25日(土)
上映会のうち観る予定の『欲望の怪物』は17時から5丁目のアットシアターで。赤ちゃんを抱っこして受付にいらっしゃるのは、松本監督夫人かな。6か月くらい?赤いほっぺで可愛い!いつのまにかパパになられていました。
作品は「欲望が叶う」という願掛け人形(粘土職人よっちゃん作)を取り合う大人たちの話。主演の加藤万里奈さんは「口笛演奏家」で、トークの後ギターとライブしてくださいました。こんな素敵な口笛を聞いたのは初めて。
松本監督には2011年の『花子の日記』でインタビューして以来、何度かお目にかかっています。2017年『ミスムーンライト』取材のときは、おしゃべりに花が咲いて別れた後で、写真を撮り忘れたのに気づいてご本人に送っていただくという失態を演じました。このとき代わりにトップ用の画像を撮ってくださった後藤龍馬さんに、帰りしなに会えてやっとお礼を言うことができました。2年越し…。
この取材のときに「次はバイオレンス映画」と聞いていた作品が試写の『ダイナマイト・ソウル・バンビ』。どんなバイオレンスかと想像もつきませんでしたが、映画を製作する映画でした。松本監督扮する山本監督(間違えそう)は、自主映画を作ってきて、初めて商業映画のスタッフ・キャストとコラボします。気合が入りすぎて物言いがきつく、暴走しがち。周りがハラハラしています。そのきしみの過程をメイキングとして撮影していく先輩のカメラで語っています。この先輩が「腹に一物、手にカメラ」で腹黒そう。何か起きそうな予感。これは中編でなく、劇場にかけたい長編。いつもの松本監督作品と一味違いますが、誰の真似でもないオリジナル。一般上映なるといいですね。
上映会に行く前に、新宿のTOHOシネマズで『キャッツ』(吹き替え版)を観ました。
ミュージカルは着ぐるみにメイクですが、映画実写版はCGを駆使しています。全米ではコケたとか、いい評判が少ないようでしたが、新しい生き物「猫人間」に目が慣れるか慣れないかかなぁ。私はそんなに違和感ありませんでした。吹き替え版はヒロインの葵わかなさんはじめ、みんなうまいです。ウィンくんのミストフェリーズ(いい役!)も良かったし、2月からの「ウェスト・サイド・ストーリー」が楽しみ〜。(白)
2020年01月26日
バングラデシュ タンヴィール・モカメル監督と16年ぶりに再会 (咲)
1月25日(土)、【ALFP講演会シリーズ】「アジアにおけるドキュメンタリー 〜可能性と挑戦〜」に参加してきました。
会場は、国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール。麻布十番からだと鳥居坂を上らないといけないので、行きは少し遠いけど六本木から。
そも、この講演会にぜひ参加したいと思ったのは、登壇者の中にバングラデシュのタンヴィール・モカメル監督のお名前があったから。
2002年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で、『根のない樹』が上映されたときにインタビューさせていただいたのが、初めての出会いでした。インタビューはまだ駆け出しの頃だったので、思えば雑談のようだったのではと恥ずかしくなります。(『根のない樹』は、今でもはっきり覚えている大好きな作品。語りたいことは山ほどありますが、ここでは控えておきます。)
そして、次にお会いしたのは、2年後の2004年。やはりアジアフォーカスで『ラロン』が上映された時で、それ以来なので、16年ぶり!
覚えてくださっているかなぁ〜とドキドキ。
席に着いてほどなく、少し離れたところに座っていらしたモカメル監督が私に気がついて手を振ってくださいました。さっそくご挨拶に伺いました。
「16年ぶりです」とお伝えしたら、「そんなに経つのですか・・・」と。
覚えていてくださって、嬉しい再会のひと時でした。
講演会は、第一部で下記3本が上映されました。
『カダフィ』(タイ、2013年 / 23分)
『ガーメント・ガールズ』(バングラデシュ、2007年 / 30分*)*短縮版
『ノー・フィア・フォー・ミステイクス』(ミャンマー、2017年 / 30分)
第二部は、パネルディスカッション
登壇者:
タンヴィール・モカメル氏(映画監督、作家 / バングラデシュ)
コン・リッディ氏(映像作家、映画評論家、バンコクポスト紙 編集者)
清恵子氏(作家、キュレーター、メディア・アクティビスト)
司会:マリオ・ロペズ氏(京都大学准教授)
最初に上映された『カダフィ』が、とにかく強烈で面白かったです。
タイのムスリムの男性が息子に自分の敬愛する英雄カダフィの名前を付けたという話。奥さんは暴力的なイメ―ジがすると最初から反対。登記所でも、「ほんとにカダフィと付けるのか? タイには美しい名前があるのに」と所長も出て来て説得したけれど、イマームにも金持ちになる崇高な名前だとお墨付きを貰ったと言って登録。
2011年にカダフィ大佐が殺害され、息子も15歳になり、回りから色々言われるようになります。さすがの父親も、「名前を変える?」と心配するのですが、よりによって「ファイサルはどうか?」と言うのです。ちなみに、タイのムスリムには、アラファトやサッダームもいるそうです。
タイでムスリムは、人口の4%。ほとんどがマレ―シアに近い南に住んでいますが、バンコクにも、4%のうちの12%が暮らしているそうです。今回来日した、3人の共同監督のうちの一人コン・リッディ監督もムスリムですが、父親がムスリムっぽい名前をつけなかったそうです。普通は、タイ風の名前にアラビア風の名前、それに短いニックネ―ムを付けるそうです。南では、タイ風の名前をつけないケ―スも多いとか。
映画は、カダフィ・モハンマドの名前で身分証明書を作る場面で終わりました。名前はまさにアイデンティティー。この名前もタイの一部だと父親もカダフィ君本人も誇らしげでした。
カダフィ君が通っているバンコクのイスラ―ム系の学校は、ムスリム半分、仏教徒半分。仲良く学んでいる様子にもなごみました。
なお、コン・リッディ監督は、イスラーム映画祭2で上映された『改宗』の共同監督のお一人。
タンヴィール・モカメル監督の『ガーメント・ガールズ』は、監督が2006年にアメリカ人の着ている衣料品の21%がバングラデシュ製だ知ったことから、ダッカで低賃金で働く3人の少女にフォーカスして作った作品。
朝早くカラフルな民族衣装で颯爽と歩いて工場に向かう女性たち。低賃金故に交通費節約で歩いているというのが実情と聞いて、切なくなりました。
衣料工場で働く約200万人の労働者の85%は女性(2007年製作当時)。かつて、イスラームの国バングラデシュでは、女性は家事使用人以外の働き手としては考えられていなかったそうです。衣料産業が女性たちを必要としたのですが、それが安価な衣料品を外国に提供する手立てになっていることを憂いたのが本作。工場の火災や倒壊で命を落とす女性たちも後を絶たないそうです。まさに女工哀史。
『ノー・フィア・フォー・ミステイクス』は、ミャンマーのマイノリティーであるカレン族のアウン・トゥ監督の作品。
シャン州サンク村の子どもたちが、カヤー州の州都ロイコーで夏季合宿した記録。引率するのは僧侶なのですが、実は元ビルマ空軍パイロット。一見、のどかな子どもたちの合宿ですが、権力構造、宗教、多民族等々、ミャンマーの現状が織り込まれた本作は、上映のたびにさまざまな議論を引き起こしているそうです。
3本それぞれ短い中で、地域の現状や問題を垣間見せてくれる秀作でした。
映画の詳細はこちらで!
会場は、国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール。麻布十番からだと鳥居坂を上らないといけないので、行きは少し遠いけど六本木から。
そも、この講演会にぜひ参加したいと思ったのは、登壇者の中にバングラデシュのタンヴィール・モカメル監督のお名前があったから。
2002年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で、『根のない樹』が上映されたときにインタビューさせていただいたのが、初めての出会いでした。インタビューはまだ駆け出しの頃だったので、思えば雑談のようだったのではと恥ずかしくなります。(『根のない樹』は、今でもはっきり覚えている大好きな作品。語りたいことは山ほどありますが、ここでは控えておきます。)
そして、次にお会いしたのは、2年後の2004年。やはりアジアフォーカスで『ラロン』が上映された時で、それ以来なので、16年ぶり!
覚えてくださっているかなぁ〜とドキドキ。
席に着いてほどなく、少し離れたところに座っていらしたモカメル監督が私に気がついて手を振ってくださいました。さっそくご挨拶に伺いました。
「16年ぶりです」とお伝えしたら、「そんなに経つのですか・・・」と。
覚えていてくださって、嬉しい再会のひと時でした。
講演会は、第一部で下記3本が上映されました。
『カダフィ』(タイ、2013年 / 23分)
『ガーメント・ガールズ』(バングラデシュ、2007年 / 30分*)*短縮版
『ノー・フィア・フォー・ミステイクス』(ミャンマー、2017年 / 30分)
第二部は、パネルディスカッション
登壇者:
タンヴィール・モカメル氏(映画監督、作家 / バングラデシュ)
コン・リッディ氏(映像作家、映画評論家、バンコクポスト紙 編集者)
清恵子氏(作家、キュレーター、メディア・アクティビスト)
司会:マリオ・ロペズ氏(京都大学准教授)
最初に上映された『カダフィ』が、とにかく強烈で面白かったです。
タイのムスリムの男性が息子に自分の敬愛する英雄カダフィの名前を付けたという話。奥さんは暴力的なイメ―ジがすると最初から反対。登記所でも、「ほんとにカダフィと付けるのか? タイには美しい名前があるのに」と所長も出て来て説得したけれど、イマームにも金持ちになる崇高な名前だとお墨付きを貰ったと言って登録。
2011年にカダフィ大佐が殺害され、息子も15歳になり、回りから色々言われるようになります。さすがの父親も、「名前を変える?」と心配するのですが、よりによって「ファイサルはどうか?」と言うのです。ちなみに、タイのムスリムには、アラファトやサッダームもいるそうです。
タイでムスリムは、人口の4%。ほとんどがマレ―シアに近い南に住んでいますが、バンコクにも、4%のうちの12%が暮らしているそうです。今回来日した、3人の共同監督のうちの一人コン・リッディ監督もムスリムですが、父親がムスリムっぽい名前をつけなかったそうです。普通は、タイ風の名前にアラビア風の名前、それに短いニックネ―ムを付けるそうです。南では、タイ風の名前をつけないケ―スも多いとか。
映画は、カダフィ・モハンマドの名前で身分証明書を作る場面で終わりました。名前はまさにアイデンティティー。この名前もタイの一部だと父親もカダフィ君本人も誇らしげでした。
カダフィ君が通っているバンコクのイスラ―ム系の学校は、ムスリム半分、仏教徒半分。仲良く学んでいる様子にもなごみました。
なお、コン・リッディ監督は、イスラーム映画祭2で上映された『改宗』の共同監督のお一人。
タンヴィール・モカメル監督の『ガーメント・ガールズ』は、監督が2006年にアメリカ人の着ている衣料品の21%がバングラデシュ製だ知ったことから、ダッカで低賃金で働く3人の少女にフォーカスして作った作品。
朝早くカラフルな民族衣装で颯爽と歩いて工場に向かう女性たち。低賃金故に交通費節約で歩いているというのが実情と聞いて、切なくなりました。
衣料工場で働く約200万人の労働者の85%は女性(2007年製作当時)。かつて、イスラームの国バングラデシュでは、女性は家事使用人以外の働き手としては考えられていなかったそうです。衣料産業が女性たちを必要としたのですが、それが安価な衣料品を外国に提供する手立てになっていることを憂いたのが本作。工場の火災や倒壊で命を落とす女性たちも後を絶たないそうです。まさに女工哀史。
『ノー・フィア・フォー・ミステイクス』は、ミャンマーのマイノリティーであるカレン族のアウン・トゥ監督の作品。
シャン州サンク村の子どもたちが、カヤー州の州都ロイコーで夏季合宿した記録。引率するのは僧侶なのですが、実は元ビルマ空軍パイロット。一見、のどかな子どもたちの合宿ですが、権力構造、宗教、多民族等々、ミャンマーの現状が織り込まれた本作は、上映のたびにさまざまな議論を引き起こしているそうです。
3本それぞれ短い中で、地域の現状や問題を垣間見せてくれる秀作でした。
映画の詳細はこちらで!