2016年12月05日

『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』明治大学トーク

11月15日(火) 明治大学リバティタワー(御茶ノ水)で「国際寛容デー(11/16)に向けて、 “ダイバーシティ”って何?」社会の不平等をなくすため立ち上がった同性カップルの女性の映画『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』を観て、これから社会人になる大学生と考えるというイベントが行われました。

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『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』作品紹介
ニュージャージー州オーシャン郡で、正義感の強い女性ローレルが刑事として20年以上、市民を守るため懸命に仕事に打ち込んできたのだが末期癌であることがわかった。しかし、同性愛であることを理由に、パートナーに遺族年金を残せないということがわかった。それを改善するために同僚や、同性愛の団体などと協力し、この制度を変えるために立ち上がり、同性のパートナーでも遺族年金を受け取れるように変えたという実話を元にした物語です。

公式サイト http://handsoflove.jp/
シネマジャーナルHP 作品紹介『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/444371754.html
http://mikki-eigazanmai.seesaa.net/article/443986874.html

明治大学 情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター主催による『国際寛容デー(11/16)に向けて、下記コンセプトの元“ダイバーシティ”って何?』と銘打ったトークイベント付き試写会が行われました。

主催者のメッセージ
映画の主人公は同性のカップルですが、様々なかたちの不平等や偏見は世界各地、そして日本にも存在しています。LGBTと称されるような価値観の違い、性別、年齢、宗教、人種などを理由に、嫌な思いをしている方々もいます。一方で、今の日本では、“ダイバーシティ推進”という動きが企業や行政で活発になり注目されてきています。ダイバーシティ=多様性、企業内では同僚の理解や福利厚生面で改善などの進んでいる会社も増えてきています。
トークでは、翌日11/16国際寛容デーに向けて、多様性のある社会づくりを実践している方々の考えをうかがいつつ、これから社会人となる大学生の方々とともに、今の日本でも起きている、映画のような不平等を改善する“ダイバーシティー推進”について考えていきます。

司会 明治大学情報コミュニケーション学部准教授田中洋美、同情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター副センター長
感動的なストーリーに仕上がっていたと思います。今日はダイバーシティということでセッションを行っていくのですが、明日7月16日は国連が定めた「国際寛容ディ」という日になっています。これは1995年に国連が定めたものですが、国連のサイトにはこのように書いてあります。「人々は本質的に多様です。違いがあるということに寛容であることによって、世界各地の混ざり合ったコミュニティが持続していくことができる」とあります。このことを念頭に置きながら、国連で寛容宣言というのが1995年11月16日に採用されたそうです。それに向けて、違いとか多様性ということを、この『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』を題材に考えてみたいと思います。

司会 明治大学政治経済学部4年 松岡宗嗣(2015年ジェンダーセンター主催イベント『MEIJI ALLY WEEK 〜明治大学にLGBT支援者であるAllyを増やす一週間〜』実行委員会学生代表)
 今日は、4人の方に来ていただきました。登壇される方を紹介します。映画の感想を述べながら、ご自身のことを語っていただこうと思います。

登壇者
世田谷区区議 上川あや(偏見のない平等な社会づくりを推進。在日アメリカ大使館より2012年国際勇気ある女性賞受賞)
トランスジェンダーです。27歳まで男性サラリーマン。性別をさまよって30歳から女性として暮らすようになりました。しかし、社会的変化が必要と考え議員になった」と自己紹介。
映画の中のローレルは、職場で自分のセクシャリティをカミングアウトできないでいた人。しかし、病になった後、(女性パートナーへの)遺族年金の申請を断られたことで、自分の本当言葉を語り始め、少しづつ理解を得て、社会制度そのものに変化を与えるということが描かれていました。私も選挙を戦って、親はどういう育て方をしたんだと言われて、泣きながら選挙を始めて、2ヶ月後には当選することができました。社会の壁というのを実感したので、社会制度を変えるため、戦う手段として政治家になり、奮闘するなかで「社会は変えられる」と実感しました。本作を2回観たんですが、すごく泣いたし疲れたのですが、心地いい疲れでした。

●日本アイ・ビー・エム潟\フトウェア事業本部部長 川田篤(日本でのダイバーシティ推進活動の先駆である企業。LGBTおよびアライによるボランタリーなネットワークのリード)
私自身はLGBTの中ではGAYですと挨拶。社内では50代になってからカミングアウトをしたのですが、そういうのは珍しいのか、こういうところにけっこう呼ばれます。私自身は去年の4月にカミングアウトしたのですが、LGBTの取り組みを社内で始めたのは2003年くらいだったので、もう14年くらい活動しています。自分にとってカミングアウトは、第2の成人式だったかなという気持ちがあります。初めて自分に向かい合えて、自分を受け入れて、本来の自分になった。それが50代だった。チャレンジはあったし、変わることもできた。55歳なので、社会の中で貢献できるのも時間が限られてきたので、いろいろ若い方にメッセージを発信していけたらなと思います。
映画を観た感想ですが、自分の生活にうつして観てしまいました。私は15歳年下のパートナーと暮らしているのですが、この主人公と同じで、多分私のほうが先に死ぬかなと思うのですが、そういう時に、今、住んでいる住まいを相手に残すことができるのかな。残念ながら世田谷区に住んでなくてパートナーシップは認められていない。いろいろ手続きすればできるのかもしれないですが、財産相続はできない。私が死んだらパートナーは住むところがなくなってしまうということが現実のものとして、映画の世界でまざまざとみせられました。すてきだなと思ったのは、人々を巻き込んで変えていく。誰かが声を上げないと世の中変わらない。どういうきっかけで声を上げるかというのはそれぞれだし、感じ方も様々だと思うけど、声を上げれば、動けば人に伝わる。それが共鳴して広がっていくっていうことだと思いました。一人でも多くの人にそのことを伝えていただければと思います。

●潟|ーラ人事部ダイバーシティー推進チーム課長 齋藤明子 2015年ダイバーシティ経営企業100選(経済産業省表彰)に選ばれる
今日はダイバーシティというテーマで話しあいをするということですね。今、日本では女性活躍推進法というのが施行されたこともあって、比較的日本ではLGBTの問題の前に女性の活躍をこれからどうあるんだということが多く議論されてきました。私のほうからは女性が働く上で、どういうリスクがあるのかということを話せたらと思います。
この映画を観た感想なんですが、ステイシーは自分の技術を売って、この整備工場でトップクラスの人と競うことで、それに勝って仕事を得ていったりとか、ローレルもなかなかキャリアを築けなくて、管理職になるにはなかなか難しいというシーンも出てきます。キャリアを築く難しさも描いていると思います。
ただ、これはいろいろな見方ができる作品だと思います。一人の人間が、仕事を得る、キャリア積む、パートナーと出会って恋をして結ばれて、家を持って、病にかかってという具合に、人生ドラマが凝縮された映画だなと思います。人それぞれな感じ方ができる映画だなと思いましたし、じわじわ涙が出る、このシーン理解できるというような映画でした。

●配給元 松竹 大森千秋 今回の映画の買い付けを担当
洋画の買い付けについてということですが、フィルムマーケットと言って、映画の見本市のようなものが世界のいろいろな都市で行われているのですが、私たちは年に3,4回ほど出かけて行って、洋画の情報を得たり、映画を日本で公開するための交渉をしたりなどの仕事をしています。この映画は2年前の今頃にアメリカのマーケットで紹介されました。主人公は同性愛のカップルということですが、純粋にラブストーリーに感動しました。人が人を思うまっすぐな気持ちみたいなところに感動し注目しました。ベルリン映画祭でも7,8分程度の抜き出し映像というのを買い付けチームで観まして、短いにも関わらず思わず泣いてしまうほど感動的な映像で、日本で公開したいねという話になったのですが、ただメンバーの中にこの作品のパッケージに嫌悪感を持つ女性がいまして、40代の女性だったのですが、まさに40代の働く女性をターゲットに観てほしいという思いがあったので、そういう女性がネガティブな反応をしめされるようであればということで一旦保留にして、社内に持ち帰り観ていただいただきました。同性愛について描かれた映画でも、男性同士ならいいけど女性同士だと自分に対してリアルすぎて拒否感を感じるという意見もあったのですが、私たちが心配したほどネガティブな反応はなく、ほとんどの意見はポジティブだったので、私たちとしては安心して、この映画の買い付けをすることにしました。
その後、去年のトロント映画祭でワールドプレミア上映されたのですが、そこで一般のお客様と一緒に観ました。一般のお客様たちが泣いている方も多く、拍手喝采で大絶賛だったので、こんな風に受け入れられて感動を伝えられる映画だったらと買い付けに至ったわけです。

司会 田中
普段、私たちはいろいろな映画を観ますが、普段、買い付けの裏事情というのはなかなか聞けないので、興味深く拝聴いたしました。

司会 松岡 
一部の否定的な意見はあると思うんですが、それでも公開を決めていただいて嬉しいなと思いました。

司会 田中
配給会社さんの中でもいろいろな意見があったりと、ダイバーシティをめぐる今の社会状況は、ある意味過渡期、新しい価値観が表れつつある中で古い価値観にしがみついている。古いものと新しい価値観が両方存在している中に生きているのかもしれませんね。そんな中で、法律とか政治制度というのは、だいぶ昔に作られてきたものだったりします。映画の中でもそのあたりが鍵になっていますね。
その後、この映画を元に、同性のパートナーに対する法的な話や、実際の行動などの話などがあり、日本での同性カップルに対する状況の説明、法律的な事情、今後の動向などの話が続き、自治体のパートナーシップについてのなどの話、ダイバーシティを勧める組織の状況、たどるべき道などの日本での変化について語られました。

その後、下記のような話で進められました。
大学生がほとんどの観客なので、社会に出てからの会社の中での価値観。人と人との関係。人間性の問題などの話から、社会の価値観、寛容性などの話が出ました。マジョリティが必ずしも正しいとは限らないけど、多数決で決められてしまうことなど。
世の中を変えていくのは我々自身であること。それぞれの場で、社会を変えていくのは、当時者だけでなく支援者が必要なこと。寄り添ったり、助け合ったりしないと変わっていかない。
多様性を享受できる人間でないとやっていけない時代になっていく。
いろいろな人生経験と創造性を持った人間が、社会の中で働くということが必要になってくる。自分らしく働き、活躍できる社会の実現のために、そんな社会の実現のために、皆さん変えていきましょう。
当事者が声を上げることでしか、世の中は変わっていかない。
現代において、多様性とか想像力がより重要であると考えると、この映画によって考えるきっかけになっていただければ嬉しいです。ただ、今回のアメリカの選挙の結果を考えると、世界では進歩しているようでいて、一方では後退しているような現状も見受けられるので、この時代だからこそ、この映画を観て理解を広げていってほしいというというようにまとめていました。
いろいろな違いが世界に満ちあふれていて、この作品の中でもセクシャリティの違い以外にも、いろいろな違いを抱えた人たちが生きているということが、この映画の中で見ることができます。ジェンダー、障害、病気、世代など、いろいろな違いの先を考えなくてはいけない。その中でそれを表す時代のキャッチフレーズというかキーワードの一つがダイバシティなのかなと思いました。
この作品、実話に基づいたものですが、どういう社会状況でも変化は起こりうるという事例を見せてくれる作品だと思います。ダイバーシティについて、幅広く考えていきましょう。

『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』
11月26日より新宿ピカデリーほか全国順次公開

【11月16日 国際寛容デーとは】
「国際寛容デー」は1995年にユネスコ総会で「寛容原則宣言」と「国連寛容年のためのフォローアップ計画」が採択されたことに由来している。1996年に国連総会で制定された。
−2013年 潘基文(パン・ギムン)事務総長メッセージより抜粋−
『…寛容は受動的なものではありません。特に意見の違いがある場合には、相互の理解と尊重に基づき手を差し伸べるという能動的な選択が必要です。寛容とは、私たちの多様性が強みであり、すべての社会にとって創造性と再生の源泉であるという認識に他なりません。』(国連広報センター公式サイトより)

c 2015 Freeheld Movie, LLC. All Rights Reserved. 
公式HP:http://handsoflove.jp/

ダイバーシティ=多様性の尊重とのことですが、私自身はこの言葉になじめない。英語でなく日本語で表してくれないかなと思ってしまいました。(暁)








posted by akemi at 07:06| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする