2018年02月18日

レスリー・チャン追っかけ仲間と息を殺して観た『欲望の翼』 (咲)

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(C) 1990 East Asia Films Distribution Limited and eSun.com Limited. All Rights Reserved.

ウォン・カーウァイ監督が1990年に放った名作『欲望の翼(原題:阿飛正傳)』。
昨年、確か東京フィルメックスのころに、ある試写に行って、宣伝さんからチラシを渡され、懐かしい画像に思わず手が震えました。13年ぶりにデジタルリマスター版でスクリーンに復活を知らせるチラシでした。

レスリー・チャンが歌手も俳優も引退を決めて、これを最後と出演したのに、この作品で香港電影金像奨の最優秀主演男優賞を取ったことが、俳優復帰を決めさせたともいわれている作品。
『男たちの挽歌』以来、可愛いレスリー・チャンにぞっこんだった私にとって、『欲望の翼』のレスリーは、それまでの出演作とも違う、妖しい魅力を放っていて、ぞくっとしたものでした。
何度観たことかわからない映画だけど、これは絶対スクリーンで観たい!
そう思っていたら、阿吽の呼吸で、レスリー・チャンを共に追いかけ、あの4月1日には共に泣いたお仲間と一緒に観に行こうと話がまとまり、5人で観に行きました。

観に行く数日前から、いくつかの場面を思い浮かべては涙していたのに、いざル・シネマの椅子に座って観はじめたら、もう、画面に釘付けで、不思議なことに涙は出ませんでした。

映画が終わって、皆、それぞれにいろんな思いが駆け巡って、しばらくは何も言えない放心状態。皆、ほんとにレスリー愛してましたからね。
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(C) 1990 East Asia Films Distribution Limited and eSun.com Limited. All Rights Reserved.

居酒屋に入り、やっと言葉が戻り、「あの表情よね」と、わいわいがやがや。
「咲さん、一睡もしてなかったよね」と隣に座っていたKさん。(映画を観てるとき、私がよく寝るのを知ってる友!)
「私たち、頑張ったよね」と、レスリーを追いかけて、香港でも日本でもよく走ったことを笑って語り合いました。
このお仲間は、レスリーが遺してくれた大事な宝物。一緒に観に行けてよかったなと思いました。

暁さんによる作品紹介『欲望の翼』
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/456514172.html
ル・シネマで、まだまだ上映中! 全国でも!



posted by sakiko at 10:09| Comment(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルに行ってきました2

やっと行けたこのフェスティバルですが、貴重な作品や珍しい作品を観ることができました。特に何十年も前の古いTV映像を観ることができたのはとても嬉しかった。今と違って録画ができなかった時代のものは観ることができないものと思っていたので、そういう映像を観ることができるとはと思いもよらない経験ができた。そんな中から観た作品の感想などを。

●特集「表現者たち/写真」『写真で読む東京』
映画監督・佐藤真が写真と向き合ったテレビ番組2本。
「変貌する街角で−桑原甲子雄と長野重一」「大都会の光と闇−内藤正敏と荒木経惟」(1996年)の2部構成で、東京をいろいろな角度で撮影した4人の写真家をとりあげている。番組ナビゲーターは写真評論家の飯沢耕太郎さん。
写真をずっと続けてきた私ですが、佐藤真監督が東京を撮った4人の写真家についてのTV映像を撮っていたなんて全然知らなかった。桑原甲子雄と長野重一、内藤正敏と荒木経惟という組み合わせで作った番組。東京を撮っている写真家はたくさんいるけど、この4人に絞った構成というのは、全然違う角度で東京を捉えてきた写真家たちだから、佐藤監督自身が写真に相当詳しいと思った。
終わってからこの作品のプロデューサーだった代島治彦さんと番組に出演していた飯沢耕太郎さんのトークがあり、この番組を作ったときのことなどが話されとても興味深かった。
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左 飯沢耕太郎さん 右 代島治彦さん

●特集「追悼/吉永春子」
TV番組「ある傷跡〜魔の731部隊」(1976年)、「街に出よう〜福祉への反逆・青い芝の会」(1977年)
20年以上前、池袋にあった映画館で吉永春子さんの特集があって、本人もQ&Aに出席したイベントがあり、TV局の女性プロデューサーの草分けである吉永さんのことを知った。そのころ、すでにTV局を退職して現代センターの代表だったと思うので1991年以降のことだったのだと思う。その時、何を見たのかよく覚えていないけど、たぶん今回見た青い芝の会のドキュメンタリーだったのかもしれない。
この作品ができた頃はまだ障害者が街頭に出ていくということに困難があり、全然バリアフリーでなかったけど(設備的にも人々の協力も)、それをものともせず、外へ出ようと活動する青い芝の会メンバーの姿が心強く、彼らの無謀とも思える行動があったから、その後、障害者が交通機関を利用しやすくなったり、制度的にもかなり変わっていったと思う。それに、人々も昔に比べたら手を貸しているのではないだろうか。私はリタイアする前の15年近くを障害者が作った会社で働いていたので、それをすごく実感した。
吉永さんが731部隊の映像を作っていたことは知らなかった。でも40年以上前、731部隊のことを隠蔽しようという空気で、なかなか情報が得られない中、根気よく調べていく吉永さんの姿が勇ましかった。
吉永さんがインタビューしに行く後ろ姿が映し出されていたけど、後で金平茂紀さん(TBSキャスター)と橋本佳子さん(ドキュメンタリージャパン・本フェスティバル実行委員)のトークの中で、報道スタッフを引き連れて取材にいく吉永さんのことが話されて納得。でも二人とも畏敬の念からか怖かったと語っていた。40年以上前のラジオやTVの制作部門で女性が生き抜いていくには、肩肘張っていくしかなかったのではとも思う。
このフェスティバル実行委員である橋本佳子さんも、吉永春子さんの後の世代で活躍する女性プロデューサーだけど、橋本さんに以前インタビューしたことがあり、それが縁で、このフェスティバルのことが気になっていた。それにしてもガンガン取材を進める吉永春子さんの勇姿は、今の私たちにとっても心強い。

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左 橋本佳子さん 右 金平茂紀さん

*『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』(長谷川三郎監督)で、プロデューサーである橋本佳子さんのことを知り、その後、『ひろしま 石内都・遺されたものたち』(リンダ・ホーグランド監督)の時に橋本佳子プロデューサーにインタビューさせていただいた。
シネマジャーナルHP 特別記事『ひろしま 石内都・遺されたものたち』
リンダ・ホーグランド監督・橋本佳子プロデューサーインタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2013/hiroshima/index.html

●是枝裕和セレクション
TV番組『永六輔とテレビジョン 遠くへ行きたい』
 第 1回「岩手山―歌と乳と」(1970年)
 第16回「オランダ坂をのぼろう 長崎・天草」(1971年)

昨年亡くなった永六輔さんを追悼し、是枝監督がセレクションしたこのプログラム。
「遠くへ行きたい」は2018年現在でも放映されている番組だけど、その1回目を見ることができた。1970年というから48年前の番組。タイトル曲は同じだけどテンポが違う。ポップな感じだった。今のが叙情的でしっとりした感じだとすると、最初のころはアップテンポでポップスのような感じ。同じ曲なのに、編曲でこんなにも違うのかと思った。
この歌を作詞した永六輔さんが出演し、けっこう自由奔放に小岩井牧場や岩手山が見える地方を彷徨していた。50年近く前の作品なのに、なんだか新鮮だった。第16回のほうは、永さんとテーマ曲「遠くへ行きたい」を歌っているデューク・エイセスも登場し、長崎県内のあちこちで歌う姿が映し出される。デューク・エイセスは昨年(2017年12月)活動を休止してしまったが歌は残る。
上映後は、この番組を制作した今野勉監督と、セレクションした是枝裕和監督のトークショーがあり、永六輔さんとの番組作りの話を聞くことができた。永さん自身が番組構成からなにから全部自分でできるので、永さんのアイデアを活用し、見せる工夫と見ている人へのメッセージと、ユーモア感あふれる旅模様が映し出され、また永さん独特の話し方が魅力の番組だったのだなと、つくづく思った。
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左 是枝裕和監督 右 今野勉監督

●コンペティション部門入賞作品は、最初、観る予定はなかったんだけど、山形ドキュメンタリー映画祭で見逃した『選挙に出たい』(邢菲 シン・フェイ監督/中国/2016)の上映があるというので、急遽、観ることにした。この作品は、中国から20年以上前に来日し、新宿歌舞伎町で飲食店や風俗店の客引きをする「歌舞伎町案内人」として働き、今は自分の店を持つ李小牧さん(本を出したり、雑誌への寄稿したりで作家でもある)が、新宿区の選挙に出馬したのを追った作品。中国では選挙というのはほとんどなく、出馬も投票の自由もないので、ぜひ立候補したいと日本に帰化し、区議会議員選挙に立候補する。李さんが立候補を思い立ったのは、長年の日本での生活の中で感じてきた差別感からだと思うが(外国人、マイノリティなど)、「日本では、私のように水商売についていた者でも選挙に立候補することができる。中国では考えられない。民主主義に魅力を感じた」と語っている。それでも出馬に至るまで紆余曲折があり、選挙を通じて、人の繋がり、協力、排他的な日本の姿が浮き彫りにされる。
上映後、中国に帰っていて不在の監督に代わり、李小牧さんが舞台挨拶に登場したが、なんとこの作品は秋にポレポレ東中野で公開が決まったそう。ぜひぜひ、皆さんに観てもらい、日本の選挙について考えてほしい。
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李小牧さん

一緒に上映された「<ETV特集> その名は、ギリヤーク尼ヶ崎 職業 大道芸人」も素晴らしい作品だった。85歳の大道芸人ギリヤーク尼ヶ崎の日常を追い、病と闘いながら芸の道を精進する姿を描いている。ギリヤークさんの舞踏というのに最初はあまり興味がなかったんだけど、観ているうちにだんだん彼の生き方に引き付けられ、最後踊り終えた時には涙が出ていた。こんな芸人がいるんだと知った。

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左 松原翔ディレクター 右前ギリヤーク尼ヶ崎さん 後 弟さん

初めて観たフェスティバルだったけど、映画もTV番組も観ることができる稀有な映画祭だった。それに若い人が多いなと感じた。けっこう専門用語や映像の作りや制作などの話をしていたので、映画や映像の知識を学んでいる若者たちかもしれない。                                                                            宮崎暁美
posted by akemi at 09:08| Comment(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする