2022年07月10日

アディバ・ヌールさん追悼上映(ヤスミン・アフマド監督『細い目』『タレンタイム』など)

“アディバ先生、ありがとう”
アディバ・ヌールさんの追悼上映は、7月30日から8月26日にかけて東京のシアター・イメージフォーラムで開催。ほか全国で順次行われます。

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ヤスミン・アフマド監督の『細い目』(04)ではお手伝いのヤムさん、『タレンタイム〜優しい歌』(09)では厳しくも優しい“アディバ先生”を演じていたアディバ・ヌールさんが2022年6月18日、51歳の若さで亡くなりました。クアラルンプール発のニュースによると卵巣がんを患っていたとのこと。「マレーシアは真のエンターテインメントの女王であり、最も親切で寛大で素晴らしい友人を失った」とニュースは伝えたそうです。
アディバ・ヌールさんは(1970.9.3−2022.6.18)、日本ではヤスミン・アフマド監督の映画で欠かせない俳優として有名ですが、本国マレーシアでは国民的シンガーで90年代半ばからショウビズ界で活躍していました。ヤスミン監督作品としては、『グブラ』(05)、『ムクシン』(06)にも出演しています。多民族国家マレーシアでは、マレー系、インド系、中華系など生活地域もきっちり分かれていたり、民族間での分断があるなか、さまざまな因習を軽やかに超える作品を作ってきたヤスミン監督。
ヤスミン映画を配給してきた武井みゆきさんは「多民族国家マレーシアでさまざまな因習を軽やかに超えていったヤスミン映画らしいキャラクター、それがアディバさんの役柄だったと言えるでしょう」と語っています。私もそう思います。『細い目』を初めて見た時、この破天荒なお手伝いヤムさんを見て「こんなお手伝いさんいる? ユニーク」と思いましたし、そして、このヤムさんのキャラクターが大好きになりました。はからずも、ヤスミン監督もアディバさんも51歳で亡くなってしまいましたが、今は天国で再会していることでしょう。
アディバさんを偲び、ヤスミン・アフマドの代表作が全国の劇場にて追悼上映されます。
https://note.com/moviola/n/n0a097678ccbd

追悼上映チラシ表_R.jpg

東京都 シアター・イメージフォーラム
2022年7月30日(土)〜8月26日(金)
連日10:30〜
<上映作品>『タレンタイム 優しい歌』『細い目』『ムクシン』
・7/30(土)-8/10(金)
『タレンタイム 』土・火・木
『細い目』月・水・金
『ムクシン』日
・8/11(土)-8/26(金)
『タレンタイム』日・火・金
『細い目』土・月・水
『ムクシン(4Kデジタル修復版)』木(祝日あり)

他に、出町座(京都)、シネマート心斎橋、川崎市アートセンター、KBCシネマ(福岡)ほかの全国のミニシアターなどで開催されます。
詳細

作品紹介 配給会社ムヴィオラより
タレンタイム〜優しい歌  Talentime
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2009|カラー|115分|監督:ヤスミン・アフマド|出演:パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショール、モハマド・シャフィー・ナスウィプほか
マレーシア・アカデミー賞最優秀監督賞含む主要4賞/シネマニラ国際映画祭最優秀東南アジア映画賞

ピアノの上手なムルーは、耳の聞こえないマヘシュと恋に落ちる。二胡を演奏する優等生カーホウはギターがうまい転入生ハフィズに嫉妬する。たくさんの民族が暮らす街で、音楽コンクール“タレンタイム”に挑戦する高校生たちのかけがえのない青春とその家族を描くヤスミンの遺作長編。アディバ・ヌールは“タレンタイム”オーディションでの「ネクスト!」という声も印象深い素敵なアディバ先生を演じている。

細い目 Sepet
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2004|カラー|107分|監督:ヤスミン・アフマド|出演:シャリファ・アマニ、ン・チューセン、ライナス・チャン ほか
マレーシア・アカデミー賞グランプリ/東京国際映画祭最優秀アジア映画賞

香港の映画スター・金城武が大好きなマレー系少女オーキッドは、露店で海賊版の香港映画ビデオを売る中国系の少年ジェイソンと出会い恋に落ちる。民族や宗教が異なろうと、彼らの家族は2人の恋を理解するが…。細い目とは、中国系の目が細いことをからかうマレーシアの言い方。アディバ・ヌールはオーキッドの家の大らかなお手伝いさんヤム役で、階級などの因習にとらわれないヤスミンの考え方を体現する存在。

★特別上映
ムクシン【4Kデジタル修復版】 Mukhsin
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2006|カラー|97分|監督:ヤスミン・アフマド|出演:モハマド・シャフィー・ナスウィプ、シャリファ・アリアナ、シャリファ・アマニほか
ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門審査員グランプリ

ヤスミン・アフマドの傑作『ムクシン』を、撮影監督ロウ・スン・キョン監修のもと国際交流基金が4Kデジタル修復。オーキッドは10歳、ムクシンは12歳。夏休みに出会った二人。ムクシンは、オーキッドに恋心を抱くが…それぞれの家族や近隣者の悩みを浮かび上がらせながら、描かれる初恋の物語。アディバ・ヌールはここでもオーキッドの家のお手伝いさんヤムを演じ、エンディングではヤスミン監督の両親が書いた曲「フジャン」をその美声で歌い、忘れられない。 
※『ムクシン』は上映のない映画館もあります。

2回券 2,600円(税込) 7/9より発売! 来場者先着プレゼント「アディバさんポストカード」各上映館で上映作品・上映期間などが異なります。映画館公式サイトにてご確認ください。

まとめ 宮崎 暁美











posted by akemi at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画上映情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月01日

香港返還25年  大雨だった1997年7月1日を思う (咲)

あっという間に梅雨明けし、真夏のような東京ですが、25年前の香港は、英国植民地最後の6月30日も、中国に返還された7月1日も、大雨でした。今の状況を見ていると、あの大雨は香港市民の前に立ちはだかった暗雲がもたらしたものだったのだと思うしかありません。

それにしても、あれから25年! ついこの間のことのように思い出します。
香港返還の瞬間を香港で見届けようと、1年前から計画した旅。キャセイのビジネスクラスでの往復も、7月1日をはさんで12日間滞在でないと予約が取れませんでした。ホテルはどこも高くて、比較的安かった香港島中腹のYWCAを予約。思いもかけず、部屋からは総督邸を見下ろすことができて、屋根の上の旗が英国時代のものから赤い旗2本に変わったのを確認することができました。
6月30日は新聞に掲載されていたスケジュールを見ながら、あちこち駆け巡り、深夜0時の返還の瞬間は、九龍のプロムナードの人混みの中で迎えました。香港島側の宿に帰るために乗ったスターフェリーがすれ違った英国の軍艦の上に、 敬礼をしながら直立していた英国兵をみて、あ〜英国時代が終わったのだと実感したのでした。
中環の船着き場からは、タクシーがつかまらなくて、滝のように雨が流れる坂道を必死にあがって中腹にあるYWCAにたどり着きました。
翌7月1日の朝も大雨。テレビで回帰記念式典を見ていて、「中国」の威力をしっかり感じ、一国二制度を50年間保証というけれど、いつまで香港独自の自治ができるのだろうと思ったものです。
私が初めて香港に行ったのは、1979年3月。18年後には中国に返還されるので、香港を出るべきかどうかが既に話題になっていました。その時には、まさか18年後の返還の時に、自分が香港にいるなどと思いもよりませんでした。会社の知人がいるからと行った香港でしたが、乗り物オタクの私にはワンダーランド。その後、香港映画や音楽に興味を持ち、レスリー・チャンに惚れ込んでからは、さらに行く回数が増えました。気が付けば、70回位、訪れていますが、この10年ほどはすっかりご無沙汰です。
テレビや映画で流れてくる香港の話題には悲しくなることばかり・・・
香港市民の果敢な抵抗運動に涙が出ます。
1997年7月1日の夜、奇跡的に雨があがって、ヴィクトリア湾に上がる花火を旦那様と腕を組んで眺めながら「ホウレン(綺麗)」と何度もつぶやいていた香港女性、今も幸せに暮らしているでしょうか・・・

(暁)さんが、スタッフ日記に最近上映された映画についてまとめていますので、ぜひお読みください。
2日間限定、緊急特別上映会 香港映画『少年たちの時代革命』 &本誌105号掲載『理大囲城』『時代革命』
http://cinemajournal.seesaa.net/article/487838636.html

そして、昨年の東京フィルメックスで、上映前日まで「特別上映A」として、タイトルが明かされなかった作品『時代革命』が、この8月に公開されます。また、現在の自由を求める動きと共に、文化大革命、六七暴動、天安門事件を体験し、香港に逃れてきて自由を求める運動に身を投じてきた人々を追った 『Blue Island 憂鬱之島』も8月に公開されます。 ぜひご注目を!

『時代革命』 英題:REVOLUTION OF OUR TIMES
時代革命_B5flyer_omote.jpg
c Haven Productions Ltd.
監督:キウィ・チョウ
2021 年/香港/158 分/シネマスコープ
配給:太秦
公式サイト:https://jidaikakumei.com/
★2022年8 月13日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開


『Blue Island 憂鬱之島』
Blue_Island_B5_H1.jpg
c2022Blue Island project
監督・編集:チャン・ジーウン
プロデューサー:(香港)ピーター・ヤム アンドリュー・チョイ/(日本)小林三四郎 馬奈木厳太郎 
配給:太秦 
2022/香港・日本/カラー/DCP/5.1ch/97分  
公式サイト:https://blueisland-movie.com/
★2022年夏、ユーロスペースほか全国順次公開









posted by sakiko at 19:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画上映情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする