2017年09月03日

エジプト映画『ヤギのアリーとイブラヒム』上映会  可愛いヤギとエジプトの3つの海を巡る心の旅を楽しみました (咲)

9月2日(土)3時から早稲田大学戸山キャンパスで開かれた「エジプト映画『ヤギのアリーとイブラヒム』東京上映会」に参加してきました。

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ヤギを愛して変人と思われているアリーと、耳鳴りに悩む天才ミュージシャンのイブラヒム。呪術師から、エジプトの3つの海に小石を投げれば悩みは解決するといわれた二人。半信半疑で旅に出る・・・

二人の住むカイロのイスラーム地区から、アレキサンドリア、シナイ半島へと真っ白な可愛いヤギを連れての旅。エジプトの様々な風景と、二人を取り巻く人間模様をたっぷり楽しみました。

国立民族学博物館 開館40周年記念で開催されたもので、大阪の国立民族学博物館では、9月9日(土)1時半から上映会が行われます。
関西の方、ぜひ!
http://www.minpaku.ac.jp/museum/event/workshop/yagi20170909

という次第で、映画の内容と、上映後に行われた監督も登壇したトークの模様を、ネタバレにならないようにご紹介します。

『ヤギのアリーとイブラヒム』
監督:シェリーフ・エル=ベンダーリー
2016年/エジプト・フランス・UAE・カタール合作/アラビア語/98分

カイロの雑踏を行く大きな白熊のぬいぐるみ。
背負っていたアリーが警官に呼び止められる。
中に薬物を隠しているに違いないと、ナイフで引き裂く警官。
恋人ナダへのプレゼントなのに・・・と嘆くアリー。
家に帰るとナダが見当たらない。必死に探すアリー。
浴室に閉じ込められていたナダを見つけ、ほっとするアリー。
実は、ナダは真っ白なヤギ。
母親は、ヤギを溺愛する息子に、「いい加減にしないと殺して食べてやる」と脅す。
変人扱いされていることに悩むアリーは呪術師を訪ねる。
そこには異常な耳鳴りに悩むミュージシャンのイブラヒムも相談に訪れていた。
エジプトの3つの海に小石を投げれば解決すると、小石の入った小袋を渡される。
3つの海とは、地中海、紅海、そしてナイル河!
まずは地中海のアレキサンドリアへ。
破れたシャツを直したいと仕立て屋を探すイブラヒム。
次の目的地への出発が遅くなるといらいらするアリー。
ようやく、次なる紅海をめざしてシナイ半島への乗り合いタクシーに乗り込む。
トイレ休憩の時、イブラヒムにナダを託すアリー。
だが、ちょっと目を離した隙にナダがいなくなってしまう・・・
ナダは無事戻ってくるのか?
そして、二人の悩みは解決するのか?

アリーがヤギを深く愛するようになったのには長い話が・・・と、最初の方で口走る隣人がいたのですが、最後のほうで、観客はやっと長い話の真相を知ることになります。
あ〜切ない。

映画は、聴覚障がい者の方のために、環境音字幕(音響を解説する字幕)付きで上映されました。また、主催者による解説や監督トークの折には、手話も。
イブラヒムの祖父が耳が聴こえないため、手話で会話する場面があることから、このような形での上映会を実現させたとのことでした。

◆映画監督 シェリーフ・エル=ベンダーリーにきく
 聞き手:大稔哲也氏(早稲田大学文学学術院教授)
     相島葉月氏(国立民族博物館・准教授)

印象に残った監督の話を抜粋してお届けします。

ー なぜヤギを選んだのか?
監督:動物ならなんでもOKでした。犬や猫はたくさんいます。のらヤギはあまりいない。それにヤギは美しいと思ったので。

― 最近、インディペンデント映画が大きな流れになっています。財源を海外に求めて自由に製作しています。本作は娯楽性もあって、エジプトでロードショーもされています。本作をどのように位置づけされますか?
監督:ただただ「映画」です。低予算のインディペンデントと、商業映画という分け方をされるけど、監督として分類されることは好ましいと思っていません。自分の好きなものを作りたいだけです。

― 楽器ウードを選らばれたのは?
監督:音楽担当のアフマドと1年近くかけて音楽を考えました。ウードを登場人物に演奏させるかどうかも長い間話し合いました。使うと決定したのは、私がウードを好きだから。

― エジプトというと音に溢れています。皆あまり気にしないから「騒音問題」にはならないようですが。

監督:カイロの騒音は、自分にとってほんとは重荷。好きな音楽をかけながら観る景色とのギャップが好きです。

― 黒魔術を登場させたのは?
監督:二人が旅に出るきっかけを作るだけのことです。

― 二人の住んでいるのがイスラミックカイロの中心地で職人も多く住むところです。墓地(死者の町)も近いところ。そこを舞台に選ばれたのは?
監督:私自身カイロの心臓部の出身で、二人が深く繋がっていることを表わしたかったのです。カイロの中でも美しいところでありながら、放置されているところです。

★会場との質疑応答
― 日本では特に女性の間でボーイズラブのジャンルが人気なのですが、アリーとイブラヒムの関係も、友情以上の関係と考えていいですか?
監督:エジプト人は親密に触れ合います。二人の関係を友情以上に感じるのは観る人の自由ですが、僕にはそのような意図はありません。映画を観れば、それは明らかなことと思います。
(注:私自身、観ていて、そのような雰囲気は全く感じなかったし、そも、イスラーム世界では同性愛はタブー。とはいえ、初めてイランに行ったとき、男どうしで手を繋いで歩いている姿をよく見かけてびっくりしたものです。)

― 手話のシーンを入れたのは?
監督:イブラヒムの祖父が聴覚を失った設定だからです。それよりも、手話に国境があることをここにきて初めて知りました。

聴覚障がい者の方から、映画の中の手話はアメリカの手話に近いと感じたとのコメントがありました。

☆どの質問に対しても、沈着冷静に答える監督に唸ったひと時でした。
写真撮影は禁止でしたので、監督の写真を撮ることができず残念!

★シェリーフ・エル=ベンダーリー監督
1978年生まれ。エジプトの新進気鋭の映画監督。2007年に高等映画学院を卒業後、同校で監督論を教える。2006年にショートフィルムを制作し始めて以来、映画祭の公式上映作品に選ばれるなど国際的に高い評価を受けている。『ヤギのアリーとイブラヒム』は初の長編作品。2011年のカンヌ国際映画祭で招待上映されたエジプト革命にまつわる短編フィクション・オムニバス作品『18日』に「夜間外出禁止」という作品で参加。
(国立民族学博物館のサイトより)


posted by sakiko at 19:07| Comment(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする