続させた作りにしたと語りました。
確かに、犬のガンジーを思わず車から放り投げたり、冗談(笑えない!)をよく言ったりしているのですが、実はあまり好きになれなかった作品。
それでも、27日、23時15分に上映が終ってからのQ&Aに時間の許す限り参加。さらに翌日の記者会見にも参加しました。ホロコースト絡みなので気になった次第。
ドイツ流ラブコメ仕立てということなのでしょうか・・・
posted by sakiko at 20:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月02日

東京国際映画祭 31日、11月1日

31日は試写の予定表を見間違え、1本目の『誕生のゆくえ』(イラン)試写に間に合わず後で会見にだけ参加。エルハム・コルダさんの美しいこと。
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EXシアターの『ノクトラマ/夜行少年たち』(フランス)へ。7人の若い男女がパリのあちこちに爆弾をしかけ、人のいなくなった夜のデパートに集まってくる。何か不満を持っているらしいけれど、動機の説明はなし。デパートの中をてんでに遊びまわってるうちに警官隊(SWATみたいな)に包囲され、問答無用で狙い撃ちされていく、うわぁあな作品でした。『サンローラン』のベルトラン・ボネロ監督作品。
歌舞伎座で見逃した『忠臣蔵 デジタル最長版』の活弁つき一般上映へ。4DX装置のある8番スクリーンでしたが、動きは一切なし。今回の伴奏は初めて聞く琵琶の生演奏・語りつき、片岡一郎さんの説明ともよく合ってとっても良かった。リベンジして大正解。

1日
よくよく確認して『私に構わないで』(クロアチア)試写+会見。
強権的な父親のもと、息の詰まるような思いで暮らすマリヤナ。急に父が倒れて一家の責任が彼女一人にかかってくる。演技初体験のヒロインは建築家で、監督がビーチでスカウトしてきたとはびっくり。
『キングコング対ゴジラ [4Kデジタルリマスター版]』一般上映@EXシアター
美しく蘇った画面にトークゲスト中野昭慶(特技監督)、町山智浩さん、司会の笠井アナ絶賛。いろいろと面白い裏話が出て、話が時間内に終わらず延長戦(?)へ。次の開映がせまってきたので、またも後ろ髪ひかれつつ会場を後にした。
『サファリ』(オーストリア)試写
『パラダイス』3部作のウルリヒ・ザイドル監督が、狩猟者と撃たれた動物を映していくドキュメンタリー。(白)
posted by shiraishi at 02:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月01日

東京国際映画祭 28日、29日、30日

TIFFレポ続き
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取材もしています。
上:台湾の音楽界のドキュメンタリー『四十年』ホウ・チーラン監督(中央)とタオ・シアオチンエグゼクティブ・プロデューサー、アイリーン・リープロデューサー。
下:ふんわりした絵柄のアニメーション『この世界の片隅に』片渕須直監督、ヒロインすずの声をあてたのんさん。

『あなた自身とあなたのこと』(韓国)ぐるっとまわって元に戻った?いつものホン・サンス監督風味。
『グローリー』(ブルガリア)保線作業員が大金を見つけたばかりに、身勝手な官僚やマスコミに翻弄される。こわーい映画でした。
『ゴッドスピード』(台湾)“一路順風”という原題だったので、ロードムービーなのだろうと予想していたけれども、この映画はどこへ行くんだ〜?とハラハラ。久しぶりのマイケル・ホイ兄さんは味わい深い。
『三人姉妹』(インドネシア)明るく楽しいミュージカル映画。
『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(フランス)イスラム過激主義に洗脳されるふつうの少女たち&取り残されて愕然とする親たち。胸が痛くなる作品。
『パリ、ピガール広場』(フランス)主演のレダ・カテブ来日!なんだか馳星周氏に似てる…
『浮草たち』(アメリカ)クライム・ストーリーからラブ・ストーリーへ。主演のグレースさん美人です!!
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『鳥類学者』(ポルトガル)解説も読まず、鳥がたくさん観られるのかと思っていたので、展開に仰天。「?」が飛びまくりました。うーむ…
『見習い』(シンガポール)死刑執行人見習いのアイマンには秘密があった。上司のラヒムが渋くて、三国連太郎さんをほうふつとさせました。
『フィクション。』(インドネシア)富裕層に生まれながら幸うすい少女が見つめるのはプール掃除に来た男性。どこからどこまでがフィクションだったのか?(白)
posted by shiraishi at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする