期待の作品は、フマーユーン・アッサーディ監督の『金と銅』(2011年)。「よき父、よき夫になろうとするイランの聖職者の姿を描く家庭ドラマ」という紹介だけが頼り。
地方からテヘランに出てきた神学生の一家。夫が勉学に集中できるよう、妻は絨毯を織って家計を支えているのですが、病に倒れてしまいます。夫は小学生の女の子を学校に送ると、まだおむつの取れない赤ちゃんを抱えて神学校へ・・・ 病院に面会に行くと、女性部屋だから見舞いはダメと言われてしまいます。「夫なのに?」「ほかの女性の夫ではないでしょう」とつれなくいいながら、そっと病室に入れてくれる看護婦さん。
自分の命が長くはないと悟った妻は、「子どもたちの為に新しい奥さんを迎えてね」と言いつつ、「生きている間は浮気しちゃダメ」と念押しすることも忘れません。
小学生の女の子は、お父さんがターバンを巻いて聖職者の格好をしていると近寄らないのに、普通の服装をしていると甘えて寄り添ってきます。友人の車で神学校や病院に送ってもらう時にも、友人からターバンははずして〜と言われてしまいます。
キャマール・タブリーズィー監督の『トカゲ』(原題:Marmoulak)で、聖職者の衣装を盗んで脱獄した強盗犯が、なかなかタクシーに乗せて貰えなかったのを思い出しました。
話がそれましたが、なんとも切ない夫婦愛の物語『金と銅』の最後は、ハーフェズの詩で締め括られました。あ〜やっぱりイラン映画だなぁ〜と。
2番目の上映作品は、アッバス・キアロスタミ監督の『桜桃の味』(1997年)で、何度か観た映画だったので、申し訳ないけど、友人たちとランチタイムに。
最後の作品は、アスガル・ファルハーディ監督の『彼女が消えた浜辺』(2011年)。観るのは4度目でしたが、また違う発見が・・・ よく書き込まれた脚本に、結末は知っているのに、またまた惹きこまれました。
現代イスラム研究センター主催のイラン映画上映会の次回は、10月18日(土)に赤坂区民センターで開催する予定とのことです。ぜひ未公開作品を上映してほしいと今から楽しみです。
今週は、29日に『マダム・イン・ニューヨーク』の主演女優シュリデヴィさん来日イベント(白さんの30日の日記参照ください)がインド大使館で開催されて、大使館詣でが続きました。インドとイラン、距離も近いし、文化も影響しあっているけど、感じる雰囲気がかなり違います。映画もインド映画は長めのものが多いけど、イラン映画は短めのものが多いし、テイストも違います。だから面白いのですねぇ。(咲)
イラン映画『彼女が消えた浜辺』ファルハディ監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2010/about_elly/index.html