会場は、祖師ヶ谷大蔵のギャラリーカフェ ジョルジュ。
著者である、おいしい中央アジア協会 専務理事の先崎将弘氏の講演会付き。
(キルギスといえば、山高のフェルトの帽子”カルパック”をかぶっての講演でした。)
先崎将弘著「食の宝庫キルギス」群像社刊
ISBN978-4-903619-91-0 C0339 900円(税別)
中央アジア5カ国のうち、ウズベキスタンとタジキスタンには行ったことがあるけど、キルギスは未踏。お料理も初めて。
映画『山嶺の女王 クルマンジャン』(サディック・シェル・ニヤーズ監督/2014年)、『アンダー・ヘヴン』(ダルミラ・チレプベルゲノワ監督/2015年)、そしてアクタン・アリム・クバト監督の『あの娘と自転車に乗って』(1998年)、『明りを灯す人』(2010年)、『馬を放つ』(2017年)などで、キルギスというと高い山々に囲まれた草原の国、そして遊牧民が主体の国というイメージを持っていました。
日本人に風貌のよく似たキルギス人の人口比率が高いのですが、ウズベキスタンに近い地には定住民のウズベク人もいるし、沿海州から強制移住させられた朝鮮族や、中国に近い地には、中国から移住してきた回族をルーツにする民族もいて、実は多民族国家。旧ソ連なのでロシア人もいます。
今回、用意してくださった料理も、バラエティに富んでいました。
料理人は、青年海外協力隊でキルギスで料理指導をしていた酒庭伊織さん。
遊牧民の小麦料理から、ベシュバルマク(茹でた麺の上に、羊・馬・牛などの肉を乗せたご馳走料理。今回は牛肉:写真上)とボルソック(揚げパン)写真下の一番手前。キルギスでは、宴会の時、お皿とお皿の間に埋め尽くすようにボルソックを敷き詰めるそうです。
定住民の料理からディムダマ(肉と野菜の蒸し煮、肉じゃが風)。写真下の手前から3番目のお皿。
水の少ないウズベキスタンの水を使わないお料理。キルギスは水は豊かですが、と先崎さん。
少数民族の料理から、ドゥンガン人のアシュリャンフー(じゃがいものでん粉をゼリー状に固めたものを酸味のあるスープでいただく冷たい麺料理)写真上の手前から2番目。
この、ドゥンガン人、19世紀の清朝時代の中国西北部の回族が太平天国の乱に呼応して蜂起したものの鎮圧され、当時ロシア帝国領だった中央アジアに逃れた民族集団。元々漢語を使っていたのが、ニコライ2世よりキリル文字を与えられ、今では漢字を解さないとのこと。現在、カザフスタンとキルギスに居住。リャンフーは、漢字だと「涼粉」。アシュは料理。ペルシア語でも、アーシュは料理のこと。(スープの総称もアーシュです。)
お酢がきいて、少し唐辛子も入って、とてもさっぱりした味。これは初めて経験した料理でした。
お料理も映画と同様、その国の文化や歴史を知ることのできるツールなのだと実感した催しでした。
この後、グリーンイメージ国際環境映像祭の『黄金の魚 アフリカの魚(仮題)』に間に合うように移動。
この映画では、西アフリカでの人の移動についても語られていて、いろいろな事情で人が生まれた地を離れなければならない歴史が繰り返されていることを思いました。