2021年03月14日

『モルエラニの霧の中』やっと観に行けました(暁)

moruerani_poster_R.jpg
c室蘭映画製作応援団 2020

『モルエラニの霧の中』ずっと気になっていたのですが、なかなか観に行けずにいました。でも3月12日の岩波ホールでの最終上映に行くことができました。リニューアル後の岩波ホールにも初めて行きました。
最初の試写案内が来たのが11月でちょうど東京国際映画祭の最中だったので行くことができず、公開(2月6日)されたらと思っていたのですが、公開されたときには、またコロナの影響で自粛生活であまり外にもいけないでいました。それでも何度も行く計画を立てたのですが、3時間34分という長さの作品なので、思い切りが必要でした。それにもう少し長く上映が続くと思っていたので伸ばし伸ばしになっていました。
12日は12:30〜からの映画美学校(ユーロスペース地下)での『のさりの島』の試写のあと、ユーロスペースで公開されている『夏時間』の15時15分からの回を観て帰ろうと思っていました。この『夏時間』も試写を観そびれてしまっていた作品で、ちょうどこの日は時間が合ったので3Fのユーロスペースに上がって、映画までの時間、チラシを見ていたら、岩波ホールで13日から始まるチベット映画特集のチラシをみつけました。「ということは『モルエラニの霧の中』は今日まで?」と思い、岩波ホールに問い合わせたら「本日16時からの回が最終」と言われ、迷った末、まだ間に合うかもしれないと15時すぎに慌てて神保町に向かったのでした。今日、観なかったらまた観のがしてしまうかもしれないという気持ちでした。この作品は室蘭を舞台にした作品ということで、とても気になっていました。
*参照 特集上映<映画で見る現代チベット> 『ラモとガベ(原題)』日本初上映情報はこちら

岩波ホールに着いたのは映画開始5分くらい前でしたが、ほぼ満員状態(コロナの影響で座席は一人おきですが)でした。それに映画が終わった後に坪川拓史監督と出演者の菜葉菜さんが舞台挨拶に登場したのでびっくりしました。それで満員状態だったのかも。監督は50回目の舞台挨拶と言っていたけど、岩波ホールでの映画公開中、ほぼ毎日舞台挨拶していたのかしら。すごい!
moruerani_main__R.jpg
c室蘭映画製作応援団 2020

この作品は室蘭を舞台にして、室蘭とそこに住む人々を抒情的に描いた作品で、とても心に響きました。北海道が大好きで何度も行っているのですが、室蘭は通過地点で通ったことがあるというだけで行ったことがありませんでした。でも、この作品を観て、これまで室蘭に行ったことがないのを残念に思いました。監督はこの映画ができるまで7年もかかったと言っていましたが、その年月を経ての映画、時間の流れ、町の変化も感じました。室蘭を強調してはいないけど、この地に対する想いというのが伝わってきます。この地の景色、四季の移ろいの中に、ここに生きる人々の姿が映し出されます。プロの俳優さんも10数人出演しているけど、地元の方の出演も多いとのこと。時には本人も出ているというのを後で知りました。
室蘭と言えば、かつては鉄の町として栄え、室蘭工業地帯と学校では習った記憶があります。人口は1969年に18万人ということもあったけど、今は10万人以下という状態。かつて栄えた地方都市といった風情。12日の試写で見た『のさりの島』もかつて栄えた天草の商店街を舞台にした作品だったので、かつて栄えた日本の地方都市の衰退というのを考えさせられました。
「ここに生きる人々の息づかいを映画に残したい。そして、この街を知ってほしい」という監督の思いに、町の人たちが呼応してこの映画が作られたというのも納得の、ここに生きる人々の息づかいが感じられる作品でした。ここに生きる人の「記憶」が語られることで、観客の記憶にも残る作品に仕上がり、室蘭の姿が伝わってきました。
監督・脚本・音楽を務めたのは、長万部出身で、東京から北海道室蘭市へ移住した映画作家・坪川拓史。街の人々から聞いたエピソードを元に“七話連絡形式”の脚本を書いたそう。2014年に市民有志が映画製作応援団を結成し、資金を集め始めクランクイン。度重なる撮影中断を乗り越え2018年全編の撮影が終了。室蘭発の映画は完成しました。多彩な俳優陣の他、キャストの半数がオーディションで選ばれたり、街でスカウトされた演技経験の全く無い人々が出演しているそうです。
そして、公開前に亡くなってしまった大杉漣さんや小松政夫さんも出演しているのがうれしい。映画とともに永遠に映像が残ります。

moruerani_sub.1__R.jpg
c室蘭映画製作応援団 2020

※“モルエラニ”とは、北海道の先住民族であるアイヌの言葉。[小さな坂道をおりた所]という意味で、「室蘭」の語源のひとつと言われる。
モルエラニの霧の景色とともに、室蘭に生きた人々の想いが紡がれていく。映像抒情詩ともいえるような素敵な映画でした。
岩波ホールでの上映は終わってしまいましたが、まだ他の場所での上映が続くので、まだ観ていない方、ぜひ観に行ってみてくださいね。
全国順次公開中。これからの上映情報は下記をご覧ください。

『モルエラニの霧の中』公式HP
posted by akemi at 20:18| Comment(0) | 映画鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: