2018年02月11日

座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルに行ってきました

高円寺でやっている「第9回 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」に初めて行ってきました。実を言うと、第一回目から行ってみたいと思っていたのだけど、このフェスティバルの開催日が、シネマジャーナル本誌の年初めの号の編集日といつも重なっていたため、行くことができなかったのです。でも、シネマジャーナルは年3回の発行をやめ(年1回の発行になりました)、HP中心に記事を掲載することになったので、今回初めていくことができました。今回のテーマは「表現者たち」。歌、写真関連の作品、また女性のドキュメンタリー作家の草分けである吉永春子さんと、永六輔さんの追悼番組を観ることができればと思います。

どうしても観たかったのは、2月8日に上映された森達也監督の『〈NONFIX〉放送禁止歌〜歌っているのは誰? 規制しているのは誰?』。これはフジテレビの深夜番組『NONFIX』で1999年11月に『「放送禁止歌」〜歌っているのは誰? 規制しているのは誰?〜』というタイトルで放送されたということだけど、私は観たことがありませんでした。
森監督の作品は、オウム真理教を撮った『A』を観て以来、注目していたけど、この『「放送禁止歌」〜歌っているのは誰? 規制しているのは誰?〜』については、TVで放映された時には知らず、その後、映画館で上映されるたびにいつか観てみたいと思っていました。今回、やっと観ることができ、森監督の話も聞くこともできました。

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放送禁止になった歌を、時にはその歌を歌った歌手に歌ってもらったり、歌ったものを映像なしで、歌詞だけテロップで流すという方法で紹介していたけど、「規制しているのは誰?」で、<誰が何のために>というのが言いたいことだったと思う。19年も前の作品なのに、今も状況は変わらないと思った。あの当時は「忖度(そんたく)」という言葉が使われてなかったけど、まさにその「忖度」で、自主規制した歌がたくさんあったんだと驚きだった。森監督はこのフェスティバルでの上映作品を別の作品にしようと決めていたのに、ぎりぎりでこの作品に差し替えたのでヒンシュクをかったと言っていたけど、去年「忖度」という言葉が飛び交ったので、この作品に変更してタイムリーだったのでは。

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高田渡の「自衛隊に入ろう」や、フォーク・クルセダーズの「イムジン河」はもとより、北島三郎のデビュー曲「ブンガチャ節 」や、ピンク・レディの「S・O・S」、高倉健の「網走番外地」も放送禁止歌だ(った?)と知った。赤い鳥の「竹田の子守唄」もそうだったとは知らずびっくり。この歌は、それでもラジオで流れていたのを聴いたこともあるし、TVでも歌っていたのを見た気がするんだけど、放送禁止歌になっていたとは。長谷川きよしの「黒の舟歌」のレコードのB面に入っていた「心中日本」などは、「心の中の日本」というタイトルにしたという話が出てきて、そんなこともあったんだと知った。
それにしても、私としてはリアルタイムで知っている歌たち。いくつかの曲はラジオで流れたり、TVで放映されたこともあったと思うけど、その後、放送禁止歌になったのかな。「イムジン河」、「自衛隊に入ろう」も、ラジオから流れたのを聴いたことがある(1968年、69年頃だと思う)。その後、すぐに放送禁止になってしまった。どちらの曲も一回聴いただけで歌詞とメロディを覚えた。それだけ強烈な印象があった。
特に「自衛隊に入ろう」は、強烈な歌詞とメロディで私の心に入ってきた。まだ高校生だった私が、初めてアルバイトして買ったのが、この曲が入っているLPだった。また、高田渡さんと同じアパートに8年くらい住んでいたこともあるので、渡さんが出てきた時には懐かしかった。

*高田渡さんとのエピソードを下記に書いているので、よかったら読んでみてください。なぎら健壱さんとのエピソードもあります。
シネマジャーナルHP スタッフ日記 高田渡さんとのエピソード
http://cinemajournal.seesaa.net/article/449628811.html

そして、今回、なんといっても発見だったのは、なぎら健壱の「悲惨な戦い」という歌。この曲はまったく知らず、初めて聴いたのだけど、国技館からのTV中継で、大相撲の取り組み中に力士の廻しが落ちるという、架空のハプニングを歌ったコミカルなもの。雷電と若秩父の取り組みという、時代を超えた組み合わせを描いていたけど、雷電という名前が出てきてびっくり。江戸時代に活躍した力士で長野県東御市の出身。現在東御市には「雷電くるみの里」という道の駅があり、私は何度も利用したことがある。ここには雷電像もあります。

忖度とは「他人の気持をおしはかること」と辞書にあるけど、これらの放送禁止歌たちも、放送局の忖度よる自主規制ということだったのだろう。美輪明宏の「ヨイトマケの唄」も、放送禁止歌だったという。知らなかった。この歌は数年前、紅白歌合戦で歌っていたけど、放送禁止になった歌も、時代を経れば規制が弱まるのか…。あらためてこの「放送禁止」というのは誰が決めるのかと思う。
最後に岡林信康の「手紙」が流れ、しみじみと聴き入った。この歌は心に沁みる。

1969年に私が買った「自衛隊に入ろう」が入っているLPレコードは、五つの赤い風船と高田渡のカップリングLPで、当時、私がこのLPを買った一番の目的は五つの赤い風船の「遠い世界に」だった。この曲が大好きだった。しかし、50年近くたった今も話題になるのは「自衛隊に入ろう」。その時は、まさかこの曲が50年後にも話題になっているとは思わなかった。でも、自衛隊を憲法に取り込もうという憲法改悪が進められている現在において、さらにこの曲は話題になっていくのかもしれない。

2月11日以降のプログラムを下記に記しますので、皆さんも「座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」に出かけませんか。

2月11日(日)
○11:00〜 特集「表現者たち/詩」
      『詩人、出張スル』
        12:50〜トークイベント(田原)
○13:45〜 特集「表現者たち/ダンス」
      『ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』
        15:10〜トークイベント(首藤康之×山崎裕)
○16:30〜 特集「追悼/吉永春子」
      『ある傷跡〜魔の731部隊』★
      『街に出よう〜福祉への反逆・青い芝の会』★
        17:55〜トークイベント(金平茂紀×橋本佳子)
◎19:15〜 是枝裕和セレクション
      『永六輔とテレビジョン 遠くへ行きたい』★
      第1回「岩手山―歌と乳と」
      第16回「オランダ坂をのぼろう 長崎・天草」を上映      
        20:15〜トークイベント(是枝裕和×今野勉)

2月12日(月・祝)
●10:00〜 コンペティション部門入賞作品上映
◎18:00〜 井浦新セレクション
      『〈日曜美術館・特別編〉異形探訪 井浦新“にっぽん”美の旅3』★
        19:10〜トークイベント(井浦新×長井倫子)
●20:10〜 コンペティション部門表彰式&入賞者トーク(入場無料)
★印は無料参考上映。上映は無料ですがトークは有料。

座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル公式HP

                                     (宮崎暁美)
posted by akemi at 06:42| Comment(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする