パレスチナ自治区のガザ地区から3名の画家が来日し、帰国前日の2月28日(木)、東京大学東洋研究所でギャラリー・トークが開催されました。
来日された3人の画家(写真 左から)
Mohammad Al-Hawajri(モハンマド・ハワージリ)氏:1976年、ガザの難民キャンプ生まれ
Sohail Salem(ソヘイル・サーレム)氏:1974年、ガザ生まれ。
Raed Issa(ラーエド・イーサ)氏:1976年、ガザの難民キャンプ生まれ
3人は、画家 上條陽子氏が代表を務める「パレスチナのハート・アートプロジェクト」の招聘により来日されたのですが、実現したのはまさに奇跡。イスラエルの占領下にあるパレスチナの中でも、ガザ地区は壁に囲まれ、2か所の検問所からしか外に出ることができないのです。
(写真:ガザ地区の模型。状況がよくわかる優れものでした。)
ビザを取得するのに、本人がテルアビブの日本領事館に行くこともできず、人に頼んで4か月かかって取得。エジプト側のラファハゲートが10日ぶりに開いて、ようやく出国。シナイ半島からカイロ空港まで、実に40か所もの検問所を通過し、深夜に到着。翌日のフライトで日本へ。
元々、1月17日よりの相模原での交流展期間中に来日するべく航空券も用意して送っていたのに、ビザが間に合わず無効になり、買いなおしたとのこと。
映像で3人の作品が紹介されました。
「レッドカーペット」のタイトルで、ガザの様々な場所にレッドカーペットを敷いた絵を描いているハワージリさん。ガザの海辺に建てたドアとレッドカーペットには、外国からのお客様を歓迎する意味と、殉教した方たちを追悼して送り出す意味を持たせているとのこと。
また、イスラエルの爆撃で瓦礫となった自宅のアトリエで、絵を描き続けるイーサさんの姿からは、何があっても屈しない精神を感じさせられました。
その後の3人の長いトークからも、物資も人も出入りが厳しく制限されているガザの実態がひしひしと伝わってきました。もはや人間性を保つのは限界にきていると感じました。
質疑応答の時に、『オマールの壁』『歌声にのった少年』などの映画を観たかどうか、観たならば、どう思われたか?と質問してくださった方がいました。
この問いに対しては、サーレム氏が代表して、「実はガザには映画館はなくて、新三日月社のホールで上映されることはあります。私はネットで観ました。『歌声にのった少年』は、ちょっと誇張があって事実と違うところがあります。『オマールの壁』は、気に食わないところもあります。でも、ハニ・アブ=アサド監督がパレスチナの映画人として世界で評価されていることはとても嬉しく思っています」と答えました。
最後に、「明日また自由のないガザに帰ります」という言葉でトークは終了しました。
いろいろなことを考えさせられた3時間でした。
彼らの発言をもっとちゃんとレポートしたかったのですが、結局、時間だけが経ってしまいました。これ以上、遅くなってもと、簡単ですが報告させていただきました。