7月7日(水)、1時から渋谷・映画美学校で『ミッドナイト・トラベラー』の試写。アフガニスタンのハッサン・ファジリ監督が身の危険を察知し、家族と共に難民として3年がかりでドイツにたどり着くまでの過程をスマートフォンで記録したもの。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019で審査員特別賞を受賞した作品で、その折に観ていますが、もう一度拝見。9月11日に公開されます。詳細は、また後日。
さて、この日、試写はこれ1本。何かもう1本映画をと検索したら、試写室と同じビルにあるユーロスペースで3時10分から『いとみち』がありました。
ちょうど、高校の同級生のT.S.君から、津軽の旅の写真が届いて、その中に津軽鉄道金木駅で撮った『いとみち』のポスターがあったこともあって触発された次第です。
5月末頃に、シネジャのメンバーの中で、津軽三味線が出てくる映画として話題になっていましたが、メイドカフェのメイドが津軽三味線?!と、実は思い切り引いていたのです。でも、観た人たちの評判はいいし、なにより若い頃から何度か訪れた津軽が舞台。青森出身の横浜聡子監督が津軽弁にこだわったことも気になって、思い切って観てみました。
*物語*
相馬いとは弘前市の高校に通う16歳。母方の祖母と、民俗学者の父と3人で五能線沿線の板柳で暮らしている。津軽弁の訛りが激しくて、授業で本を読めば皆に笑われる。祖母や亡き母に仕込まれた津軽三味線は青森大会で審査員特別賞をもらったほどの腕前だが、しまい込んでいたら皮が破れてしまった。修理代の捻出と、引っ込み思案の性格を直したいと、学校や家から離れた青森市の「津軽メイド珈琲店」でバイトを始める。ところがせっかく慣れた頃にオーナーが逮捕され、店は存続の危機に。いとは、一念発起して、店で津軽三味線のライブをさせてくださいと申し出る・・・
公式サイト
シネジャ作品紹介
リンゴ園越しに見える岩木山に、あ〜この景色! と、弘前から五能線に乗った時のことを思い出しました。岩木山の裾野をぐるっとまわりこむように走っている五能線からは、ずっと岩木山が見えて、とても神々しいです。
豊川悦司さん演じる父は、津軽弁の研究もしている民俗学者なのですが、娘に「けっぱれ(頑張れ)」と励ましても、「ちょっと違う」と言われてしまいます。方言って、ネイティブじゃない人が口にすると、どこか違うものなのですね。
同じ青森でも、南部弁や下北弁とも津軽弁は違うそうですが、津軽の中でも城下町弘前の言葉はさらに柔らかい響き。かつて道に迷って尋ねた時に返ってきた言葉が、半分くらいしか意味がわからないながら、とても上品で感激したのを思い出しました。
『いとみち』の台詞も半分以上が津軽弁ですが、話の流れからなんとなくわかるという感じ。テレビの普及で方言がだんだんすたれていく中、方言を大事にした『いとみち』、いいなと思いました。
ところで、いとが板柳駅で料金表を眺める場面があります。青森まで770円! 弘前の高校に通っているので、五能線から奥羽本線に乗り換える川部までは定期券があるとしても、川部から青森まで590円。メイドカフェの時給は、恐らく千円位でしょうし、交通費は全額は支給されないだろうし・・・と余計な計算をしてしまいました。
こちらは、1998年にT.S.氏が撮影した板柳駅。
私も冬に五能線に乗ったことがありますが、夏とは全く違う風情でした。
そして、『いとみち』の魅力は、なんといっても津軽三味線。いとを演じた駒井蓮さんは、本作のために猛特訓。おばあちゃん役の西川洋子さんは津軽三味線の巨星・高橋竹山氏の最初のお弟子さん。祖母といとの合奏シーンには、ほろりとさせられます。
激しく豪快なイメージのある津軽三味線ですが、魂の響きを感じます。
T.S.君から送られてきた中に、「居酒屋の店員さんが皆、津軽三味線を弾ける若い人たちでした。変わり身に驚きました」と、こんな勇壮な写真がありました。
お店は、「津軽三味線ライヴハウス 杏」
津軽三味線の若手第一人者である多田あつしさんが代表。多田あつし&夢弦会のメンバーによる生演奏(マイクなし!)が楽しめます。
http://anzu.tsugarushamisen.jp/
次回、弘前に行ったら、ぜひ迫力ある生演奏を味わいたいと思います。津軽の郷土料理も楽しみです♪
さて、映画『いとみち』の最後、いとが父と一緒に岩木山に登ります。頂上は岩場になっていて、私が学生時代に行った時、あと頂上まで数十メートルのところで断念したのを思い出しました。
津軽を再訪しても、岩木山再挑戦は、もう無理ですねぇ・・・