2020年08月30日

『追龍』に出てきた九龍城砦、今は公園になっています(暁)

2017年9月に香港に行った時、『追龍』の香港公開1週間くらい前だった。ちょっとのことで間に合わなかったけど、銅鑼湾(トンローワン)の時代広場にこの映画の大きな看板があるというので見に行った。地下道沿いにいくつか看板があって、人通りが途切れるところで何カットか写真を撮った。

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この映画の日本公開にあたり試写状をいただいたけど、新コロナ禍中の緊急事態宣言があって自粛していて、結局試写室には行かれずDVDを借りて観た。でも失敗。これはやっぱり大きな画面で観なくてはと思い、映画公開が始まってすぐ映画館に観に行った。
30年以上も香港映画界で活躍してきた劉徳華(アンディ・ラウ)と甄子丹(ドニー・イェン)の2大スターが初共演と話題になっていたけど、警察と黒社会(ヤクザ)が結託していた1974年以前の香港の警察と黒社会の関係を描いている。賄賂を得ながら出世してゆく実在の警察幹部雷洛(リー・ロック役=アンディ・ラウ)と、中国本土潮州から香港に仲間とともに密航してきた伍世豪(ン・サイホウ役=ドニー・イェン)が、香港社会でのしあがろうとする姿が描かれ、かつてアンディが演じて大ヒットした『リー・ロック伝』(1991年公開。日本でも公開)と同じ時代を描いている。アンディはこの時と同じくリーロックを演じている。
*1991年のリーロック伝 公開タイトル
『リー・ロック伝/大いなる野望 PART I 炎の青春』
 (原題「五億探長 雷洛傳:雷老虎」)
『リー・ロック伝/大いなる野望 PARTII 香港追想』
 (原題「五億探長 雷洛傳U:父子情仇」)

この『追龍』に頻繁に出てきたのが九龍城砦。リーロックがここを仕切るボス・チウの息子のことで話をつけに九龍城に乗り込みますが、大波乱。九龍城の中で大立ち回りの末、リーロックを助けようとしたン・サイホウが、足を骨折し、以後、杖をつく姿に。この映画の中で再現された九龍城ですが、魔窟といわれた九龍城の姿が懐かしかった。入り組んだ構造と今にも壊れそうな建物。そして啓徳(カイタック)空港に降りる飛行機が頭上近くを飛ぶ姿も何回か出てきました。
これまで数々の映画の中で描かれてきた九龍城ですが、私が初めて九龍城のことを知ったのは張之亮(ジェイコブ・チョン)監督の『籠民』(1992)を東京国際映画祭で観た時。香港映画を観始めた頃で、香港のこともあまり知らなかった。中国などから来た不法移民たちが1畳ほどの鶏小屋のような網がはってあってベッドが並んでいる大部屋で暮らしている姿が描かれていた。ここは香港警察も中国も手が出せない無法地帯で「魔窟」と呼ばれていた。建物の老朽化と治安の悪化から取り壊しが決まり、それに住宅の取り壊しが決まり、それによる住民たちの動揺や迷い、結束などが描かれている。この九龍城取り壊しに対して抵抗をするというような作品で、とても感動的な作品だった。この作品で香港映画に興味を持った私にとっては記念すべき作品。喬宏(ロイ・チャオ)やBEYONDのメンバー、寥啓智(リウ・カイチー)、テディ・ロビンなどが出ていた。BEYONDのリードボーカル黄家駒(ウォン・ガークイ)は1993年に日本のTV局での事故で亡くなってしまった。
その1993年頃に九龍城砦は取り壊され、その後は「九龍塞城公園」に。啓徳空港も1998年に閉港され、今はランタオ島にある香港国際空港へと香港は大きな変化をしていった。なので、あの頭上を大きな飛行機が通りすぎる様子は、九龍では見ることがなくなった。もう20年以上の月日がたつ。
2018年に香港に行ったとき「九龍塞城公園」に行ってみた。私は映画でしか九龍城砦を見たことがなかったけど、あのなんともいえない怪しげな様子は、今は昔で、すっかり南国の公園になっている。
皆さんも機会があったら行ってみたらいかがでしょう。

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こんな感じの門も


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12支の石像も


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九龍城の歴史や回想をするコーナーも

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こんな展示も

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こんな場所も
posted by akemi at 20:42| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『おかあさんの被爆ピアノ』に亡き母を思う (咲)

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先日、3時半からの試写の前に、時間的に観られる映画を探して、目に留まったのが新宿K's cinema.で上映されている『おかあさんの被爆ピアノ』(監督・脚本:五藤利弘)でした。タイトルだけで、これは観るべき映画と直感。

佐野史郎さん演じるピアノ調律師が、広島で被爆したピアノをトラックで運んで、全国でコンサートを開いているという予備知識だけで見始めたら、最初に出てきたのが、第五福竜丸の袂でのコンサート。一気に亡き母を思い出しました。10代の頃に戦争を体験した母は、戦争反対! 原爆反対!と、小さな声でよくつぶやいていました。夢の島公園にある熱帯植物園を目指して行った時も、その手前にある第五福竜丸展示館の前で足が止まりました。私はその時には第五福竜丸がアメリカの水爆実験で被爆したことを知らなかったのですが、母はちゃんと知っていた次第。その後、一人で展示館での講演会にも足を運んでいました。

映画『おかあさんの被爆ピアノ』に話を戻します。
シューベルトの「アヴェ・マリア」で始まる第五福竜丸での被爆ピアノのコンサート。
終了して、ピアノをトラックに積み込む調律師・矢川に、コンサートを観にきていた武藤十夢さん演じる菜々子が、「広島まで乗せてってください」と声をかけます。
母親の実家が広島で、亡き祖母のピアノを矢川に寄贈したことから、第五福竜丸コンサートの招待状が届いていて、菜々子はそれをこっそり失敬して来ていたのです。母親は日ごろから菜々子に広島のことを語りたがらず、祖母のピアノを寄贈したことも話していませんでした。被爆2世である母は、娘に被爆3世であることを意識させたくないのですね。
菜々子は、矢川が毎年原爆の日に原爆ドームの前でコンサートを開いていると知って、祖母のピアノを弾きたいと申し出ます。
菜々子は大学で幼児教育を学び幼稚園教師を目指しているので、ピアノは弾けるのですが、ブルグミューラーの練習曲のレベル。私もピアノを習い始めた頃に弾いた懐かしい曲の数々。それが、原爆ドーム前コンサートでは、ベートーヴェンの「悲愴 第二楽章」に挑戦したいというのです。
これがまた、私には懐かしい曲! 中学を卒業したら東京に引っ越すことを知ったピアノの先生が、発表会で私に与えてくださったのが、「悲愴 第一楽章」でした。ちょっと背伸びした選曲で、それはもう大変でした。落ち着いた第二楽章と違って、第一楽章はまさに悲愴感漂い、激しい曲。神戸オリエンタルホテルでの発表会では、どんどんスピードが速くなって、どうなることかと観ていた母は冷や冷やしたそうです。
思えば、母が私にピアノを習わせたのも、自分が戦争でピアノのお稽古を中断せざるを得なかったからでしょう。
『おかあさんの被爆ピアノ』では、母親が娘を思う気持ちが丁寧に描かれていました。森口瑤子さんが、さばさばした素敵なお母さんを演じています。

それにしても、爆心地近くで焼け残ったピアノがあったことを知り驚きました。まさに奇跡ですね。そのピアノが語り継いでくれる原爆の記憶。平和の大切さをかみしめたいです。

『おかあさんの被爆ピアノ』 
公式サイト: http://hibakupiano.com/



posted by sakiko at 09:01| Comment(0) | 映画雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月28日

『私は金正男を殺してない』試写と『妖怪人間ベラ』完成披露試写会

8月27日(木)
渋谷で『私は金正男を殺してない』試写。2017年2月13日にマレーシアのクアラルンプール国際空港で発生した、北朝鮮の第2代最高指導者金正日の長男金正男(キム・ジョンナム)が、顔面に神経剤「VX」を塗られ毒殺された事件。空港の監視カメラなどからベトナムとインドネシアの女性が、逮捕された。二人は日本のお笑い番組で使ういたずら映像だからとスカウトされた、と証言。彼女たちに「演技指導」した男たちはいずれも出国している。
事件は大々的なニュースになったので記憶にあるけれど、その後彼女たちがどうなったのか知らずにいた。ドキュメンタリーは残されていた映像を解説し、検察と弁護側の動き、被告人となった女性たち、その家族や友人のコメントなどを集めている。裁判とその後がわかる。(10月10日公開)

完成披露試写会が開催される映画館へ移動。『妖怪人間ベラ』は人気アニメ『妖怪人間ベム』に登場する妖怪人間ベラを主人公に、現代の女子高校生の設定で蘇らせた実写版。9月11日(金)からの公開を前に、ベラを追って狂っていく新田役の森崎ウィン、ベラ役で映画初出演のemma(エマ)、英勉監督の3人が登壇しました。上映前のため詳しい内容にふれることができず、現場でのエピソード、映画にちなんで最近落ち込んだこと、映画の見どころなどが語られました。

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★映画の前日譚となるドラマ『妖怪人間ベラ 〜Episode 0〜』全10話が、Amazonプライムにて2020年8月13日より配信開始されています。(白)

posted by shiraishi at 21:19| Comment(0) | 取材 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月25日

怒ったり考えたり(白)

8月25日(火)
facebookで「オリンピック組織委員会が虎ノ門ヒルズを1フロア借りていて、毎月4千万も賃貸料がかかっている」と知りました。
ええええ〜〜。何を今さら、なんでしょうが。もしかしたら東京一家賃高い??
委員会の住所は確かにそこになっていました。
都庁でやれない理由は何?ほかに予算が必要な部署はいくらでもあるのになんなんですか。税金を吸い上げて自分のもののように無駄遣いする役人、って封建時代か。
はりぼて』でも自分の身近にもきっとある、と思いました。慣れてしまうと、麻痺するんですね、感覚。おかしい!と気づかなくちゃ。

今のヒエラルキー構造を逆転させた小説か映画を、どなたか作ってくれないものでしょうか??朝目覚めたらお金持ちは貧しくて、今日食べる心配をしなければならなくなった、という。そこで活躍するのは中間層になるかな。互いの境遇を知ったら世の中がちょっとでも良くならないか、と期待してはダメでしょうか。細かい展開が考えられないので、誰か〜〜。すでにあったら(ありそうだ)教えてくださいませ。

昨日試写の前に時間があったので、劇場で『3年目のデビュー』を観ました。(監督:竹中 優介/キャスト:日向坂46/企画監修:秋元康)

AKB48のドキュメンタリーは以前観て、やっと何人かの顔を覚えました。が、メンバーが入れ替わってもうわからない。
こちらは2015年発足の「けやき坂46」(欅坂46の妹分。ひらがなけやき)から2019年「日向坂46」へと名前が変わりました。
芸能界やアイドルに憧れて、選抜されて入ってきた子たちが走り続けていく毎日が切り取られています。
品質の良いものを育て、選び、並べて売り出し、傷ついたら新しいものに取り換える。より多くの成果が上がるようにたくさんの大人たちが関わる。芸能というビジネスの中の商品なんですねぇ。コンサート会場が年々大きくなり、期待値も上がる。東京ドーム公演を目指す真剣な彼女たちの涙にもらい泣きしてしまう。願わくは彼女や彼らが幸せで、やってきて良かった!と思える日々でありますように。

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渋谷駅のいつもと違う出入り口を探して迷子になりそうでした。
なんだか行くたびに変わっている気がする。写真はいつもチェックする文化村入り口の花屋さん。(白)
posted by shiraishi at 15:59| Comment(0) | 映画雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月23日

旅行人シネマ倶楽部「旅シネ」の本ができました! (咲)

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神保町の書店「アジア文庫」で、「旅行人」という雑誌と出会ったのは、1990年代半ばのことでした。イスラーム文化圏やチベット文化圏など、私の興味のある地域の旅の情報がいっぱい詰まっていて、わくわくしたものです。バックパッカー向けの内容で、とてもこんな旅はできないなぁ〜と思いつつ、時々購入して楽しんでいました。
表参道のシネシティ香港で「シネマジャーナル」を見つけたのも、やはり1990年代半ばでした。当時は時々購入する読者でした。それが縁あって、2002年の春頃からシネジャに書かせていただくようになりました。
まだ駆け出しの2002年11月、『チベットの女 イシの生涯』の謝飛(シエ・フェイ)監督のインタビューに、暁さんに連れられて行ったのですが、合同取材でご一緒したのが、旅行人の執筆者である前原利行さんでした。大好きな旅行人の方と知って、思わず帰りに声をかけて(どちらからともなくだったような気もします)、一緒に食事して帰りました。旅行人の映画好きの方たちで作っている「旅シネ」というサイトがあることを知りました。その後、旅シネのほかの執筆者の方とも一緒に飲む機会をいただきました。あちらは男性ばかりなのですが、私が紹介したいと思う作品は、旅シネにも必ずといっていいほど、ほとんど掲載されています。嗜好がとても似ているのです。私よりも、知識豊富な皆さんなので、旅シネでは、どんな風に書いているのかしら?と、参考にさせていただいています。今回、『ファヒム パリが見た奇跡』を紹介するにあたって、旅シネのサイトを覗いてみたら、もちろん掲載されていたのですが、それよりも前に飛び込んできたのが、『旅シネ 2000-2019 映画で旅する世界 : 21世紀のワールドシネマ』発行のお知らせでした。
さっそく予約! まだ発行前の8月9日のことでした。

8月12日に東京イラン映画祭に行ったら、会場で旅シネの今野雅夫さんに久しぶりにお会いしました。
私が注文したことはすでにご存じでした! 
そして、お互いのサイトにリンクを貼ることをお約束♪
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こちらが旅行人シネマ倶楽部「旅シネ」のサイトです。アジアやイスラーム圏、東欧や中南米など、ふだん観る機会が少ないワールドシネマに出会えます。ぜひ、シネジャと共にご愛読を!  

8月15日、発行されたばかりの「旅シネ」本が届きました。
2000-2019年の映画を製作年ごとに、これまでサイトに掲載された中からチョイスしてまとめた素敵な冊子です。年ごとの世相もわかる作りになっています。私も絶対選ぶという作品ばかり! お薦めです。

購入申込みはこちらから!



posted by sakiko at 19:48| Comment(1) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする