『ハッピー・バースデイ』(エジプト/サラ・ゴーヘル)ウィメンズ
トハは8歳。パパはママと6人の子どもを残して死んでしまった。ママとお姉ちゃんは魚を取り市場で売り、トハは学校に行かず白人の家でメイドとして働き、家計を助けている。奥様の家には同じ年ごろのネリーがいて、親友と思っている。ネリーの誕生日が近づき、奥様と準備を始め、最高のパーティにしてお祝いしたいと張り切るトハだったが。
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白人の居住区は高い塀で囲まれていて、門番が出入りを厳しくチェックします。頭の回転が速く、賢いトハですが、まだ子供でショッピングセンターで奥様に「ここで動かずにいて」と言われても、面白そうなものがあると見に行ってしまいます。「この家にずっといたい」と無邪気に願いますが、「人生は厳しいの」と奥様。家に帰されたトハは、なんとしてもパーティに参加しようと友達や妹に助けられて戻るのですが、そこでもう必要とされていないことがわかります。
厳然とした階級差を初めて思い知るトハに胸が痛くなってしまいました。貧富の差は目に見えますが、人の心にある壁は見えません。サラ・ゴーヘル監督はエジプト系アメリカ人。来日はなかったので、このストーリーがどうやって生まれたのかわかりません。将来は描かれず、トハが大きくなって学び、成功するというラストではないのですが、そうなったらいいなぁ。
『飛行家』(中国/ポン・フェイ)コンペ
空を飛ぶ夢を父親から受け継ぎ、半世紀にわたって挑戦し続けた男のドラマ。自作の気球で空を飛ぶのを楽しんでいたミンチー、結婚相手の父親に「飛ぶのをやめないと娘と結婚させない」と申し渡されてしまった。亡き父の親友だった義父との約束を律儀に守ってきたが、飛ぶことへの興味と渇望は捨てきれない。飛行装置を作ってみるが失敗、受験前の義弟にけがをさせてしまう。責任を感じたミンチーは夢を封印した。
妻はダンスホールを開業したが集客ができず苦戦。しまい込んでいた気球で空から宣伝をしてと頼まれる。
空が好きでまじめな男性が主人公ですが、ところどころコメディタッチの作品。シュアン・シュエタオの小説が原作で、70年代から現代までを背景に一人の男の半生を描いています。挫折もありますが、沈み込みすぎずに何かをきっかけに夢を再燃させます。これは実現可能なのか?と思った部分もありますが、逞しくもいじらしい奥さんが支え続け、後味の良い作品でした。
『ガールズ・オン・ワイヤー』(中国/ヴィヴィアン・チュウ)ワールド
ファン・ディーはスタント・ウーマンの仕事に打ち込み、家族の借金を返済している。母の弟・叔父が重ねた負債だった。叔父のことで絶縁状態だった従妹のティンティエンが突然訪ねてくる。ファンは彼女を冷淡にあしらうが、父親に麻薬を売っていた組織に捕まってようやく逃げ出してきたという。
映画内の映画で、ワイヤーをつけて飛ぶスタント場面がたくさん見られるのかと思いきや、従妹同士の二人に次から次へと苦労がふりかかる話でした。スタント場面では監督の繰り返す「もう一回」にだんだん腹が立ってきます。今季「じゃあ、あんたが作ってみろよ」というドラマがありますが、「じゃあ、あんたがやってみろよ」と言いたくなります。彼女を気遣う人が一人だけいるのですが、弱い立場です。タイトル『ガールズ・オン・ワイヤー』は「細いワイヤーの上で綱渡りをしている二人」のように思えてきました。
『私はネヴェンカ』(スペイン、イタリア/イシアル・ボジャイン)ウィメンズ
2000年、スペイン北部のポンフェラーダ市。大学を卒業したネヴェンカは市議会議員に推されて当選した。若くて綺麗な女性に目がない市長の近くに行くことを母親は心配するが、ネヴェンカは取り合わない。市長は新人のネヴェンカに大きな仕事を任せ、いつもネヴェンカをそばに置く。ためらいながらも一線を越えてしまうネヴェンカは愛情ではないと気づく。熱心に仕事に取り組み疑問点を市長にぶつけるが、はぐらかされるばかり。長く市政を牛耳ってきた市長は、ネヴェンカを尊重せず無能呼ばわりするようになった。
25年前に実際にあったセクハラ事件をもとにしています。まだセクハラやパワハラが重大視されていなかったころ。市のトップに長く君臨してきた市長は周りの人間たちを手の内にして、後ろから蹴とばしたくなるほど厚顔無恥です。最初は市長や周囲を信じ、自分は正しいと思っていたネヴェンカですが、遅ればせながら間違いであったと気づきます。周りは見て見ぬふりです。
これまでは同じ目に合っても、泣き寝入りしたのでしょう。ポルトガルで公職にある人をセクハラで訴えた最初の事件となりました。裁判所を出たネヴェンカにマイクが向けられ「沈黙しないで、声をあげて」と彼女は答えます。
世界中で似たような事件が起き、辛い思いをする人がいます。悪いことと思っていないから何度も繰り返され、絶えることがないのでしょうか、罰よ当たれ。


