世界的な「映画一家」を支えてきたエレノア・コッポラ。自身のエピソードを基に80歳で長編劇映画デビューし、主演のダイアン・レインと共に来日した。そして、花束を持って駆けつけたのは樹木希林。
フランシス・フォード・コッポラの妻エレノア・コッポラが80歳で初めて長編劇映画の監督・脚本を手掛けたロードムービー。『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』など、夫や娘ソフィアの映画のメイキングなどを制作してきたエレノアだが、自身の体験を基に描いた本作が長編映画の監督・脚本デビュー作。
夫の仕事仲間であるフランス人男性ジャックとカンヌからパリに車で向かう途中でのエピソード。子育てを終え、人生のひと区切りを迎えた女性アンは、これから何をしたらいいか悩んでいた。そんなアンにジャックは「あなたなら何でもできる」と励ます。この旅は忘れていた自分のやりたかったこと、人生の喜びを再発見する旅になった。自身で監督し、アンを演じたダイアン・レインと共に来日した。
シネマジャーナルHP
作品紹介
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/451427433.html
ミッキーの毎日・映画三昧
http://mikki-eigazanmai.seesaa.net/article/451345772.html
『ボンジュール、アン』
エレノア・コッポラ監督/アメリカ/92分
7月7日よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次ロードショー公開
公式サイト:http://bonjour-anne.jp
エレノア・コッポラ監督、ダイアン・レイン来日記者会見
通訳 戸田奈津子
6月7日、東京・大手町のパレスホテル東京
エレノア監督は「夫や娘が日本で記者会見するのを何度も脇で見て、写真を撮ってきましたが、自分が主役で記者会見することは初めてで、皆さんの映画に対する関心を感じて大変嬉しいです」とニッコリ。今作のテーマとして「異文化に接した時に感じること」を挙げ、「日本でいろいろな文化に接した時の感動がヒントになっています。日本の芸術や、華道、日本人の感性や自然を愛する気持ちに感銘を受けています。そういうものに対する感動を移し変えて描いたのがこの作品です」と明かした。
長編劇映画を初監督し、どういう思いかという問いには「やはドキュメンタリーとは全然違います。ドキュメンタリー作品は一瞬の命を素早くとらえたり、その瞬間が大事です。でもフィクションの場合は、いろいろなものを自分で考えて入れていくことができる。一コマ一コマ自分で作ることができる。それなりに長編を作る責任も違ってきますし、アートの形として違います。今回、こういう機会を得られて、とても幸せだと思っています。また幸運にもダイアン・レインやアレック・ボールドウィンやアルノー・ヴィアールなど素晴らしいキャストを組むことができて、初めての挑戦が生きたと思います」と語ったけど、「この作品を6年前に企画しましたが、お金が集まらなくて、資金集めに奔走しました」と語り、「映画にお金を出す人々は、女性の物語で、女性監督の映画にはお金を出したがらない。引いてしまうわけです。そのなかで可能になったということは意味のあることですし、ダイアンが出すっぱりの主演で、この映画が成功すれば、こういう映画にもお金を出していけるという先例になればと思います」と語った。
監督の演出で、印象深かったことは?という質問に対して、ダイアンは「18歳とは違うからね」と笑いを誘ったのち、「他の監督(男性、女性含めて)とエレノア監督の違うところは、自分のアーティストとしての経験があるからこそ、他者を信頼できるというところです。今回の作品の場合は女性のスタッフが多かったのですが、才能のある方を集めることができて、彼らを信頼しているからこそ、最高のものを引き出すことができたと思っています。これが今までの監督と違うところです。コラボレーションが密。いろいろな提案に対してもオープンでした。脚本を見せていただいたのは2年前で、その時は出演が無理かなと思ったのですが、2年後、再度話があって引き受けました。その間に脚本も変えていたのですが、エレノアさんが脚本家としてもオープンに他の人の意見も受け入れられたからだと思います」
それに対してエレノア監督は「ダイアンは私の中でNo.1のチョイスでした。彼女は6歳の時から映画界で働きプロ中のプロで存在感があります。その実力というのはラッシュで見た時、驚きました。肌の中までアンになりきってくれてパーフェクトな存在だった」と賛辞を送った。
ダイアンは「今回、アンを演じていてほっとしたところは、結婚の終わりとか恋の始まりというような作品ではないというところでした。二人が登場する時、ビジネスパートナーとその妻という関係性の中で、ある種、礼儀正さを持った状態で物語は始まります。そんな中で、自分を知るというワクワクする発見がありました。誰かとの出会いは大事。自分共感するところや、ここは自分とは違うというところは?という問いに対しては「主人公アンがした経験を、自分も経験しました。それが共通点でした。誰かを文化へのガイドのように信頼をすること。この場合は文化への入り口が《食》だったわけですが、誰もが食べることは必要なわけですが、ものを食べるということはポエトリーを感じられるものです。人生のターニングポイントというのは誰しもあるわけですが、同じ年代の女優ということで、体験的にも子供が巣立ち、とても共感できるものでした。時間を戻すことはできないわけで、前に進むしかない。その後、どうするのか。新しい領域への経験への挑戦というのが、共通するものでした。自分もこの業界の中で、同じように葛藤してきました。この作品では、私はスクリーンタイム(写っている時間)が多かったと思います」と語り「かつてはゆっくりと口コミで時間をかけて広がっていくというようなことがあったのですが、アメリカでは、今は最初の興行成績が全てという見方しかされない。日本ではわかりませんが、やはり最初の週に観にいっていただけるようお願いします」と語った。
この後、樹木希林さんが花束を渡しに登場。エレノア監督と対面を果たした希林さんは、「この間カンヌ映画祭の監督賞を獲得した、ソフィア・コッポラさんのお母さん。どんなたたずまいの方かなと思っていましたが、いやあ〜、やっぱりすごいですねえ! お目にかかれて良かったです」と言葉をかける。
映画の感想については、「私の周りにも、50歳を過ぎて『こんな生活でいいのか、夫に連れ添い続けた自分は何だったんだろう』と、悩み始める方がたくさんいます。特に才能ある女性に多い」と語り、「そういう方たちに、胸に落ちる映画なんじゃないかと思った」と見どころをアピール。一方で「アンという女性に共感した部分は?」と尋ねられ、夫、内田裕也を引き合いに「私はエレノアさんのように夫に仕えていません。50年近く別居していますので、何も苦労していません。ですからアンに共感するところは、ちょっとないかもしれませんね」と茶目っ気たっぷりに話し、場内をもりあげた(笑)。
カンヌからパリまでの道中、フランスの食や文化、以外な話が興味をそそる。この映画を観たら、きっとこういう旅をしてみたいなという人が増えるかも。この映画を巡るツアーみたいのがあったら、私もぜひ行ってみたい。皆さん、ぜひご覧ください。(暁)
2017年07月02日
100号完成しました。
30周年100号目の本誌、定期購読の方々にお送りしました。
公共施設、劇場や書店に手分けして順次納品しています。
リストはHPのトップ左側にございます。お申込みもトップページから。
http://www.cinemajournal.net/index.html
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通常80pのところ、今号は88pになりました。
いつもの映画祭レポート、インタビュー、新作紹介などのほか、特集は30周年を記念していただいたお祝いの言葉、思い出話、「シネジャの歩み、そしてこの30年」と題した年表が12p。みなさまの30年も一緒に思い出していただけると嬉しいです。
この100号を一区切りに、次は来年4月「シネマジャーナル annually」として生まれ変わります。
以後年1回の発刊の予定です。
その分HPとブログを充実させていきますので、どうぞこれからも応援をよろしくお願いいたします。