怒涛の東京国際映画祭が終って、シネジャ98号の原稿に追われている中、グルジア(現ジョージア)出身のオタール・イオセリアーニ監督が『皆さま、ごきげんよう』公開を前に来日されました。
映画祭の最中に、宣伝担当者の方が留守電を入れてくださっていたのですが、確認するのを忘れていて、7日の朝、問い合わせたら、その日の2時半から記者会見とのこと。(終ってなくて、ほっ!)
予定があって、遅れて3時頃に着いたら、「まだ1問目の答えを訳している最中です」とのこと。すでに30分経っているのに!?
おまけに私と入れ違いで監督は控え室に。(恐らく煙草を吸いにいらしたと、あとから推察)
訳している途中からだったので、どういう質問に対する答えなのかはわからないのですが、芸術として生まれた映画が、今や商売人の手に落ちてしまったこと、作家といえる映画の作り手は、数えるほどしかいなくなったこと、映像に付けられた音楽の効果で映画を素晴らしいと思ってしまう若い観客がいることなど、長々と続きました。通訳さん、凄い!
訳し終わったころに再登場した監督。「これだけ語ったから、もう質問する勇気のある人はいないでしょう」とおっしゃったのですが、勇気ある方が手を挙げました。
今回の映画が、フランス革命時代、ある戦場、そして現代のパリと3つの時代が描かれているのですが、「同じ役者が演じる老人が出てくるのは、東洋的な輪廻の思想から?」というキリスト教新聞の方からの質問。監督はそれには直接答えないで、ルターの宗教改革以前のキリスト教の功罪について、また持論を長々と語りました。
これでもう質問はないでしょうという監督に、「今のパリを撮るのは映画にとって大事なことですか?」との女性からの質問。「女性にはちゃんと答えましょう」という監督から、「撮影する際、それがどこかを気にしないでいいところで撮ります。パリの年代記を作る気はない。ダンボールの前で撮ってもいいのです」との答え。
続いて、「百年前の東京は素晴らしい町だったのに、今や煙草も吸えない冷たい町になった」と嘆かれました。愛煙家なのですね。82歳の今もお元気だけど、煙草はおやめになったらと、頑固そうな監督を前にふっと思ってしまいました。
会見中は、写真を撮らせなかった監督。やっと最後のフォトセッション。
「え? 僕を撮るの?」という感じで、あっという間に退場されてしまいました。
なんだか煙に巻かれたような会見でした。
いや〜 可笑しかった!
★『皆さま、ごきげんよう』は12月17日より岩波ホールほか全国順次公開
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/gokigenyou/
2016年11月19日
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