2022年03月13日

原田泰治さんのご冥福を祈ります(暁)

長野県出身で、里山や故郷の風景を情感豊かに心温まるタッチで描いたグラフィックデザイナー&画家の原田泰治(はらだたいじ)さんが悪性リンパ腫のため長野県茅野市の諏訪中央病院で3月2日に81歳で亡くなった。原田さんは1940年諏訪市生まれ。1歳の時にポリオ(小児麻痺)で両足が不自由になり、若いころは松葉杖を使用、その後車いすを使うようになったそう。
当時、原田さん一家は伊賀良村で開拓農民として農業を営んでいた。そんな少年時代を過ごした原田青年は高校時代に独学で油彩画を描き始め、武蔵野美術短大へ入学。卒業後、諏訪市内でグラフィックデザイナーとして独立。その傍らで少年時代に過ごした故郷信州の里山の光景を描いていた。長野県はやはり「信州」と呼ぶのが好きなので、以下信州と言わせてもらいます。
1982年から朝日新聞日曜版に連載された日本の里山の原風景を描く「原田泰治の世界」で、原田さんの作品を知った私はすっかり原田ワールドのファンになった。特に里山の景色や田んぼの風景などの色使いと里山の人々の生活を描いた情景が好きで、毎週日曜日の原田さんの絵を見るのが楽しみだった。連載は1年の予定で故郷信州の光景が多かったけど好評で延長され、その間、原田さんは日本全国47都道府県の四季折々の風景を描くため旅を続け、連載は2年半続いた。
連載が終わった頃、私は長い間通い続けた信州で暮らし始めた。1970年頃から80年代まで、約10年の間に100回近く、登山やスキーをしに信州のあちこちに出かけていた。そんな経験があったから原田さんの絵にとても親近感を感じていた。北アルプスの山々が好きで、その中でも鹿島槍という双耳峰の山が大好きで、その山の写真を撮るため1984年頃から大町市の鹿島槍高原のホテルで働きながら写真を撮っていた。その後、白馬村にある会社の山荘に移り、延べ5年を信州ですごした。その山荘では信濃毎日新聞を取っていたが、この新聞ではけっこう原田さんの絵や記事が載ることが多くいつも楽しみにしていた。
1998年には、原田さんの作品を集めた「諏訪市原田泰治美術館」が諏訪湖畔にオープン。開館して数年後に美術館を訪ねた私は「わたしの信州」「草ぶえの詩(うた)」などの作品集を買った。
近年、原田泰治さんの絵をほとんど見なかったし、今どうしているのかということも知らなかったが、絵画や絵本、デザインの創作を続ける一方で、2019年に諏訪中央病院名誉院長で作家でもある鎌田實さんらと「らくらく入店の会」というのを創立し、車いすで入店できる店を全国的に増やそうと活動していたらしい。今年(2022年)1月24日に自宅で車いすから落ち、諏訪中央病院でリハビリを続けていたが、容体が急変し亡くなったという。コロナの影響が少なくなったら諏訪にでかけ、久しぶりに「諏訪市原田泰治美術館」に出かけ、あの心温まる原田泰治さんの絵をまた見たい。
ご冥福を祈ります。

公式HPより
諏訪市原田泰治美術館 現在やっている展覧会

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🄫原田泰治

展覧会名 原田泰治が描く ふるさと信州の四季
会  期  2022年3月2日(水)〜2023年4月9日(日)
休館日 月曜日(祝日開館)、展示替え日、年末年始
会  場  諏訪市原田泰治美術館 第二展示室
原田泰治氏が“ふるさと”をテーマに全国を取材し、石垣の一つ一つ、野に咲く花の花びら一枚一枚までにも愛情をこめて描きあげた作品の中から、ふるさと「信州」の風景をご覧いただきます。四季折々の自然をはじめ、その土地の生活様式や伝統芸能・工芸品などが描かれた作品に加え、1993年開催の信州博覧会および1998年開催の冬季長野オリンピック招致用ポスターを交えて展示。
posted by akemi at 20:17| Comment(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

東京アニメアワードフェスティバル2022(白)

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Mixalive TOKYO Hall Mixa

3月11日(金)〜14日(月)の4日間、池袋で開催中。今日は3日目でコンペ作品の長編、短編作品を全部見終えました。フランスの作品が多かったです。選び終わってみたらそうだったということなんでしょう。短編作品スロット3はなんだか大人向けだなぁと思ったら、ほとんどがフランス制作でした。コロナが収まらない中、応募してくださったクリエイターの方々を始め映画祭スタッフの方々に感謝。受賞作の発表は明日。
HP https://animefestival.jp/ja/
オンライン公開企画
https://www.youtube.com/c/TokyoAnimeAwardFestival

=追記=
コンペティション受賞作品
●長編部門 グランプリ
『マード 私の太陽』ミハエラ・パヴラートヴァー監督/チェコ、フランス、スペイン、スロバキア/
 東京都知事賞も併せて受賞
●長編優秀賞
『ボブ・スピット―人間なんてクソくらえ―』セザール・カブラル監督/ブラジル/2020
●短編部門 グランプリ
『語らない思い出』バスティアン・デュボア監督/フランス/2019
 東京都知事賞も併せて受賞
●優秀賞
『小さなカカシのものがたり』ジョウ・ハオラン監督/中国
●豊島区長賞
『高野交差点』伊藤瑞希監督/日本
●学生賞
『HIDE AND SEEK』ペク・ギュリ監督/日本


posted by shiraishi at 19:29| Comment(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月06日

香港映画発展史探究、ジョージア映画祭、イスラーム映画祭7(暁)

最近、もらってくる映画チラシを減らそうとは思っているのですが、映画を観に行くたびにもらってくるので、思いとは裏腹にどんどん増えています。おかげで家のゴミ箱状態はますますひどくなっています。数日前には、とうとう長年積んであった本や映画チラシの山が斜めにずれて、とうとう滑り落ちてしまい、片付けるのに大変でした。古い映画チラシ、捨てなくてはと思いつつ、捨てられない私です。それにしても、私の(資料)部屋をなんとかしなくてはと、最近切実に思っています。映画のチラシ、捨てたら畳1畳分くらいは場所が確保できると思うのですが、だれかもらってくれる人いないかなと思っています。でも、その前に整理しなくてはならないので、その時間が欲しいです。音楽CDも整理と思いつつ、買ったものの聴いていないCD聴いてからと思っている私。そう思っているのでなかなか手放せずです。誰かほしい人いないかな。興味がない人にとってはゴミでも、興味がある人によっては宝の山なんだけど。

☆「香港映画発展史探究」
試写以外にも観たい映画や、映画特集など、毎日いくつもの作品を観たいと印をつけているのだけど、そのうちのほんのわずかしかこなすことができない。2022/1/4〜1/30まで、国立映画アーカイブで「香港映画発展史探究」という上映会があり、香港映画にハマった1993年頃から観たいと思っていた、香港映画の古典的作品群が多数上映された。
『梁山伯と祝英台』『黄飛鴻正伝 鞭風滅燭の巻』『英雄本色』『ブラッド・ブラザース 刺馬 』『忠烈図』『父子情』など観たかったのだけど、チケットの買い方が理解できなくて迷っているうに後半になってしまい、結局、『女性の光』と『北京オペラブルース』の2本しか観ることができなかった。友人たちは21本のうち、たくさんの作品を観に行って、その作品についての感想などが来てうらやましかったけど、当日にならないと行けるか行けないかわからない私は、後半になってやっとセブンイレブンでチケットを買う方法がわかり、京橋での試写のあと、行ける作品を鑑賞した。『女性の光』は、1937年の作品で、女性の自立をテーマとした物語で、男性の支配に抗い女性のための職業訓練校を設立、自由と平等を目指した女性を描く作品ということで観に行った。『北京オペラブルース』は、ずっと気になっていた作品で、やっと観ることができた。林霞、葉蒨文、鍾楚紅の3女優の活躍が嬉しい。荒唐無稽ではあったけど、京劇とアクション、すれ違いの妙、そしてサスペンス。辛亥革命直後の1913年の北京を舞台にしたとても面白い活劇だった。そして鄭浩南が思わぬ活躍と感心した。それにしても『父子情』を観ることができなかたのが残念。たぶん、もう観る機会はないかな。

☆ジョージア映画祭2022 コーカサスからの風 岩波ホール
上記香港映画特集での鑑賞、2本しか観ることができなかったので、岩波ホールで1月29日(土)〜2月25日(金)に開催されたジョージア映画祭はしっかり行こうと思ったのに、やはり前半は行けず、後半に集中。でも2月16日から最終日の25日までに5回通い、『ケトとコテ』『インタビュアー』『幸福』『ブバ』『ピロスマニ』『ウジュムリ』と、6本の作品を観ることができた。
残念だったのは23日の夜の回にあった『落葉』の上映。早めに行ったつもりだったのに、歩く速度が遅く岩波ホールに着いたのは20分前。満員で入れなかった。40分前に着いたという友人が130番すぎだったと言っていたので、それからすぐに満員になってしまったらしい。
岩波ホールは、この2年余りのコロナ禍、観客数の大巾減少で7月に閉館することになってしまったけど、この映画祭での観客数の多さが、もう少し早くにあったら閉館に至らなかったかもしれないと、この満員の状態を知って、そう思った。私ももう1年以上、岩波ホールに行ってなかったかもしれない。
このジョージア映画祭映画祭は、岩波ホールで働いていた原田健秀さんが企画して開催している映画祭。前回の映画祭は1本も観に行くことができなかったので、今回はできるかぎり行くことにした。観たことがある作品もあったけど、古い作品も多く、ここで観ることができなかったら、今後、観ることができないだろうと思い出かけた。
「映画の王国ジョージア(グルジア)、失われていたソヴィエト連邦時代(1921〜91)の名作が修復され、あるいはロシアから戻り、今、蘇ろうとしている。政治体制の抑圧にもかかわらず、人間味にあふれ、独創的であり、映画への愛がこめられた黄金期のジョージア映画――その魅惑にみちた歴史的作品の数々を一堂に集めて一挙上映!」という、魅力ある文に誘われ、貴重な作品を少しだけど堪能した。私と同じような思いの人が多かったのか、平日昼間にも関わらず、たくさんの人が来場したらしい。私としては貴重な作品を観ることができて良かったという思いはあったものの、ジョージアの歴史や文化に詳しくなく、表現方法などもユニークで、理解できない関係性などもあったけど、ジョージアの人たちの文化や思いに振れた映画祭だった。
久しぶりに神保町に通ったので、前から行ってみたかった香港料理の店、「粤港美食(エツコウビショク)」の1号店、2号店、両方に行くことができた。新型コロナウイルス、オミクロン株が猛威をふるう第6波の影響で「まん延防止等重点措置」が続き、閉店時間が21時だったので、ゆっくりと食事する時間はなかったけど、海老ワンタンメンや、鴨肉のローストなど、香港で食べていた料理を堪能することができた。海外に行けない今だからこそ、日本で香港料理が食べられるのは嬉しい。そのレポートはまた。

☆イスラーム映画祭7 2022.2.19〜25
ジョージア映画祭と後半重なっていたので、イスラーム映画祭には行けないかなと思っていたら、友人から、『ラシーダ』という作品、去年観たのに今年も買ってしまったと連絡があり、譲ってもらって観に行くことができた。ほんとはジョージア映画祭『大いなる緑の谷』を観に行く予定だったので迷ったのだけど、咲さんから「絶対こっちを観た方がいい」とのプッシュがあり、こちらを観に行った。アルジェリアの内戦時代が舞台で、女性たちの置かれた立場を表現したドラマでした。『ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師』と同じように、内戦下で、女性をレイプするのは「恐怖を植え付け支配するため」ということが描かれていました。『ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師』の作品紹介のほうにも書きましたが、レイプされた女性が、味方であるはずの男たちに(家族や親戚、同じ部落)、「汚れたもの」として扱われる理不尽さが表現されていた。この作品の中でレイプ被害にあった女性の父親が「いっそ死んでくれたらよかったのに」と、娘を拒否するシーンがあり、男ってどうしてそうなのと思ってしまった。救いだったのは、その女性の甥っ子?が、「僕はそう思わない。彼女は被害者だ」という意味のことを言っていたこと。この作品はアルジェリアの初めての女性監督ヤミーナ・バシール=シューイフさんの作品とのことで、だからこそ出てきた言葉なのだろうと思いました。
2002年/アルジェリア=フランス
posted by akemi at 20:44| Comment(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする