2021年01月24日

映画に出てくるお弁当(暁)

出てくる映画
『燕 Yan』『フォーの味』『461個のおべんとう』『さくら』『チャンシルさんには福が多いね』

●その国独自の食文化や人間関係を表した弁当
『燕 Yan』
2020大阪アジアン映画祭 一般公開 
お弁当を作った母と息子の思いとのギャップ
監督:今村圭佑
脚本:鷲頭紀子
出演:水間ロン(早川燕)、山中崇(林龍心)、一青窈(母)、テイ龍進(龍心の友人)、平田満(父)
2019年/日本
2020年6月5日から全国公開

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(C)2019「燕 Yan」製作委員会

『フォーの味』
2020大阪アジアン映画祭 
ベトナム人の父が作ったお弁当とポーランド人女性とのハーフの娘の思いのギャップ
監督:ボブリックまりこ 
出演
タン・ロン・ドー、レナ・グエン、アレクサンドラ・ドマニスカ、ボグスワヴァ ・パヴェレツ、ザー・カイ・トン
2019年/ドイツ・ポーランド
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/c11.html

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お弁当が出てくる映画はけっこうあると思うけど、去年(2020)ほどお弁当が出てくる作品を多く観た年はないかもしれない。あるいは認識したというべきか。お弁当そのものがテーマの作品もあるけど、多くは映画のちょっとしたエピソード、調味料的に出てくる。これまでもいろいろな映画の中に弁当は出てきていたけど、そんなに認識していなかったのかもしれないが、去年は、映画の中のお弁当に意識が行っていたのかも。きっかけは、3月に大阪アジアン映画祭で観た『燕 Yan』と『フォーの味』。この中で親と子供の思いの隔たり、アイデンティティをあらわすのに弁当が使われていて印象的だった。『燕 Yan』はお母さんが台湾人(一青窈が演じていた)で、日本人の夫(平田満)と結婚。日本で生まれた息子燕(Yan/イエン、次男:水間ロン)の母との葛藤が描かれていた。母との幼い頃の記憶。たぶん小学校1,2年生くらいまで一緒暮らしていたけど夫と別れ、長男(山中崇)を連れて台湾に帰ってしまった。その母との思い出のシーンの中にお弁当がでてきた。周りの日本人の母親が作ったお弁当はカラフルで、自分の母親が作ったお弁当は全体的に茶色が多い弁当(魯肉飯/ルーローファンなど)で、みんなと違うのがなんだか恥ずかしく、学校でお弁当を開けるのがいやだったというシーンで出てきた。
そして、『燕 Yan』に続いて観たのが『フォーの味』(ボブリックまりこ監督)。ポーランドが舞台の映画だったけど、日本人の監督が作った作品。ベトナム難民でポーランドに渡った人が結構いて、ベトナム人コミュニティがポーランドにもあることを知った。そのベトナムからポーランドに渡った男性(ベトナム料理店の雇われシェフ)とポーランドの女性が結婚し女の子が生まれたけど、母親は女の子が学校に入る前に死んでしまい、団地に住む父と娘の生活が描かれていた。父は小学校に通い始めた娘のために食事を作り、スカートのアイロンかけをしたりとかいがしく面倒を見て、お弁当も作ってくれるのだけど、そのお弁当がご飯(お米を使った弁当)ばかり。学校ではほとんどの生徒がパン食(ポーランドでもお弁当があることを知った)。娘はみんなと同じようなお弁当だといいのにと思う。そんな父と娘の葛藤が描かれていた。この『燕 Yan』と『フォーの味』に出てくる子供たちは、住んでいる国でない国出身の人が作るお弁当が周りの同級生たちと自分のお弁当が違うことで仲間はずれになるのを嫌がっていた。いろいろな国との交流出会いの中で、他国の人との結婚でハーフの子も増えているが、その中で文化習慣の違いによる子供の葛藤があることが描かれていた。

スタッフ日記「第15回大阪アジアン映画祭へ行ってきました」参照
http://cinemajournal.seesaa.net/article/474046141.html

●お弁当の存在感を表した映画
『461個のおべんとう』一般公開
監督:兼重淳
原作:渡辺俊美
脚本:清水匡、兼重淳
主題歌:井ノ原快彦、道枝駿佑
出演:井ノ原快彦(鈴本一樹)、道枝駿佑(鈴本虹輝)
2019年/日本 2020年11月6日(金)公開
公式HP

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(C)2020「461個のおべんとう」製作委員会

弁当そのものが重要な意味を持ち、タイトルにもなっている『461個のおべんとう』。井ノ原快彦が弁当を作るお父さん役で出ているというのと、お父さんが高校生になった息子に3年間、お弁当を作った話ということを知り、面白そうと観にいった。実話を元に作った作品とのこと。
ミュージシャンのお父さんと高校生の息子のお弁当物語。離婚して男手ひとつで息子を育てている父と、高校受験に失敗して一浪して高校に入った息子。中学と違って給食がない。虹輝の希望は「お父さんのお弁当」。父一樹は「卒業まで3年間、毎日お弁当を作ること」、虹輝は「一日も休まず高校に行くこと」を約束する。以来、地方に行って遅く帰っても、二日酔いでも、井ノ原快彦扮する父親は、朝早く起きて毎日お弁当を作り続けた。同じものが続かないよう工夫し、作った様々な卵焼きは見事だった。私はワンパターンの卵焼きしかできないから、真似してみたいと思った。
1歳下の同級生の中で、虹輝は最初孤独だったが、お弁当のおかげで、同級生たちと仲間になっていく姿を見てほっとした。なにがきっかけになるかわからない。ここでは『燕 Yan』や『フォーの味』と違って、お弁当は仲間はずれではなく、仲間になるものとして出てきた。私の学生時代はどうだったろうか。もう50年以上も前のことでよく覚えていないが、私の学生時代はまだ給食が完全ではなく年下の世代からだった。小学6年生の数ヶ月だけ給食だった。なので小学校から高校まで給食はなかったのだけど、中学まではお弁当を持っていった気がする。でも、机を囲んでお弁当を食べたという記憶はないので、きっと授業の時の机の並びで、それぞれ黙々と食べていた気がする。それに物が豊富にあった時代でないから、みんなで一緒にだとちょっと恥ずかしかったような記憶がある。それに、今みたいなたくさんのおかずとカラフルなお弁当は、そんなになかったと思う。それにしても、一樹お父さんの作る弁当はすごい! 卵のバリエーションが半端ない。ちょっとした工夫でバリエーション豊富になるんだと思った。そして人間関係を豊かにしてくれるお弁当に感謝。

●大事な一場面としてお弁当が出てくる映画
『さくら』 一般公開
恋人が兄に作ったお弁当
監督:矢崎仁司
原作:西加奈子「さくら」(小学館刊)
脚本:朝西真砂 
出演:北村匠海(長谷川薫)、小松菜奈(妹:美貴)、吉沢亮(兄:一)、寺島しのぶ(母:つぼみ)、永瀬正敏(父:昭夫)
2019年/日本/配給:松竹
 c2020「さくら」製作委員会
公式HP 
2020年11月13日(金)公開 

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(C)西加奈子/小学館 (C)2020 「さくら」製作委員会

『チャンシルさんには福が多いね』
2020大阪アジアン映画祭 一般公開
チャンシルさんが、恋した?フランス語講師(韓国人)に作ったお弁当
監督・脚本:キム・チョヒ
製作:ソ・ドンヒョン キム・ソンウン
カン・マルグム(イ・チャンシル)、ユン・ヨジュン(ポクシル)、キム・ヨンミン(レスリー・チャンらしき男)、ユン・スンア(ソフィ)
2019年製作/96分/韓国
劇場公開 2021年1月8日 公式HP 

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(C)KIM Cho-hee All RIGHTS RESERVED/ ReallyLikeFilms

『さくら』と『チャンシルさんには福が多いね』では、お弁当が出てくるシーンは一瞬だったけど、出てくる場面は少なくても、映画の中で大きな役割をしていた。『さくら』では、吉沢亮演じる兄、一の恋人が励ましのためにお作ったお弁当。何気ないシーンだったけど、この場面があるだけで悲しさが倍増する。『チャンシルさんには福が多いね』では、チャンシルさんがバイト先で知り合ったフランス語講師と仲良くなり、「彼は私に気がある?」と勘違いして、彼に恋心を持ってしまったがゆえに作ったお弁当。お弁当を持って彼がいる公民館?に行って、一緒にお弁当を食べるシーンはちょっとユーモラス。ここに彼女のユニークな側面が出てきた。

それにしても「日本のお弁当文化」、世界で注目されていますね。NHKの「BENTO」という番組があり世界中の弁当が紹介されていますが、「BENTO」とタイトルがついているように、世界のあちこちで「BENTO」と言われているようです。各家庭のお弁当も魅力ですが、昔は弁当が旅の楽しみでした。最近は旅に出られないので、京橋での試写の帰りに東京駅構内にある「祭」という日本全国の弁当を集めたショップに寄るのが楽しみです。その地方に行かなくてもどんなお弁当があるのかわかります。そして日本全国のお弁当をそこで買うことができます(暁)。

posted by akemi at 21:15| Comment(0) | 映画雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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