2023年10月30日

TIFF7日目(白)

10月30日(月)
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『シン・ゴジラ』のスマートなゴジラ 日比谷シャンテ前

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旧ゴジラはTOHOシネマズ 日比谷ロビーにあります

今日はお弁当持参で4本。
『雪豹』コンペ/中国/ペマ・ツェテン監督
テレビ局のクルーが雪豹を撮影にチベットの山村に向かう。「雪豹法師」と呼ばれるチベット僧の実家では、羊の囲いの中に雪豹が飛び込み、9頭もの羊が襲われて死んでいた。僧の兄は怒り心頭で「保護動物だろうが殺してやる!」と息巻き、役人や警察もやってくる騒ぎになる。山の上では子どもの豹が母親を待っている。僧には豹との不思議な体験があった。
怒鳴り続ける兄を演じたのは、ツェテン監督作品の常連ジンパ(ものすごく煩い)、雪豹を逃がしたい父や弟を頑としてはねつけます。残った羊を助け出そうにもうまく行かず、警察の命令を待つことに。誰からもいい知恵が出ずもめたまま2日間。このあたりがのんびりしていますが、雪豹が大きな猫のようで可愛いです。

『野獣のゴスペル』コンペ/フィリピン/シェロン・ダヨック監督
親のいない貧しい家庭で小さな弟妹の面倒をみている高校生マテオ。同級生と喧嘩になり、カッとして殴りつけた相手が倒れたのを見捨てて逃げ出してしまう。頼ったベルト叔父は失踪した父の旧友で、裏の世界の人間だった。汚れ仕事をさせられて逃げたくなるが戻るところがない。
子どもや動物には優しいマテオですが、頭に血が上りやすく短気。男として良いモデルになる父親がいないせいか、子どもっぽいままです。貧困が全ての元とは言えませんが、保護者のいない子どもを救う道はないの??

『私たちの世界』ユース/コソボ、フランス
紛争でゆれたコソボ、田舎から仲の良い従妹同士の二人が家出同然で大学にやってくる。希望の英語学科は満員、しかたなく経済学をとったが講義は講師不在で休みがち。学費を払っても授業がなく、学生たちは集会やデモで不満をぶつける。期待を裏切られ変わっていく二人は、それぞれ別の道を選んでいく。
「何も学べず、学位を金で買うのか」というセリフがありました。先に希望を見出せずに退学する者も自殺する者も出ます。日本では長い間戦争もなく、学ぶ場所も働く場所も手に入れてきたのは幸運だったと思わざるをえません。それがずっと続く保証はどこにもないんですけどね。

『湖の紛れもなき事実』ワールド・フォーカス/フィリピン/ラヴ・ディアス監督
ドゥテルテ政権の圧政のなか、ヘルメス・パパウラン警部補は「警察官は法律に従い、市民を守るもので上司や政治家の言いなりになるべきではない」と同期生にこぼす。火山灰地の湖で起こった15年前の未解決事件を追うことに固執している。あらゆることに天才的な能力を発揮していたエスメラルダという女性が失踪したのだ。「フィリピンのワシ」衣装の彼女の幻影がヘルメスの頭から離れない。
ラヴ・ディアス監督の作品はどれも長くて、映画祭で観るときはスケジュールの組み立てに苦労します。本作は215分、3時間半余りです。なぜその事件にこだわり続けるのか、同期の警官(昇進して上司らしい)が何度も問います。閉塞した現実の中で唯一確かな目標であったのかもしれません。ヘルメスが捜査を続けて関わったばかりに命を落とす人も出て、彼の矜持が崩れるときがやってきます。まだ続けるの〜?と思いつつ、見続けてしまいました。(白)
posted by shiraishi at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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