2016年12月18日
東京外国語大学でバングラデシュ映画『テレビジョン』 村長の厳格なイスラームの解釈に翻弄される村人たちの姿に大笑い (咲)
東京外国語大学での大使館や映画配給会社などの支援・協力を受けて世界の諸言語による映画や講演会を行うプロジェクト「TUFS cinema」で、今年は南アジア映画特集。
11月26日にはパキスタン映画『神に誓って』(ショエーブ・マンスール監督、2007年)が上映されました。上映後には先輩の麻田豊氏の解説もあり、何度か観た懐かしい映画に再会したかったのですが、東京フィルメックスの会期中で諦めました。
南アジア映画特集 第二弾として、バングラデシュ映画『テレビジョン』の上映会が12月10日(土)に開かれ、日本初上映とあって、これは見逃せないと行ってきました。
上映前に、モスタファ・サロワル・ファルキ監督のビデオメッセージ。
「上映後には、スタッフが悲鳴をあげるほど質問をいただければハッピー」
『テレビジョン』Television
監督:モスタファ・サロワル・ファルキ
2012年/ベンガル語/106分
海辺(川辺?)の村。船の上で新聞の写真部分に白い紙を貼る男。紙をめくって、ちらっと若い女性の写真を覗き見してから糊で貼り付ける。
イスラームの教えに厳格な村長が、一切の画像を禁止したための措置。
テレビ局の女性キャスターにインタビューを受ける村長。
「テレビも禁じるのは? 今はイマームもテレビに出ています。あなたの双子のお兄さんも番組を持っていますよ」
「兄は悪い人間」「ユダヤ教徒の作った箱などいらない」と言い放つ村長。
カメラが上空に引いて、実はこのインタビュー、女性から村長の顔が見えないよう、白い幕越しに行われているのが写しだされます。
村長の家では、息子のスレイマンが母親を介して、父親に携帯電話が欲しいと切願しますが、若者に携帯を与えては堕落すると許しません。恋人コーヒヌールと携帯で連絡を取りたいスレイマンは必死です。いつもそばにいる使用人のモジュヌのお陰で携帯をゲットし、コーヒヌールに携帯を届けさせます。が、このモジュヌもコーヒヌールに恋をしていて、勝負は見え見えなのに告白。
ある日、クマール先生の自宅にテレビがやってきます。
「僕はヒンドゥー教徒だから問題ない」という先生に、「ムスリムには見せるな。天罰が下る」と村長。
クマール先生宅での子どもたち相手の算数教室は大賑わい。大人たちも家の外からなんとか観ようとします。鏡にテレビの画面を写して、外の大人たちに配慮する子どもたち。
そんなこんなの騒動が続く中、村長がメッカ巡礼を決意します。でも、パスポートを取るのに写真がいる! 絶対写真を撮りたくない村長は、「そうだ! 双子の兄の写真で申請しよう!」と、兄のところへ。風格あるイマームの兄は、弟の頼みを却下。しぶしぶ写真を撮り準備も整ったのですが、思わぬことで旅立てなくなり空港近くのホテルに逗留する村長。巡礼の様子が観たいと禁断のテレビをつける・・・
(もっと詳しい内容は、松岡環さんのアジア映画巡礼でどうぞ!)
小さな村の人たちのいろいろな人生模様が、ユーモアたっぷりに描かれた素朴な映画に、会場からは何度も笑いが漏れました。
◆東京外国語大学の非常勤講師渡辺一弘さんによる解説
まずは、バングラデシュの映画事情。
これまでアジアフォーカス福岡国際映画祭でバングラデシュ作品が数本上映されていますが、ある二人の監督(注:モルシェドゥル・イスラム監督とタンビール・モカンメル監督)のもので、モスタファ・サロワル・ファルキ監督作品は今回が日本初上映。
バングラデシュでは、ダッカを中心に映画製作が行われ、「ダリウッド映画」はかつて年100本作られていたことも。
1971年、パキスタンから独立した当時、映画館は168館。80年代になり映画製作が盛んになり、1995年には1235館も。その後、映画産業は衰退し、年間30本位に落ち込み、映画館も300館位に。勧善懲悪や、理不尽な質の悪い映画が増えて、観客を惹きつけなくなったこと、人気のインド映画に似せて作ったことから飽きられたことなどが衰退の理由。
インド映画は人気だが、バングラデシュの映画館では、自国映画保護のため上映禁止。(パキスタン映画も上映禁止)
また、80年代、ビデオが家庭に普及しレンタルビデオが盛んになったことも映画館減少の大きな要因。(これは、どこの国も同じですね)
現在では、ケーブルテレビの普及し、月500円位で、40〜60チャンネルを観ることができ、映画チャンネルでボリウッドやハリウッドの映画も簡単に観れることから、映画館が必要なくなったという事情も世界の趨勢。
映画館で映画を観るのは、人力車や日雇いなど下層の人たちが中心で、彼等の日頃の鬱積を晴らすためセクシーなダンスなどを挿入して上映するようになり、家族連れで行きにくい状況に。特に、女性一人では入りにくいようです。古い映画館は設備も悪く、冷房の効かないところも。
2,004年にダッカのショッピングビルにシネフレックス(シネコンのバングラデシュ流の呼び方)が初めて出来、2013年にも、大きなモールにシネフレックスが誕生。チケット代が従来の映画館が200円位のところ、1000円前後という高い値段ながら家族連れに人気だとか。
『テレビジョン』について
モスタファ・サロワル・ファルキ監督は、1973年生まれ。
大学で演劇を学び、卒業後、テレビでCMやドラマを手がける。
2003年に製作した映画が釜山映画祭で評価を受け、『テレビジョン』も韓国のサポートを受けている。
舞台はベンガル湾の出口に近いところで、川なのか海なのかわからない広さだけど、川とのこと。
Chairman(村長と訳)の住むところは、砂州に出来た村。
コルカタ(旧カルカッタ)付近の標準ベンガル語と違って、この地域のなまりの強い方言を積極的に取り入れ、若い人の支持を受けたそうです。
ちなみに冒頭の女性キャスターの言葉は、標準ベンガル語。
(後に質問したところ、この映画で使われた方言は標準ベンガル語を使っている人に理解できる程度のなまりだそうです。役者も方言を実際に話す人たちではなく、方言指導をしたもの)
宗教を扱っているけれど、正面から批判したものではないことにも注目。
息子は一旦父親に逆らいますが、やはり従う。バングラデシュでは親に従順という標準的な若者の姿。
また、ボリウッドのコピーではない映画。
他国と同様、このようなアート系の映画はそれほど観客が集まらない。
所得が増えて、良い映画館に足を運べるようになればと。
そして主演女優は、監督の奥様!
役名のコーヒヌールは、ペルシア語のkuhe nur(光の山=ダイヤモンド)が起源。
バングラデシュ大使をしていた先輩から聞いた話では、ベンガル語には1万語位のペルシア語起源の語彙が入っているそうです。過去にイランから移民してきたイラン系の名字の方もいるとか。
バングラデシュ映画は、アジアフォーカス福岡国際映画祭でこれまでに4本観たことがあります。どれも素朴な映画でした。
中でも、『テレビジョン』を観て思い出したのが『根のない樹』.。
2002年のアジアフォーカスで上映されたタンビール・モカンメル監督による2001年製作作品。
ある村に人が訪れなくなった墓があると聞きつけた男が、それを聖者の墓に仕立てて一儲けしようとする話。人々にイスラームを説き、村人たちも彼を敬って色々と物や金を届けるようになるのですが、ある日、村に本物のイマームがモスクを作りボロが出るという物語。
とても印象深い映画で、今でもはっきりと覚えています。これぞイスラーム映画祭にぴったりだと思うのですが、福岡からは門外不出とか。
そもそも、聖者崇拝も、厳格なイスラームを守るサウジアラビアなどではご法度。
モカンメル監督にお話をお伺いした時に、撮影用に石に赤いテントを張ったら、翌朝、お賽銭が投げ込まれていたと笑っていました。バングラデシュで一儲けするのは赤い布が1枚あれば良さそうです。
『テレビジョン』にヒンドゥー教徒の先生が出てきたので思い出したのが、2012年のアジアフォーカスで上映された『わが友ラシェド』。1971年の バングラデシュ独立戦争を13歳の少年たちの目を通して描いた物語。原作のある作品ですが、モルシェドゥル・イスラム監督自身、当時13歳。
監督にインタビューした折に、印パ分離独立で「東パキスタン」となった地域では、ヒンドゥー教徒も特にインド側に移住せず、共存していたことを聞きました。独立戦争が勃発した時、西パキスタン政府軍が真っ先に攻撃したのが、東パキスタンに住むヒンドゥー教徒だったとか。
これまでにアジアフォーカス福岡国際映画祭で上映されたバングラデシュ映画
1995年【第5回】 車輪 モルシェドゥル・イスラム監督
1997年【第7回】 苦難の大地 モルシェドゥル・イスラム監督
1998年【第8回】 転校生ディプー モルシェドゥル・イスラム監督
2004年【第14回】 ラロン タンビール・モカンメル監督
2005年【第15回】 ぼくはひとりぼっち モルシェドゥル・イスラム監督
2012年【第22回】 わが友ラシェド モルシェドゥル・イスラム監督
もっともっとバングラデシュ映画を観たいと思ったら、はい、1月の「イスラーム映画祭2」で上映されます!
『泥の鳥』
2002年/バングラデシュ、フランス/ベンガル語/98分/原題:Matir Moina/英題:The Clay Bird
監督:タレク・マスゥド
これは楽しみ♪
イスラーム映画祭2、ほかにも魅力的な作品がいっぱい!
詳細は、公式サイトで!
https://t.co/kG9vocQXmR
『TOMORROW パーマンネントライフを探して』公開前試写会&ワークショップ(12/9) で、頼もしい若い人たちと意見交換 (咲)
フランスで観客動員数100万人を突破し、フランスで最も権威のあるセザール賞にも輝いた大ヒット映画『TOMORROW パーマンネントライフを探して』。地球にやさしく、心を豊かにしてくれるライフスタイルを模索する提案型ドキュメンタリー。

12月23日(金・祝)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開されるのを前に、試写会&ワークショップが開かれ、参加してきました。
<日時> 12月9日(金)
<会場> GEOC 地球環境パートナーシッププラザ(国連大学内)渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F
<MC・進行> NPO 「iPledge」(アイプレッジ) 代表 羽仁カンタ氏
国際青年環境NGO 「A SEED JAPAN」から独立し、NPO 「iPledge」 設立。年間2,000人を超えるボランティアとともに野外音楽フェスやイベント等の環境対策で若者をリードし続けている団体の代表。
<トークゲスト> GEOC 星野智子氏
まずは、映画『TOMORROW パーマンネントライフを探して』の鑑賞。
*作品内容*
2012年、権威ある学術雑誌「ネイチャー」に21人の科学者たちにより、今のライフスタイルを続ければ人類は滅亡するという論文が発表された。この内容に衝撃を受けた、女優メラニー・ロランと活動家・ジャーナリストのシリル・ディオン。「この先の未来、人類が滅亡しないよう、地球にやさしく、みんなが幸せでいられるライフタイルはどこにあるのか?」を探る旅に出る。
アメリカ、イギリス、フランス、デンマーク、アイスランド、アイスランド、スイス、インドの8ヶ国で、農業、エネルギー、食、経済、民主主義、教育など様々な分野で環境対策のために“新しい暮らしや取り組みを始めている人々”に会う。

(C) MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINEMA - MELY PRODUCTIONS
Story 1 そもそもの、はじまり Beginning
アメリカ:「ネイチャー」誌に発表された論文。その執筆者に会う。
イギリス:パーマカルチャー(持続型農業)の講師に会う。
Story2 まずは、新しい食のあり方から Agriculture
アメリカ:デトロイト。自動車工場の相次ぐ閉鎖で人口が激減。住民たちは自給自足をめざす農業を始めた。
イギリス:マンチェスター近郊トッドモーデン。インクレディブル・エディブル(みんなの菜園)の生まれた地。花壇や公共の土地に何百種類もの果物や野菜を植え、共有するシステム。
ベルギー:食糧への権利に関する国連特別報告官に会う。
インド:遺伝子組み換え作物が農民に与える運命を糾弾し、有機農法を農民に広める環境保護活動家に会う。
フランス:石油も除草剤も機械も動力も使用しないル・ベック・エルアンの農場を訪ねる。
Story3 石油がなくても? Energy
アメリカ:世界的な経済危機、エネルギーの保護、気候変動への長期に渡る解決策を提案している人物に会いにいく。
デンマーク:2025年までに二酸化炭素排出ゼロを目指すコペンハーゲンの取り組みをみる。
アイスランド:エネルギー政策先進国として注目を浴びる国。水力発電、地熱エネルギーなど再生可能エネルギーで利益を得ている首都レイキャビク。
フランス:レユニオン島。温室の屋根を使って太陽光発電を行い島内の電気を賄う。ソーラーパネル設置と引換えに農民に温室を無料で提供している。
アメリカ:サンフランシスコ:2020年までにすべてのゴミをリサイクル活用させる「ゼロ・ウェイスト」プロジェクトを推進中。
注:再生可能エネルギー:化石燃料とは違い、太陽光、風力、地熱、水力といった自然の力で常に補充されるエネルギーのこと。
Story4 消費を増やしながら、同時に減らすことはできない Economy
フランス:リール/ポシェコ社。徹底した環境配慮型の生産体制で封筒づくりしている現場をみる。敷地で蜂を飼い、果樹園も。
イギリス:トットネス。トランジション運動を始めたロブ・ホプキンズの本拠地。庭や畑を共有し、地域通貨を創設。石油依存を減らすことを目標にしている。
イギリス:ブリストル。発展を遂げた地域通貨の成功例をみる。
ベルギー:ユーロ創設にも尽力した経済学者を訪ねる。
スイス:バーゼル/ヴィール銀行。1934年設立。使用範囲の限られた無利子のWIR通貨で相互貸付システムを提供。
アメリカ:オーランド/バリー。アメリカに於ける地元起業家の最大ネットワーク。持続可能な経済のための運動を行っている。
Story5 私たちが持っている力 Democracy
ベルギー:疲弊した民主主義症候群を覆すには、古代ギリシャで行われていた「くじ引き制度」の復活をと主張する歴史家に会う。
アイスランド:レイキャビク。2008年の金融危機後、2010年、政治家・銀行家・大企業を監視する組織が生まれ、無作為に選ばれた市民1000人が政策提言し、新憲法を作成する25名を選出。2011年新憲法草案を国民の67%が賛成するが、保守党は拒んだ。
インド:コタム・バカム。革命的な民主主義の村。カースト制度最下層不可触民出身の村長が、村の集会「グラムサバ」を開設。市議会と別に村民代表の会が問題を議論。5年間で廃棄物の削減、下水道の建設、スラム街の再開発、子どもの就学奨励などを成し遂げる。村長のための学校も設立し、10年間で900人以上の自治体の長が訓練を受けたという。
Story6 人として必要なものは? Education
フィンランド:教育システム改革に取り組んで40年。学校を支える哲学は、子どもたちに将来に備えて学び方を教えること。教え方はひとつではなく、いくつもあり、生徒によっても違う。
◆ワークショップ
2時間の映画には、上記のように多岐に渡る取り組みが盛り込まれていて、そのどれもが世界各地で実現できれば未来は明るいと思わせてくれるものばかり。
観終わって、休憩をはさみワークショップ。参加者は若い方を中心に約60名。
NPO「iPledge」代表の羽仁カンタ氏の司会進行で、まずは映画を観て印象に残ったキーワードを配られた紙に1分ほどで書きます。前後の席の人と向き合い、2〜3人で書き留めた言葉を元に感想をシェア。前後で組ませたのは、一緒に参加した友人どうしではなく、できるだけ知らない人と語り合えるようにとの配慮。私も大学生の女性、20代の会社員の女性、そして40代の会社員の男性と4人で語り合いました。
有機農法、地域貨幣、教育など、それぞれ書き留めたキーワードは違っても、それぞれのテーマに皆も関心を持って、話がはずみました。
次に、映画を観て、自分がやってみたいと思ったこと、未来のためにできることを2分間で書き留めます。
食事・食材にこだわる、農業を自分もやってみたい、自分に何が大切かを考えるきっかけになった、希望を持って続けることが大事、身の回りの人に映画で気になった内容を発信していきたい等々、さらに具体的な行動についての話題になりました。
最後に、この映画を観てよかったと思ったら、誰に映画を観てもらいたいかを各自用紙に書きました。
こちらはお互いに語り合うことなく、ワークショップは終了。
ちなみに私が書いたのは、世の権力者、大企業の経営者、銀行マン、投資家。もちろん、地球に暮らすすべての人が観て、それぞれに感じたことを行動に移せばと!
◆NPO「iPledge」代表、羽仁カンタ氏 & GEOC(地球環境パートナーシッププラザ)星野智子さんによるトーク

公式写真
まず、羽仁カンタ氏より、「iPledge」について紹介がありました。
年間2,000人を超えるボランティアとともに野外音楽フェスやイベント等の環境対策で若者をリードし続けている団体。ごみゼロナビゲーション(野外公演などでゴミを拾わないボランティア:袋を配りゴミの持ち帰りを呼びかけるなど)、i turn プロジェクト(都会と田舎の若者を繋ぐ)、Life Buffet(生き方をつまみ食い)など多くのプロジェクトを実行しているとのこと。
星野智子さんからは、映画の感想として、「地域通貨が機能している実例や、農業の様々なやり方を見れて、心強く思い、さらにどうやって広げていくかが課題」と述べられました。また、地球環境パートナーシッププラザでは、グリーンカーテンを実施していて、苗を植えたりしていることをPRされました。さらに、具体的に経済を変えていくことができればとも。
デンマークの再生可能エネルギーへの取り組みが印象的で、自身の住む千葉県がデンマークとほぼ同じ規模なので、日本全体では無理でも、県内で自給自足ができそうだと思えると語りました。
羽仁氏は映画に出てきた大都市デトロイトでの農業を引き合いに出し、「東京でも農業を!」と語り、星野さんに「国連大学なんだから率先して、コンクリートを畑にして野菜を植えたら、すごくいいと思う。渋谷駅に花を植える“シブハナ”があるけど、“シブベジ”になって面白いと思う」と提言されました。
最後に星野さんは、「大企業に繋がる人たちにさりげなくこの映画を観せたい。また政策に係わる人、例えば地元の議員さんや役所の人に観てもらいたい」と語りました。羽仁氏も「映画は、2時間集中して観られるので、ぜひ政策を提言している人や議員の人たちに観てもらいたい」と話し、さらに「政治家だけが変わるのでなく、自分たち1人1人が変わっていく必要がある。ぜひ映画を観て、自分を変えるヒントやチャンスにしてほしい」と語りました。

公式写真 (最後列 右端が私の後ろ姿です)
☆映画を観るだけでなく、若い方たちと意見交換することができ、有意義なひと時となりました。皆さん、しっかりとした考えを持って発言をされて、こちらがたじたじでした。皆がこんな若者なら、ほんとに未来は明るい!
未来を担う世界中の若い方たちに、ぜひこの映画を観ていただいて、どれか一つでも実行していただければ、地球の環境は少しずつ改善されることと思います。
*作品データ*
TOMORROW パーマンネントライフを探して 原題:DEMAIN
監督:シリル・ディオン、メラニー・ロラン(『イングロリアス・バスターズ』『オーケストラ!』)
出演:シリル・ディオン、メラニー・ロラン、ロブ・ホプキンス、ヴァンダナ・シヴァ、ヤン・ゲールほか
2015年/フランス/120分/シネスコ/カラー
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/tomorrow/
★2016年12月23日(金・祝) 渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

12月23日(金・祝)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開されるのを前に、試写会&ワークショップが開かれ、参加してきました。
<日時> 12月9日(金)
<会場> GEOC 地球環境パートナーシッププラザ(国連大学内)渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F
<MC・進行> NPO 「iPledge」(アイプレッジ) 代表 羽仁カンタ氏
国際青年環境NGO 「A SEED JAPAN」から独立し、NPO 「iPledge」 設立。年間2,000人を超えるボランティアとともに野外音楽フェスやイベント等の環境対策で若者をリードし続けている団体の代表。
<トークゲスト> GEOC 星野智子氏
まずは、映画『TOMORROW パーマンネントライフを探して』の鑑賞。
*作品内容*
2012年、権威ある学術雑誌「ネイチャー」に21人の科学者たちにより、今のライフスタイルを続ければ人類は滅亡するという論文が発表された。この内容に衝撃を受けた、女優メラニー・ロランと活動家・ジャーナリストのシリル・ディオン。「この先の未来、人類が滅亡しないよう、地球にやさしく、みんなが幸せでいられるライフタイルはどこにあるのか?」を探る旅に出る。
アメリカ、イギリス、フランス、デンマーク、アイスランド、アイスランド、スイス、インドの8ヶ国で、農業、エネルギー、食、経済、民主主義、教育など様々な分野で環境対策のために“新しい暮らしや取り組みを始めている人々”に会う。

(C) MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINEMA - MELY PRODUCTIONS
Story 1 そもそもの、はじまり Beginning
アメリカ:「ネイチャー」誌に発表された論文。その執筆者に会う。
イギリス:パーマカルチャー(持続型農業)の講師に会う。
Story2 まずは、新しい食のあり方から Agriculture
アメリカ:デトロイト。自動車工場の相次ぐ閉鎖で人口が激減。住民たちは自給自足をめざす農業を始めた。
イギリス:マンチェスター近郊トッドモーデン。インクレディブル・エディブル(みんなの菜園)の生まれた地。花壇や公共の土地に何百種類もの果物や野菜を植え、共有するシステム。
ベルギー:食糧への権利に関する国連特別報告官に会う。
インド:遺伝子組み換え作物が農民に与える運命を糾弾し、有機農法を農民に広める環境保護活動家に会う。
フランス:石油も除草剤も機械も動力も使用しないル・ベック・エルアンの農場を訪ねる。
Story3 石油がなくても? Energy
アメリカ:世界的な経済危機、エネルギーの保護、気候変動への長期に渡る解決策を提案している人物に会いにいく。
デンマーク:2025年までに二酸化炭素排出ゼロを目指すコペンハーゲンの取り組みをみる。
アイスランド:エネルギー政策先進国として注目を浴びる国。水力発電、地熱エネルギーなど再生可能エネルギーで利益を得ている首都レイキャビク。
フランス:レユニオン島。温室の屋根を使って太陽光発電を行い島内の電気を賄う。ソーラーパネル設置と引換えに農民に温室を無料で提供している。
アメリカ:サンフランシスコ:2020年までにすべてのゴミをリサイクル活用させる「ゼロ・ウェイスト」プロジェクトを推進中。
注:再生可能エネルギー:化石燃料とは違い、太陽光、風力、地熱、水力といった自然の力で常に補充されるエネルギーのこと。
Story4 消費を増やしながら、同時に減らすことはできない Economy
フランス:リール/ポシェコ社。徹底した環境配慮型の生産体制で封筒づくりしている現場をみる。敷地で蜂を飼い、果樹園も。
イギリス:トットネス。トランジション運動を始めたロブ・ホプキンズの本拠地。庭や畑を共有し、地域通貨を創設。石油依存を減らすことを目標にしている。
イギリス:ブリストル。発展を遂げた地域通貨の成功例をみる。
ベルギー:ユーロ創設にも尽力した経済学者を訪ねる。
スイス:バーゼル/ヴィール銀行。1934年設立。使用範囲の限られた無利子のWIR通貨で相互貸付システムを提供。
アメリカ:オーランド/バリー。アメリカに於ける地元起業家の最大ネットワーク。持続可能な経済のための運動を行っている。
Story5 私たちが持っている力 Democracy
ベルギー:疲弊した民主主義症候群を覆すには、古代ギリシャで行われていた「くじ引き制度」の復活をと主張する歴史家に会う。
アイスランド:レイキャビク。2008年の金融危機後、2010年、政治家・銀行家・大企業を監視する組織が生まれ、無作為に選ばれた市民1000人が政策提言し、新憲法を作成する25名を選出。2011年新憲法草案を国民の67%が賛成するが、保守党は拒んだ。
インド:コタム・バカム。革命的な民主主義の村。カースト制度最下層不可触民出身の村長が、村の集会「グラムサバ」を開設。市議会と別に村民代表の会が問題を議論。5年間で廃棄物の削減、下水道の建設、スラム街の再開発、子どもの就学奨励などを成し遂げる。村長のための学校も設立し、10年間で900人以上の自治体の長が訓練を受けたという。
Story6 人として必要なものは? Education
フィンランド:教育システム改革に取り組んで40年。学校を支える哲学は、子どもたちに将来に備えて学び方を教えること。教え方はひとつではなく、いくつもあり、生徒によっても違う。
◆ワークショップ
2時間の映画には、上記のように多岐に渡る取り組みが盛り込まれていて、そのどれもが世界各地で実現できれば未来は明るいと思わせてくれるものばかり。
観終わって、休憩をはさみワークショップ。参加者は若い方を中心に約60名。
NPO「iPledge」代表の羽仁カンタ氏の司会進行で、まずは映画を観て印象に残ったキーワードを配られた紙に1分ほどで書きます。前後の席の人と向き合い、2〜3人で書き留めた言葉を元に感想をシェア。前後で組ませたのは、一緒に参加した友人どうしではなく、できるだけ知らない人と語り合えるようにとの配慮。私も大学生の女性、20代の会社員の女性、そして40代の会社員の男性と4人で語り合いました。
有機農法、地域貨幣、教育など、それぞれ書き留めたキーワードは違っても、それぞれのテーマに皆も関心を持って、話がはずみました。
次に、映画を観て、自分がやってみたいと思ったこと、未来のためにできることを2分間で書き留めます。
食事・食材にこだわる、農業を自分もやってみたい、自分に何が大切かを考えるきっかけになった、希望を持って続けることが大事、身の回りの人に映画で気になった内容を発信していきたい等々、さらに具体的な行動についての話題になりました。
最後に、この映画を観てよかったと思ったら、誰に映画を観てもらいたいかを各自用紙に書きました。
こちらはお互いに語り合うことなく、ワークショップは終了。
ちなみに私が書いたのは、世の権力者、大企業の経営者、銀行マン、投資家。もちろん、地球に暮らすすべての人が観て、それぞれに感じたことを行動に移せばと!
◆NPO「iPledge」代表、羽仁カンタ氏 & GEOC(地球環境パートナーシッププラザ)星野智子さんによるトーク

公式写真
まず、羽仁カンタ氏より、「iPledge」について紹介がありました。
年間2,000人を超えるボランティアとともに野外音楽フェスやイベント等の環境対策で若者をリードし続けている団体。ごみゼロナビゲーション(野外公演などでゴミを拾わないボランティア:袋を配りゴミの持ち帰りを呼びかけるなど)、i turn プロジェクト(都会と田舎の若者を繋ぐ)、Life Buffet(生き方をつまみ食い)など多くのプロジェクトを実行しているとのこと。
星野智子さんからは、映画の感想として、「地域通貨が機能している実例や、農業の様々なやり方を見れて、心強く思い、さらにどうやって広げていくかが課題」と述べられました。また、地球環境パートナーシッププラザでは、グリーンカーテンを実施していて、苗を植えたりしていることをPRされました。さらに、具体的に経済を変えていくことができればとも。
デンマークの再生可能エネルギーへの取り組みが印象的で、自身の住む千葉県がデンマークとほぼ同じ規模なので、日本全体では無理でも、県内で自給自足ができそうだと思えると語りました。
羽仁氏は映画に出てきた大都市デトロイトでの農業を引き合いに出し、「東京でも農業を!」と語り、星野さんに「国連大学なんだから率先して、コンクリートを畑にして野菜を植えたら、すごくいいと思う。渋谷駅に花を植える“シブハナ”があるけど、“シブベジ”になって面白いと思う」と提言されました。
最後に星野さんは、「大企業に繋がる人たちにさりげなくこの映画を観せたい。また政策に係わる人、例えば地元の議員さんや役所の人に観てもらいたい」と語りました。羽仁氏も「映画は、2時間集中して観られるので、ぜひ政策を提言している人や議員の人たちに観てもらいたい」と話し、さらに「政治家だけが変わるのでなく、自分たち1人1人が変わっていく必要がある。ぜひ映画を観て、自分を変えるヒントやチャンスにしてほしい」と語りました。

公式写真 (最後列 右端が私の後ろ姿です)
☆映画を観るだけでなく、若い方たちと意見交換することができ、有意義なひと時となりました。皆さん、しっかりとした考えを持って発言をされて、こちらがたじたじでした。皆がこんな若者なら、ほんとに未来は明るい!
未来を担う世界中の若い方たちに、ぜひこの映画を観ていただいて、どれか一つでも実行していただければ、地球の環境は少しずつ改善されることと思います。
*作品データ*
TOMORROW パーマンネントライフを探して 原題:DEMAIN
監督:シリル・ディオン、メラニー・ロラン(『イングロリアス・バスターズ』『オーケストラ!』)
出演:シリル・ディオン、メラニー・ロラン、ロブ・ホプキンス、ヴァンダナ・シヴァ、ヤン・ゲールほか
2015年/フランス/120分/シネスコ/カラー
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/tomorrow/
★2016年12月23日(金・祝) 渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー