10月31日(火)
長い長いと思っていた映画祭ももうすぐ終了です。
プレス試写も今日、明日は1本ずつ。
『愛は銃』ワールド・フォーカス/香港・台湾/リー・ホンチー監督
刑務所を出たシャンシューは、クスリも断ってカタギになろうとしているが、「良民証」も学歴もなしだと就職は難しい。母親から金の無心、昔の仲間からは戻ってこいの催促。「過去」がついてまわる。
すっきりとそぎ落としてまとまっている映画でした。しかし観客に委ねるところが多いので、観る人によって違うものになりそう。監督はどうしたかったの?台湾では12月に公開だそうです。
主演もつとめたリー・ホンチー監督はこれが監督デビュー作。第80回ベネチア国際映画祭で、新人監督賞にあたる「未来の獅子賞」を受賞しました。俳優としては『酔、生夢死』(2015/台湾/チャン・ツォーチ監督)金馬奨新人賞を受賞しています。Filmexで上映されたので、当時監督と一緒に来日しています。
観終わって(咲)さんたちと珈琲ブレイクに交流サロンへ。運よく『ゴジラ−1.0』のトークショーが始まるところでした。山崎貴監督と音響効果の井上奈津子さんが、導入したドルビーアトモスの効果についておおいに語りました。第1作目が封切られた(1954年)「ゴジラの日」11月3日に全国公開です。設備の整った劇場の大きい画面で一番いい状態でご鑑賞ください。
終戦後の焼け跡に突如ゴジラが現れたら、怖すぎる…。
TIFFではクロージング作品として一足早く11月1日に上映です。(白)
2023年10月31日
2023年10月30日
TIFF7日目(白)
10月30日(月)
今日はお弁当持参で4本。
『雪豹』コンペ/中国/ペマ・ツェテン監督
テレビ局のクルーが雪豹を撮影にチベットの山村に向かう。「雪豹法師」と呼ばれるチベット僧の実家では、羊の囲いの中に雪豹が飛び込み、9頭もの羊が襲われて死んでいた。僧の兄は怒り心頭で「保護動物だろうが殺してやる!」と息巻き、役人や警察もやってくる騒ぎになる。山の上では子どもの豹が母親を待っている。僧には豹との不思議な体験があった。
怒鳴り続ける兄を演じたのは、ツェテン監督作品の常連ジンパ(ものすごく煩い)、雪豹を逃がしたい父や弟を頑としてはねつけます。残った羊を助け出そうにもうまく行かず、警察の命令を待つことに。誰からもいい知恵が出ずもめたまま2日間。このあたりがのんびりしていますが、雪豹が大きな猫のようで可愛いです。
『野獣のゴスペル』コンペ/フィリピン/シェロン・ダヨック監督
親のいない貧しい家庭で小さな弟妹の面倒をみている高校生マテオ。同級生と喧嘩になり、カッとして殴りつけた相手が倒れたのを見捨てて逃げ出してしまう。頼ったベルト叔父は失踪した父の旧友で、裏の世界の人間だった。汚れ仕事をさせられて逃げたくなるが戻るところがない。
子どもや動物には優しいマテオですが、頭に血が上りやすく短気。男として良いモデルになる父親がいないせいか、子どもっぽいままです。貧困が全ての元とは言えませんが、保護者のいない子どもを救う道はないの??
『私たちの世界』ユース/コソボ、フランス
紛争でゆれたコソボ、田舎から仲の良い従妹同士の二人が家出同然で大学にやってくる。希望の英語学科は満員、しかたなく経済学をとったが講義は講師不在で休みがち。学費を払っても授業がなく、学生たちは集会やデモで不満をぶつける。期待を裏切られ変わっていく二人は、それぞれ別の道を選んでいく。
「何も学べず、学位を金で買うのか」というセリフがありました。先に希望を見出せずに退学する者も自殺する者も出ます。日本では長い間戦争もなく、学ぶ場所も働く場所も手に入れてきたのは幸運だったと思わざるをえません。それがずっと続く保証はどこにもないんですけどね。
『湖の紛れもなき事実』ワールド・フォーカス/フィリピン/ラヴ・ディアス監督
ドゥテルテ政権の圧政のなか、ヘルメス・パパウラン警部補は「警察官は法律に従い、市民を守るもので上司や政治家の言いなりになるべきではない」と同期生にこぼす。火山灰地の湖で起こった15年前の未解決事件を追うことに固執している。あらゆることに天才的な能力を発揮していたエスメラルダという女性が失踪したのだ。「フィリピンのワシ」衣装の彼女の幻影がヘルメスの頭から離れない。
ラヴ・ディアス監督の作品はどれも長くて、映画祭で観るときはスケジュールの組み立てに苦労します。本作は215分、3時間半余りです。なぜその事件にこだわり続けるのか、同期の警官(昇進して上司らしい)が何度も問います。閉塞した現実の中で唯一確かな目標であったのかもしれません。ヘルメスが捜査を続けて関わったばかりに命を落とす人も出て、彼の矜持が崩れるときがやってきます。まだ続けるの〜?と思いつつ、見続けてしまいました。(白)
『シン・ゴジラ』のスマートなゴジラ 日比谷シャンテ前
旧ゴジラはTOHOシネマズ 日比谷ロビーにあります
今日はお弁当持参で4本。
『雪豹』コンペ/中国/ペマ・ツェテン監督
テレビ局のクルーが雪豹を撮影にチベットの山村に向かう。「雪豹法師」と呼ばれるチベット僧の実家では、羊の囲いの中に雪豹が飛び込み、9頭もの羊が襲われて死んでいた。僧の兄は怒り心頭で「保護動物だろうが殺してやる!」と息巻き、役人や警察もやってくる騒ぎになる。山の上では子どもの豹が母親を待っている。僧には豹との不思議な体験があった。
怒鳴り続ける兄を演じたのは、ツェテン監督作品の常連ジンパ(ものすごく煩い)、雪豹を逃がしたい父や弟を頑としてはねつけます。残った羊を助け出そうにもうまく行かず、警察の命令を待つことに。誰からもいい知恵が出ずもめたまま2日間。このあたりがのんびりしていますが、雪豹が大きな猫のようで可愛いです。
『野獣のゴスペル』コンペ/フィリピン/シェロン・ダヨック監督
親のいない貧しい家庭で小さな弟妹の面倒をみている高校生マテオ。同級生と喧嘩になり、カッとして殴りつけた相手が倒れたのを見捨てて逃げ出してしまう。頼ったベルト叔父は失踪した父の旧友で、裏の世界の人間だった。汚れ仕事をさせられて逃げたくなるが戻るところがない。
子どもや動物には優しいマテオですが、頭に血が上りやすく短気。男として良いモデルになる父親がいないせいか、子どもっぽいままです。貧困が全ての元とは言えませんが、保護者のいない子どもを救う道はないの??
『私たちの世界』ユース/コソボ、フランス
紛争でゆれたコソボ、田舎から仲の良い従妹同士の二人が家出同然で大学にやってくる。希望の英語学科は満員、しかたなく経済学をとったが講義は講師不在で休みがち。学費を払っても授業がなく、学生たちは集会やデモで不満をぶつける。期待を裏切られ変わっていく二人は、それぞれ別の道を選んでいく。
「何も学べず、学位を金で買うのか」というセリフがありました。先に希望を見出せずに退学する者も自殺する者も出ます。日本では長い間戦争もなく、学ぶ場所も働く場所も手に入れてきたのは幸運だったと思わざるをえません。それがずっと続く保証はどこにもないんですけどね。
『湖の紛れもなき事実』ワールド・フォーカス/フィリピン/ラヴ・ディアス監督
ドゥテルテ政権の圧政のなか、ヘルメス・パパウラン警部補は「警察官は法律に従い、市民を守るもので上司や政治家の言いなりになるべきではない」と同期生にこぼす。火山灰地の湖で起こった15年前の未解決事件を追うことに固執している。あらゆることに天才的な能力を発揮していたエスメラルダという女性が失踪したのだ。「フィリピンのワシ」衣装の彼女の幻影がヘルメスの頭から離れない。
ラヴ・ディアス監督の作品はどれも長くて、映画祭で観るときはスケジュールの組み立てに苦労します。本作は215分、3時間半余りです。なぜその事件にこだわり続けるのか、同期の警官(昇進して上司らしい)が何度も問います。閉塞した現実の中で唯一確かな目標であったのかもしれません。ヘルメスが捜査を続けて関わったばかりに命を落とす人も出て、彼の矜持が崩れるときがやってきます。まだ続けるの〜?と思いつつ、見続けてしまいました。(白)
2023年10月29日
TIFF6日目(白)
10月29日(日)
本日はコンペティション3作。
『エア』コンペ/ロシア/アレクセイ・ゲルマン・jr監督
1942年第2次世界大戦中のロシア。ドイツと戦う最前線に女性兵士たちがやってくる。空軍のパイロットと整備士たちは、訓練も実戦経験も十分とは言えないが意気盛ん。しかし機銃掃射に遭い、空中戦に出撃しては散っていく。
ロシアでは実際に100万人の女性が参加していたそうです。戦争場面で逃げ惑う人やママと叫ぶ子どもの姿のシーンに、今が重なってしまいました。
『ペルシアン・バージョン』コンペ/アメリカ/マリアム・ケシャヴァルズ監督
1980年代にイランからアメリカに移住した夫婦、イスラム革命のために帰国できなくなってしまった。アメリカとイランはその後緊張した関係が続く。一家には次々と子どもが生まれ、彼らは二つの国、二つの文化の中で生きることを余儀なくされる。
8人の兄のいるレイラは自分が母に嫌われていると思っていますが、隠されていた母の過去を知って…。美人でやり手の母、クセの強い兄たち、予定外の妊娠をしてしまったレイラ。エピソード満載の楽しくてほろっとする映画。
『西湖畔に生きる』コンペ/中国/グー・シャオガン監督
西湖のほとりで暮らす母と息子。夫に出て行かれてから、母タイホアは一人息子ムーリェンを支えに茶畑で働いてきた。大学を卒業し就活をするムーリェンは、失踪した父を探し続け、母の再婚話に耳を貸さない。母は友人に誘われて、あやしげな商売に加わり夢中になる。
杭州の美しい風景の中、儲け話に目を輝かせる人々のドラマが進んでいきます。ムーリェンと一緒に「それはマルチだ!」とやきもきしますが、母のテンションはあがるばかり。すっかり変わったタイホアが叫ぶ姿はパンクかヘビメタかという、力いっぱいのシーンでした。
中で「???」となったシーンがありましたが、書かないでおきます。音楽は梅林茂さん。
(白)
シャンテ1F『ゴジラ-1.0』に登場するゴジラ
本日はコンペティション3作。
『エア』コンペ/ロシア/アレクセイ・ゲルマン・jr監督
1942年第2次世界大戦中のロシア。ドイツと戦う最前線に女性兵士たちがやってくる。空軍のパイロットと整備士たちは、訓練も実戦経験も十分とは言えないが意気盛ん。しかし機銃掃射に遭い、空中戦に出撃しては散っていく。
ロシアでは実際に100万人の女性が参加していたそうです。戦争場面で逃げ惑う人やママと叫ぶ子どもの姿のシーンに、今が重なってしまいました。
『ペルシアン・バージョン』コンペ/アメリカ/マリアム・ケシャヴァルズ監督
1980年代にイランからアメリカに移住した夫婦、イスラム革命のために帰国できなくなってしまった。アメリカとイランはその後緊張した関係が続く。一家には次々と子どもが生まれ、彼らは二つの国、二つの文化の中で生きることを余儀なくされる。
8人の兄のいるレイラは自分が母に嫌われていると思っていますが、隠されていた母の過去を知って…。美人でやり手の母、クセの強い兄たち、予定外の妊娠をしてしまったレイラ。エピソード満載の楽しくてほろっとする映画。
『西湖畔に生きる』コンペ/中国/グー・シャオガン監督
西湖のほとりで暮らす母と息子。夫に出て行かれてから、母タイホアは一人息子ムーリェンを支えに茶畑で働いてきた。大学を卒業し就活をするムーリェンは、失踪した父を探し続け、母の再婚話に耳を貸さない。母は友人に誘われて、あやしげな商売に加わり夢中になる。
杭州の美しい風景の中、儲け話に目を輝かせる人々のドラマが進んでいきます。ムーリェンと一緒に「それはマルチだ!」とやきもきしますが、母のテンションはあがるばかり。すっかり変わったタイホアが叫ぶ姿はパンクかヘビメタかという、力いっぱいのシーンでした。
中で「???」となったシーンがありましたが、書かないでおきます。音楽は梅林茂さん。
(白)
2023年10月28日
TIFF5日目(白)
デイリーニュース
10月28日(金)
『家探し』アジアの未来/イスラエル/アナト・マルツ監督
首都テルアビブに住む若い夫婦がハイファで新しい住居を探している。家計を支えているらしい妻は妊娠36週、無職でクスリをやめられない夫に腹を立てて喧嘩が絶えない。何軒もの候補の家やアパートを見て回り、様々な住人に出会う。
しっかり者の母の息子はちゃらんぽらんで、母に捨てられたと思っている娘は気が強い。家庭は作りたいけど覚悟が決まらない二人。どちらも父親不在でした。
『犯罪者たち』ワールド・フォーカス/アルゼンチンほか/ロドリゴ・モレノ監督
15年間銀行に勤めたモランは同僚をうまく使って、定年までの給与と同額の現金を盗み出した。完全犯罪を目論見、自分は自首して刑務所に入るが、現金はあるところに保管して出所したら手に入れるつもりだ。モランにまきこまれた同僚は、予想外のことが続いて眠れなくなる。
冒頭は朝のルーティンを黙々とこなして銀行へ出社するモランを追っています。同じ毎日をこれからも何十年と続けるのか、と愕然としてしまうこと、ありそうです。3時間9分の長尺。
例年映画祭期間中に一度は台風がやってくるのに、今年はまだで年間通じても少ない感じ。大雨は困りますが、適度に降ってくれないと農作物に影響します。秋の味覚のサンマも高値です。(白)
2023年10月27日
TIFF4日目(白)
デイリーニュース
10月27日(金)
『魔術』WFラテンビート/チリ、メキシコ、ドイツ/クリストファー・マーレイ監督
1880年のチリ。先住民の父娘はドイツ人入植者の使用人として働いている。ある日牧場の羊たちが皆死んでいて、先住民の父親に嫌疑がかかった。雇い主は犬を放し、父親は娘の目の前で嚙み殺されてしまう。娘は父を埋葬し、先住民の長を頼って家を出ていく。
呪術が生きている時代の物語。色調が暗く炎の赤が目立つ作品でした。先住民の暮らしと伝承に興味があるとより面白いでしょう。ホラー仕立てにはなっていません。
『マリア』アジアの未来/イラン/メヘディ・アズガディ監督
結婚式を控えた男が一本の電話で向かった先。車で通り過ぎて戻ると上から人が降って来た。自殺か事故か、はたまた犯人がいるのか?落ちた女性は意識不明、男はケガで済んだが結婚式は中止になり、妻と義父母は傷心。壊れた車の弁償金のため被害者家族と話し合いにいくことになった。事故以来心ここにあらずの男に新妻は心配が募る。かつて男と関わりのあったマリアという女性だった。
ストーリーが予期せぬ方向に進み、それまで隠されていた過去が明らかになっていきます。28歳のアズガディ監督デビュー作。入り組んだ人間関係と時間が行きつ戻りつする脚本、まとめるのが大変だったはず。
『バイタル・サイン』香港フォーカス/ヴィンシー・チェク監督
妻を亡くしたパパと娘のストーリー。現場第一、救命第一のマーは出世欲はなく、同期の友人に事務仕事を勧められても断っている。娘のために義父母のいるカナダへの移住を考えていたが、マーは腰痛を隠して働いていて健康でなければ許可は降りない。
マーはすべり症との診断でコルセットをしていましたが、あんなに過酷な仕事では悪化するばかりです。腰痛もちなので他人事と思えません。香港の救急隊員マーをルイス・クー(古天樂)。TVBのドラマに出ていた頃のルイスは色白でハンサムな青年でしたが、今や50代。すっかりベテランの風格です。子役さん(蘇ス弦)が上手。『星くずの片隅で』のアンジェラ・ユンが亡き妻の従妹役で出演。
きのうは夜までいて4本観たので、今日は3本にして帰宅。(白)