年賀状もやっと出し終えて、黒豆を煮ながら、今年最後の日記です。
この1年も、シネマジャーナルのサイトを覗いてくださいまして、ありがとうございました。
さて、今年最後に劇場で鑑賞した映画は、中央アジア今昔映画祭で、29日(水)午後3時から上映されたウズベキスタンの『40日間の沈黙』と『彼女の権利』でした。
会場のユーロスペースのあるビルの1階で、K枝さんにばったり。先日も東京ドキュメンタリー映画祭で会ったばかり。思えば、彼女とは今年4回映画館で偶然会いました。そもそも半世紀以上前に日本パーキスターン協会の泊まり込みのシンポジウムで知り合った友人。注目する映画は重なります。座席も偶然すぐ近くでした。

『彼女の権利』(2020年/15分 監督:サオダート・イスマイロワ)は、1920年代から1980年代にかけての女性たちの映像を繋いだ15分の短編。観終わって、「斬新すぎたね」と。
この3時からの映画の前に観られる映画はないかと検索したら、下高井戸シネマでの特集「没後20年 作家主義 相米慎二 アジアがみた、その映像世界」で、12時から『夏の庭 The Friends』(1994年)が上映されるのを見つけました。神戸で撮影した映画で、神戸弁にこだわったとあり、これは観なくては!と。
冒頭、雨の中、少年たちがサッカーをしている背景にあるのは、まぎれもなく六甲山!
物語は・・・ サッカー仲間の3人の少年。そのうちの一人が祖母の死で、火葬場で人が骨になることを体験。人はいつか死ぬと、学校近くのあばら家に住む老人が死ぬのを見届けようと、草ぼうぼうの家を覗き込むうち、そこに住む老人・傳法(でんぽう)喜八との交流が始まります。好奇心旺盛な少年たち。一人暮らしの傳法に、結婚したことはないのか?と迫ります。戦前、古香弥生という女性と結婚したけれど、戦争に行き、南方のジャングルでやむを得ず身重の女性を殺してしまい、生きて日本に帰ったものの妻に会いに行かなかったことを、ぽつりぽつりと語ります。この弥生さんを少年たちは見つけ出すのですが、なんと担任の先生が弥生さんの孫だった・・・という話。喜八は妻の妊娠を知らずに出征したのでした。こんな風に戦争に翻弄された人たちは大勢いたのだろうなぁ〜としみじみ。
喜八を演じたのは三國連太郎さん。撮影当時、70歳そこそこでしょうか・・・ しっかり老人でした。
三國連太郎さんも、まぁそれなりの神戸弁で話していましたが、少年たちはまさしく神戸弁! 同じ神戸でも地域によって微妙に違うのですが、小中学校で同級生の男の子たちが話していた神戸弁でした。(女の子はまた少し違う) 見覚えのある天井川が出てきて住吉川かなと。帰宅して検索してみたら、住吉川や六甲川(こちらは天井川ではない)が出てきたようです。老人の住む家は三菱重工の社宅敷地内(灘区?)、学校は魚崎小学校で東灘区。
私が住んでいた頃には、まだ海だったところに出来た六甲アイランドから六甲ライナーに少年たちが乗っている場面もありました。
映画の公開されたのが、1994年。その翌年1995年1月には、阪神淡路大震災があって、ロケ地の六甲道や住吉川界隈は、被害のひどかったところではないかと思います。あのあたりに住んでいた方たちにとっては、映画で懐かしい風景に出会えるのではないでしょうか・・・
コロナ禍で神戸にもなかなか帰れない今、私にとっても故郷を懐かしむ映画となりました。
黒豆もやっと出来上がりました。
それでは、どうぞ良いお年をお迎えください。