2018年02月27日

第7回江古田映画祭、始まってます!! (千)

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公式ページ https://www.facebook.com/ekodaeigasai/

311をキッカケに始まった江古田映画祭も今年で7回め。私は何度か足を運んでます*シネジャ97号では記事も書かせていただきました
http://www.cinemajournal.net/bn/97/contents.html

映画祭の副題に「福島を忘れない」とあるようにフクシマ関連の作品が連日上映されてます。私は福島県二本松市出身、遠藤ミチロウさんのドキュメンタリー『SHIDAMYOJIN』を観に行きたいっす!!! ミチロウ監督のデビュー作であるドキュメンタリー『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』は2015年、山形国際ドキュメンタリー映画祭で観て来まして感動しました*シネジャ95号掲載
http://www.cinemajournal.net/bn/95/contents.html




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2018年02月18日

座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルに行ってきました2

やっと行けたこのフェスティバルですが、貴重な作品や珍しい作品を観ることができました。特に何十年も前の古いTV映像を観ることができたのはとても嬉しかった。今と違って録画ができなかった時代のものは観ることができないものと思っていたので、そういう映像を観ることができるとはと思いもよらない経験ができた。そんな中から観た作品の感想などを。

●特集「表現者たち/写真」『写真で読む東京』
映画監督・佐藤真が写真と向き合ったテレビ番組2本。
「変貌する街角で−桑原甲子雄と長野重一」「大都会の光と闇−内藤正敏と荒木経惟」(1996年)の2部構成で、東京をいろいろな角度で撮影した4人の写真家をとりあげている。番組ナビゲーターは写真評論家の飯沢耕太郎さん。
写真をずっと続けてきた私ですが、佐藤真監督が東京を撮った4人の写真家についてのTV映像を撮っていたなんて全然知らなかった。桑原甲子雄と長野重一、内藤正敏と荒木経惟という組み合わせで作った番組。東京を撮っている写真家はたくさんいるけど、この4人に絞った構成というのは、全然違う角度で東京を捉えてきた写真家たちだから、佐藤監督自身が写真に相当詳しいと思った。
終わってからこの作品のプロデューサーだった代島治彦さんと番組に出演していた飯沢耕太郎さんのトークがあり、この番組を作ったときのことなどが話されとても興味深かった。
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左 飯沢耕太郎さん 右 代島治彦さん

●特集「追悼/吉永春子」
TV番組「ある傷跡〜魔の731部隊」(1976年)、「街に出よう〜福祉への反逆・青い芝の会」(1977年)
20年以上前、池袋にあった映画館で吉永春子さんの特集があって、本人もQ&Aに出席したイベントがあり、TV局の女性プロデューサーの草分けである吉永さんのことを知った。そのころ、すでにTV局を退職して現代センターの代表だったと思うので1991年以降のことだったのだと思う。その時、何を見たのかよく覚えていないけど、たぶん今回見た青い芝の会のドキュメンタリーだったのかもしれない。
この作品ができた頃はまだ障害者が街頭に出ていくということに困難があり、全然バリアフリーでなかったけど(設備的にも人々の協力も)、それをものともせず、外へ出ようと活動する青い芝の会メンバーの姿が心強く、彼らの無謀とも思える行動があったから、その後、障害者が交通機関を利用しやすくなったり、制度的にもかなり変わっていったと思う。それに、人々も昔に比べたら手を貸しているのではないだろうか。私はリタイアする前の15年近くを障害者が作った会社で働いていたので、それをすごく実感した。
吉永さんが731部隊の映像を作っていたことは知らなかった。でも40年以上前、731部隊のことを隠蔽しようという空気で、なかなか情報が得られない中、根気よく調べていく吉永さんの姿が勇ましかった。
吉永さんがインタビューしに行く後ろ姿が映し出されていたけど、後で金平茂紀さん(TBSキャスター)と橋本佳子さん(ドキュメンタリージャパン・本フェスティバル実行委員)のトークの中で、報道スタッフを引き連れて取材にいく吉永さんのことが話されて納得。でも二人とも畏敬の念からか怖かったと語っていた。40年以上前のラジオやTVの制作部門で女性が生き抜いていくには、肩肘張っていくしかなかったのではとも思う。
このフェスティバル実行委員である橋本佳子さんも、吉永春子さんの後の世代で活躍する女性プロデューサーだけど、橋本さんに以前インタビューしたことがあり、それが縁で、このフェスティバルのことが気になっていた。それにしてもガンガン取材を進める吉永春子さんの勇姿は、今の私たちにとっても心強い。

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左 橋本佳子さん 右 金平茂紀さん

*『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』(長谷川三郎監督)で、プロデューサーである橋本佳子さんのことを知り、その後、『ひろしま 石内都・遺されたものたち』(リンダ・ホーグランド監督)の時に橋本佳子プロデューサーにインタビューさせていただいた。
シネマジャーナルHP 特別記事『ひろしま 石内都・遺されたものたち』
リンダ・ホーグランド監督・橋本佳子プロデューサーインタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2013/hiroshima/index.html

●是枝裕和セレクション
TV番組『永六輔とテレビジョン 遠くへ行きたい』
 第 1回「岩手山―歌と乳と」(1970年)
 第16回「オランダ坂をのぼろう 長崎・天草」(1971年)

昨年亡くなった永六輔さんを追悼し、是枝監督がセレクションしたこのプログラム。
「遠くへ行きたい」は2018年現在でも放映されている番組だけど、その1回目を見ることができた。1970年というから48年前の番組。タイトル曲は同じだけどテンポが違う。ポップな感じだった。今のが叙情的でしっとりした感じだとすると、最初のころはアップテンポでポップスのような感じ。同じ曲なのに、編曲でこんなにも違うのかと思った。
この歌を作詞した永六輔さんが出演し、けっこう自由奔放に小岩井牧場や岩手山が見える地方を彷徨していた。50年近く前の作品なのに、なんだか新鮮だった。第16回のほうは、永さんとテーマ曲「遠くへ行きたい」を歌っているデューク・エイセスも登場し、長崎県内のあちこちで歌う姿が映し出される。デューク・エイセスは昨年(2017年12月)活動を休止してしまったが歌は残る。
上映後は、この番組を制作した今野勉監督と、セレクションした是枝裕和監督のトークショーがあり、永六輔さんとの番組作りの話を聞くことができた。永さん自身が番組構成からなにから全部自分でできるので、永さんのアイデアを活用し、見せる工夫と見ている人へのメッセージと、ユーモア感あふれる旅模様が映し出され、また永さん独特の話し方が魅力の番組だったのだなと、つくづく思った。
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左 是枝裕和監督 右 今野勉監督

●コンペティション部門入賞作品は、最初、観る予定はなかったんだけど、山形ドキュメンタリー映画祭で見逃した『選挙に出たい』(邢菲 シン・フェイ監督/中国/2016)の上映があるというので、急遽、観ることにした。この作品は、中国から20年以上前に来日し、新宿歌舞伎町で飲食店や風俗店の客引きをする「歌舞伎町案内人」として働き、今は自分の店を持つ李小牧さん(本を出したり、雑誌への寄稿したりで作家でもある)が、新宿区の選挙に出馬したのを追った作品。中国では選挙というのはほとんどなく、出馬も投票の自由もないので、ぜひ立候補したいと日本に帰化し、区議会議員選挙に立候補する。李さんが立候補を思い立ったのは、長年の日本での生活の中で感じてきた差別感からだと思うが(外国人、マイノリティなど)、「日本では、私のように水商売についていた者でも選挙に立候補することができる。中国では考えられない。民主主義に魅力を感じた」と語っている。それでも出馬に至るまで紆余曲折があり、選挙を通じて、人の繋がり、協力、排他的な日本の姿が浮き彫りにされる。
上映後、中国に帰っていて不在の監督に代わり、李小牧さんが舞台挨拶に登場したが、なんとこの作品は秋にポレポレ東中野で公開が決まったそう。ぜひぜひ、皆さんに観てもらい、日本の選挙について考えてほしい。
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李小牧さん

一緒に上映された「<ETV特集> その名は、ギリヤーク尼ヶ崎 職業 大道芸人」も素晴らしい作品だった。85歳の大道芸人ギリヤーク尼ヶ崎の日常を追い、病と闘いながら芸の道を精進する姿を描いている。ギリヤークさんの舞踏というのに最初はあまり興味がなかったんだけど、観ているうちにだんだん彼の生き方に引き付けられ、最後踊り終えた時には涙が出ていた。こんな芸人がいるんだと知った。

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左 松原翔ディレクター 右前ギリヤーク尼ヶ崎さん 後 弟さん

初めて観たフェスティバルだったけど、映画もTV番組も観ることができる稀有な映画祭だった。それに若い人が多いなと感じた。けっこう専門用語や映像の作りや制作などの話をしていたので、映画や映像の知識を学んでいる若者たちかもしれない。                                                                            宮崎暁美
posted by akemi at 09:08| Comment(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月11日

座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルに行ってきました

高円寺でやっている「第9回 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」に初めて行ってきました。実を言うと、第一回目から行ってみたいと思っていたのだけど、このフェスティバルの開催日が、シネマジャーナル本誌の年初めの号の編集日といつも重なっていたため、行くことができなかったのです。でも、シネマジャーナルは年3回の発行をやめ(年1回の発行になりました)、HP中心に記事を掲載することになったので、今回初めていくことができました。今回のテーマは「表現者たち」。歌、写真関連の作品、また女性のドキュメンタリー作家の草分けである吉永春子さんと、永六輔さんの追悼番組を観ることができればと思います。

どうしても観たかったのは、2月8日に上映された森達也監督の『〈NONFIX〉放送禁止歌〜歌っているのは誰? 規制しているのは誰?』。これはフジテレビの深夜番組『NONFIX』で1999年11月に『「放送禁止歌」〜歌っているのは誰? 規制しているのは誰?〜』というタイトルで放送されたということだけど、私は観たことがありませんでした。
森監督の作品は、オウム真理教を撮った『A』を観て以来、注目していたけど、この『「放送禁止歌」〜歌っているのは誰? 規制しているのは誰?〜』については、TVで放映された時には知らず、その後、映画館で上映されるたびにいつか観てみたいと思っていました。今回、やっと観ることができ、森監督の話も聞くこともできました。

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放送禁止になった歌を、時にはその歌を歌った歌手に歌ってもらったり、歌ったものを映像なしで、歌詞だけテロップで流すという方法で紹介していたけど、「規制しているのは誰?」で、<誰が何のために>というのが言いたいことだったと思う。19年も前の作品なのに、今も状況は変わらないと思った。あの当時は「忖度(そんたく)」という言葉が使われてなかったけど、まさにその「忖度」で、自主規制した歌がたくさんあったんだと驚きだった。森監督はこのフェスティバルでの上映作品を別の作品にしようと決めていたのに、ぎりぎりでこの作品に差し替えたのでヒンシュクをかったと言っていたけど、去年「忖度」という言葉が飛び交ったので、この作品に変更してタイムリーだったのでは。

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高田渡の「自衛隊に入ろう」や、フォーク・クルセダーズの「イムジン河」はもとより、北島三郎のデビュー曲「ブンガチャ節 」や、ピンク・レディの「S・O・S」、高倉健の「網走番外地」も放送禁止歌だ(った?)と知った。赤い鳥の「竹田の子守唄」もそうだったとは知らずびっくり。この歌は、それでもラジオで流れていたのを聴いたこともあるし、TVでも歌っていたのを見た気がするんだけど、放送禁止歌になっていたとは。長谷川きよしの「黒の舟歌」のレコードのB面に入っていた「心中日本」などは、「心の中の日本」というタイトルにしたという話が出てきて、そんなこともあったんだと知った。
それにしても、私としてはリアルタイムで知っている歌たち。いくつかの曲はラジオで流れたり、TVで放映されたこともあったと思うけど、その後、放送禁止歌になったのかな。「イムジン河」、「自衛隊に入ろう」も、ラジオから流れたのを聴いたことがある(1968年、69年頃だと思う)。その後、すぐに放送禁止になってしまった。どちらの曲も一回聴いただけで歌詞とメロディを覚えた。それだけ強烈な印象があった。
特に「自衛隊に入ろう」は、強烈な歌詞とメロディで私の心に入ってきた。まだ高校生だった私が、初めてアルバイトして買ったのが、この曲が入っているLPだった。また、高田渡さんと同じアパートに8年くらい住んでいたこともあるので、渡さんが出てきた時には懐かしかった。

*高田渡さんとのエピソードを下記に書いているので、よかったら読んでみてください。なぎら健壱さんとのエピソードもあります。
シネマジャーナルHP スタッフ日記 高田渡さんとのエピソード
http://cinemajournal.seesaa.net/article/449628811.html

そして、今回、なんといっても発見だったのは、なぎら健壱の「悲惨な戦い」という歌。この曲はまったく知らず、初めて聴いたのだけど、国技館からのTV中継で、大相撲の取り組み中に力士の廻しが落ちるという、架空のハプニングを歌ったコミカルなもの。雷電と若秩父の取り組みという、時代を超えた組み合わせを描いていたけど、雷電という名前が出てきてびっくり。江戸時代に活躍した力士で長野県東御市の出身。現在東御市には「雷電くるみの里」という道の駅があり、私は何度も利用したことがある。ここには雷電像もあります。

忖度とは「他人の気持をおしはかること」と辞書にあるけど、これらの放送禁止歌たちも、放送局の忖度よる自主規制ということだったのだろう。美輪明宏の「ヨイトマケの唄」も、放送禁止歌だったという。知らなかった。この歌は数年前、紅白歌合戦で歌っていたけど、放送禁止になった歌も、時代を経れば規制が弱まるのか…。あらためてこの「放送禁止」というのは誰が決めるのかと思う。
最後に岡林信康の「手紙」が流れ、しみじみと聴き入った。この歌は心に沁みる。

1969年に私が買った「自衛隊に入ろう」が入っているLPレコードは、五つの赤い風船と高田渡のカップリングLPで、当時、私がこのLPを買った一番の目的は五つの赤い風船の「遠い世界に」だった。この曲が大好きだった。しかし、50年近くたった今も話題になるのは「自衛隊に入ろう」。その時は、まさかこの曲が50年後にも話題になっているとは思わなかった。でも、自衛隊を憲法に取り込もうという憲法改悪が進められている現在において、さらにこの曲は話題になっていくのかもしれない。

2月11日以降のプログラムを下記に記しますので、皆さんも「座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」に出かけませんか。

2月11日(日)
○11:00〜 特集「表現者たち/詩」
      『詩人、出張スル』
        12:50〜トークイベント(田原)
○13:45〜 特集「表現者たち/ダンス」
      『ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』
        15:10〜トークイベント(首藤康之×山崎裕)
○16:30〜 特集「追悼/吉永春子」
      『ある傷跡〜魔の731部隊』★
      『街に出よう〜福祉への反逆・青い芝の会』★
        17:55〜トークイベント(金平茂紀×橋本佳子)
◎19:15〜 是枝裕和セレクション
      『永六輔とテレビジョン 遠くへ行きたい』★
      第1回「岩手山―歌と乳と」
      第16回「オランダ坂をのぼろう 長崎・天草」を上映      
        20:15〜トークイベント(是枝裕和×今野勉)

2月12日(月・祝)
●10:00〜 コンペティション部門入賞作品上映
◎18:00〜 井浦新セレクション
      『〈日曜美術館・特別編〉異形探訪 井浦新“にっぽん”美の旅3』★
        19:10〜トークイベント(井浦新×長井倫子)
●20:10〜 コンペティション部門表彰式&入賞者トーク(入場無料)
★印は無料参考上映。上映は無料ですがトークは有料。

座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル公式HP

                                     (宮崎暁美)
posted by akemi at 06:42| Comment(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月24日

第18回(2017)東京フィルメックスを振り返って (暁)

特別記事に追われて、あいち国際女性映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭以降の映画祭の作品についての紹介や感想などを書く余裕がなかったので、これからそれらの映画祭の作品について振り返って書いていこうと思います。ここではフィルメックスの映画祭の作品について書こうと思います。

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10月、11月と映画祭続きで、試写などに行くのが滞ってしまって、最終試写がフィルメックス最中に集中したため、今回のフィルメックスは21:15〜のレイトショー参加が多くなり、オープニングとクロージング以外の、ゲストが参加した回の作品にはなかなか参加できず、ちょっと残念でした。それでも12本の作品を観ることができました。でも5日連続のレイトショーで家に帰り着くのが夜中の1時すぎということが続き、さすがに6日目は疲れきり、『殺人者マルリナ』はあきらめたら、この作品が「最優秀作品賞」を受賞しました。タイトルから想像して「ま、いいか」と思ってしまったので、その日は観に行かなかったのですが、この作品を見落としたのがちょっと悔しい。いつか日本公開されるといいのですが・・・。
また、さっぱり内容がわからなくてどうなっているの?という作品もいくつかありました。それでも、フィルメックスの映画は、やはり観にいかなくちゃと思わせてくれる魔力(笑)があります。
映画祭で観た作品からいくつか紹介したいと思います。

フィルメックスでお馴染みの張艾嘉(シルヴィア・チャン)監督の最新作『相愛相親』がオープニングで上映されました。シルヴィア・チャンの作品は、やはり見逃せません。オープニングとこの作品鑑賞を楽しみに、今年の東京フィルメックスが始まりました。

『相愛相親』 Love Education / 相愛相親 【オープニング作品】
監督:張艾嘉 シルヴィア・チャン(Sylvia CHANG)
出演:張艾嘉、田壮壮、郎月婷、呉彦妹、宋寧峰、李雪健、王志文、劉若英
中国、台湾 / 2017 / 120分

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母の死を看取った娘、慧英/ホェイイン(シルヴィア・チャン)は、母を父と同じ墓に入れるため田舎にある父の墓を自宅のそばに移そうとするが、父の最初の妻や村人の反対にあい移すことができず大きな波紋を巻き起こす。監督自身が主演を兼ね、現代の中国を舞台に3世代の女性の思いを描く。母を亡くしたばかりのホェイインは、都会で学校の先生をしているが定年間近。その娘、薇薇/ウェイウェイ(郎月婷 /ラン・ユエティン)はTV局で働いているが、ミュージシャンのボーイフレンド阿達/アダー(宋寧峰/ソン・ニンフォン)に北京に一緒に行こうと言われ、迷っている。そして、夫の帰郷を待ち続けた最初の妻ナーナー(呉彦妹/ウー・イェンメイ)は田舎の家で、今は一人暮らしをしている。
ホェイインの夫役孝平/カオピンをなんと『盗馬賊 』や『青い凧』の田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)監督が演じていて、いい味出していた。一見ぼけっとしているようで包容力があり、思い通りに進まずイライラしている妻を穏やかに見守っている。ウェイウェイの彼も田舎のおばあさんの家に一緒に行き、彼女を手助けし、単なる対立だけでない物語が展開する。

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墓をめぐる話題について、祖母、母、娘という3世代の女性たちの物語を描いているが、単に3世代の女性の物語というだけでなく、シルヴィア・チャンらしく、古くから置かれてきた女性の位置、立場を女性の視点で描く。さりげなく部屋の中に「女書」の額も壁にかけてある。これも監督のこだわりかもと思った。
そして、夫婦、親子、家族の愛、都市対田舎の対立、家族の歴史、風評をめぐる問題などをユーモアを込めて描き、笑いをとりながら、最後は人情、人の心の変化を愛情込めて描き、心にしみる物語になった。また、TV局や学校、市役所など公共機関への皮肉を、風刺たっぷりに描きつつ、そういう中に生活する人たちの姿から、現在の中国の姿が垣間見える。
けっこう早いテンポで話は進むが、それには音楽が大きな役割を果たしている。こういう土くさい物語なのに、中に出てくる音楽はロック。ウェイウェイの彼がライブで歌っているシーンで歌っているのは、BEYOND(香港)の「海闊天空」(遥かなる夢に)。墓をめぐって村人たちと対峙するシーンなどでは崔健の「花房姑娘」がバックに流れる。田舎に妻を残して働きに出た父は、都会でホェイインの母と出会い結婚し、娘(ホェイイン)を設けたが、亡くなった時には田舎の土地に葬られて、最初の妻が墓を守っているという設定がよくわからず、なぜ最初から自宅のそばのお墓に葬らなかったのかなと思ったけど、正妻と妾ということなのかな? でも亡くなったお母さんとも結婚しているわけだし、二重結婚なのか、そのへんが曖昧だった(離婚という言葉は出てこなかった)。
でも、遺骨を動かすという問題をめぐっての意地の張り合いと和解の物語に共感できた。実を言うと、私の叔母の家でも、今、そういうことが起こっていて、どのように墓を移動するかでもめている最中で、人事とは思えなかった。なのでこの映画を観た時に、中国でもこういう問題があるんだと思った。
ウェイウェイを演じた郎月婷 (ラン・ユエティン)は、山口百恵似だなと思って彼女が出てくるたびに百恵さんのことを思い出した。李雪健や 王志文も出ていると後で知ったけど、いったいどこに出ていた?と思い、再度観ようと思ったけど、2回目を観ることはできなかった。またぜひ観たい。
舞この映画の台になった都市はどこなのだろうと思うのだけど、「女書」が飾られていたので「女書」で有名な湖南省あたりなのかも。主人公が必死であればあるほどコミカルさが際立ったり、融通の聞かないお役所仕事やTV局が扱う方法などに対する皮肉も効いていて、シルヴィア・チャン、うまい!と思った。
ぜひ、日本公開してほしい。

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You Tube 『相愛相親』 シルヴィア・チャン監督Q&A
https://www.youtube.com/watch?v=zp2VhltH20c


『山中傳奇』 Legend of the Mountain / 山中傳奇
監督:胡金銓 キン・フー(King HU)  台湾 / 1979 / 191分
出演:石雋、徐楓、呉明才、佟林、呉家驤、田豊、 張艾嘉

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長年中華圏の映画に興味を持ってきた私だけど、胡金銓監督の作品にも古装ものにも詳しくないし、この作品は観たことがなかったのですが、映画題名をよく目にするので、いつか観てみたいと思っていました。いくつも版がある中で、今回、カットなしのデジタル修復版が上映されたので観てみました。上映後は、出演していたシルヴィア・チャンの話も聞けて、貴重な体験をすることができた。
「死んだ兵士の霊を鎮める儀式に使う経典を清書する命を帯びた若い僧が遭遇する、奇怪な出来事の数々を描いたキン・フーの傑作」と映画祭のHPに書いてあったけど、経典の清書を依頼された学僧石雋(シー・チェン)が、清書をするのに集中できる静かな場所を目指して、山また山を登り、城跡にたどり着くのだけど、いろいろな事件が起こり、清書どころではない生活になってしまったという内容。シルヴィア・チャンは美しい幽霊の役で出演。
宋代の中国。写経の依頼を受けた学僧のホウ(石雋)は、山中の城跡へ向かう。ホウはそこで出会った元兵士から部屋を借りることにするが、押しかけでやってきて食事などの世話をする女性に、世話の代わりに子供の勉強を見てと言われたが、その子供というのがは美しい娘徐楓(シー・フン)で、断ることもできないまま、突然結婚するはめに。でも、その娘が実は妖怪だった。学僧が遭遇する数奇な出来事を描いた幻想的な物語。
山の中を歩いている途中から、なんだか怪しげな雰囲気があり、意味ありげなラマ僧も近くを歩いているのだけど、あとで大きな役割をする伏線だった。そして最後は妖怪とラマ僧の闘い。幻想怪奇映画という言われ方をしたら、そうかもと思う。
しかし、長い。途中何度も眠くなってしまったけど、なかなか目的地には着かないし、着いたと思ったら、なんだか話が変な方向に進むし、どうなってるの?状態だったけど、39年も前の映画なのに、映像が新鮮だった。もちろん懐かしさも満載。ガスが出てくるシーンが多かったけど、煙を炊いて山のガスを表していて、喉をやられたというスタッフやキャストが多かったらしい。

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映画を観ている間中、どこで撮ったんだろう、台湾にこんなところあるのかな? あるいは中国?と思っていたら韓国で撮ったという。シルヴィア・チャンの家族が監督と知り合いでスカウトされたらしい。そして、韓国での撮影は1年以上かけて撮ったと言っていた。シルヴィア・チャン自身も、このロングバージョンを観るのは、久しぶりのことと語り、監督には「映画のストーリーは単純で良いんだ」と言われたことを覚えていると語っていたが、その後の自作にもそれが生かされているのだろう。「そんな環境で生活していたので、私たちはみんな、生涯の友になりました。今年の金馬奨で徐楓さんが生涯貢献奨を受賞するのですが、そのプレゼンターに私を指名して下さいました」と語っていた。

You Tube 『山中傳奇』出演者シルヴィア・チャンQ&A
https://www.youtube.com/watch?v=hypEfFmo7M8


『氷の下』 The Conformist / 氷之下
監督:蔡尚君 ツァイ・シャンジュン(CAI Shangjun)
出演:黄渤、宋佳、尤勇智、小瀋陽 中国 / 2017 / 126分

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蔡尚君監督

作品を観た後で見たフィルメックスのHPによると「中国北東部の街で警察へのタレコミを糧として生活を送るボー。ある時、強盗殺人事件が起こり、自分に嫌疑がかかることを恐れたボーはロシアに逃亡する」と書いてあったのだけど、まるっきりそういう前知識なしで観たら、話がチンプンカンプン、全然ストーリーがわからず、しかも、途中で急に警察の話が出てきたので、「彼は潜入捜査官?」などと思ってしまったほど。だって「タレコミ」のシーンは見逃したのか、全然観ていなかったから。画面の展開を観ながら、主人公は犯罪に手を貸している人か犯罪者?と思っていたら、いきなり警察官が出てきたので、潜入捜査官?とは思ったけど、まさかタレコミ屋とは思ってもみずだった。それらしいシーンあったのかな? 違法賭博をやっているあやしげな場所が山の中にあったり、なにか犯罪を犯して逃げてきた男が逃げ込んできたあと、ロシアのハバロフスクに逃げ出すけど、そのいきさつもいまひとつわからず、ただ場面を追うばかり。
出てきた女性(宋佳)は黄渤の恋人なのか、あるいは黄渤は用心棒?なのか、そのあたりもわからないままだったけど、女性の描き方はどうも好きでなかった。女性が尊重されていないという感じ。
監督の前作『人山人海』は観ておらず、『スパイシー・ラブスープ』の脚本の方ということと、撮影は余力為(ユー・リクウァイ)、そして黃渤(ホアン・ポー)がでているというので観にいったのだけど、雪と氷の寒々とした景色はすごく印象的で、さすが余力為の映像は素晴らしいと思った。
『薄氷の殺人』を思わすような作品だったけど、同じ寒いシーズンの映像を撮っていても、こちらはまだストーリーが読めた。でもこちらの作品は、何が起こっているんだろう???と思いながら観続けるのがけっこうつらかった。久しぶりに観た尤勇(ヨウ・ヨン 現在は尤勇智という名になっているらしい)の突然の飛び降りシーンは何を意味するのか、どういう人物だったのかとかとも思った。最後は明るい海南島で撮影されたらしいけど、唐突にトラが出てきてこれはなんだったんだろうと思っているうちに終わっていた(笑)。

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You Tube『氷の下』ツァイ・シャンジュン監督Q&A
https://www.youtube.com/watch?v=Nh6tACsUA2g


『天使は白をまとう』 Angels Wear White/嘉年華
監督:文晏 ヴィヴィアン・チュウ(Vivian QU)
出演:文淇 周美君 史河 2017/中国/107 分

ヴィヴィアン・チュウ監督の2作目の作品。巨大なマリリン・モンロー像が立つ、中国南部の海岸のリゾートホテル。そのリゾートホテルで少女への性的暴行事件が発生した。その事件をめぐる二人の少女の物語。
帰る家がないのか、あるいは何か事情があって各地を転々としたのちこのリゾート地へ流れ着き、このホテル(ラブホテル?)で働いている16歳の少女ミア(文淇/ウェンチー)。身分証を持っていないし、年齢も若いのでモグリで働いている。もう一人は中学生の小文(シャオウェン)。母親と二人住まいだけど仕事が忙しく、ほとんど一人で暮らしている。
フロント係の先輩従業員が、ボーイフレンドとデートするため内緒でミアにフロントを任せた時、小文ともう一人の中学生の少女2人と、地元の名士である劉局長(官僚?)がこのホテルで宿泊するためやってきた。少女の一人の契り親という設定で、帰宅が遅くなって家に帰れなくなった二人に頼まれてホテルに泊まりにきたという設定なのだけど、なんだか援助交際という感じもした。ミアは、別の部屋を取っていた劉局長が彼女たちの部屋に入るところを監視カメラで目撃。翌日、少女たちは学校に遅刻して、レイプ事件が発覚する。地元警察に通報され、少女二人は親と一緒に病院で検査を受けるが、劉局長の周りやホテルのオーナーはもみ消しを図る。局長は少女たちの親に、不問にすれば、今後の教育費の面倒をみると金で働きかける。警察も金で丸め込まれたのか局長の味方をして、事件は無かったことになってしまいそうになる。
母親との関係がおかしくなり別居している父親の所に家出してしまう小文と、ホテルのフロントにいたこと、目撃した「劉局長が彼女たちの部屋に入るところ」について、証言しようにもできないミア。彼女たちの葛藤が描かれる。
台湾金馬奨で最優秀作品賞、監督賞等にノミネートされ、ヴィヴィアン・チュウ監督が監督賞を受賞した作品とのことだけど、いまひとつ主張が暖味になっていて、観ているほうとしては、もう少し二人の少女心情とか、二人の行動を深く描いてほしかったとも思う。でも、今の中国で、警察の姿とか、ここまで描いたものが検閲に通って、ヴェネチア映画祭コンペ部門にノミネートされるところまで持っていけたというのは上出来かも。第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞に輝いた『薄氷の殺人』のプロデューサーをしていたヴィヴィアン・チュイ監督だけに、そこはうまくプロデュースしたのかも。
原題の「嘉年華」とはカーニバルという意味。巨大なマリリン・モンローの像は、最後に倒されどこかに持っていかれる(廃棄?)。この作品で象徴的に使われている。

You Tube
『天使は白をまとう』ヴィヴィアン・チュウ監督Q&A
https://www.youtube.com/watch?v=Ke8O75W11ok

ヴィヴィアン・チュウ監督、第54回(2017)台湾金馬奨監督賞受賞時の動画
https://www.youtube.com/watch?v=ZlWL-RsGeVg


『シャーマンの村』Immortals in the Village / 跳大神
監督:于広義 ユー・グァンイー(YU Guangyi) 中国 / 2017 / 109分

『最後の木こりたち』(2007)、『サバイバル・ソング』(2008)、『独り者の山』(2011)など、中国東北部の山間部の人々を一貫して記録し続けてきたユー・グァンイー監督が、同じく中国東北部の農村に住むシャーマンたちの生活を2007年から4年以上に渡って追った作品。
人々が精霊たちと密接に暮らしていた時代の、これも近いうちに消滅してしまいそうな文化の記録である。
村には「大神」と「二神」という男性二人のシャーマンがいて、二神が歌ったり太鼓を叩いたりして、大神がトランス状態になり、精霊が乗り移ることによって、お告げをしたり病を治す。二人が組んで村の中の問題や病気に対処してきた。それにしても二神の声は魅力的な声。
作品はシャーマンの仕事以だけでなく彼らの生活にも密着し、60代後半の二神のシュィを中心に描く。シュイは妻と二人暮らしで、普段は農作業や、豚や鶏を飼うといった具合で、他の村人と同じように暮らしている。
大神が、若い時には神も霊も信じてなかった話をしたり、どのようにして大神になっていったかを語ったり、シャーマンという伝統についてシュイが語ったりと、何も知らない私たちにとって、シャーマンと共に生きてきた、この土地の人たちの歴史を知ることになる。
村人の生活にかかせなかったシャーマンの存在、シャーマンによって人々がつながっている村の在り方を感じさせられた。しかし、儀式を行った際の収入の取り分について不満をぶつけ合ったり、なんとも人間くさいシャーマンの物語が映し出される。それにしてもタバコを吸っているシーンが多く、儀式の最中でも吸っていて、こんなにタバコばっかり吸っていたら、長生きできるはずがないと思っていたら、この作品ができる前に、シュイさんも妻も亡くなってしまったとのこと。
このシャーマンの儀式は、村に若者もほとんどいなくて、今では伝統として残そうにも、あとを継ぐ人材はいないようだ。しかし、子供たちが儀式にけっこう参加しているようなので、将来的には継いでくれる人が出てくるかもしれない。
今までも村に残る伝統や暮らし、変わり行く村の姿を追ってきた監督の作品は、将来きっと貴重な記録となっていくと思います。

You Tube『シャーマンの村』ユー・グァンイー監督Q&A
https://www.youtube.com/watch?v=XDYToolQk7w


『ファンさん』 Mrs. Fang / 方繡英 
監督:王兵 ワン・ビン (WANG Bing) 香港、フランス、ドイツ / 2017 / 87分

2018年2月3日に『苦い銭』(2016年・第17回東京フィルメックスの特別招待作品)が日本公開される王兵監督の最新作。アルツハイマーで寝たきりになり、ほとんど表情にも変化が見られない方繡英さんの姿と家族の様子を、彼女の死まで、定点カメラのように追った作品。
冒頭、方(フアン)さんがドアの前にいるシーンとか、散歩するようなシーンが映ったけど、そのあとすぐに寝たきり状態になってしまったフアンさんが映し出される。年齢はわからないけど70歳すぎくらい? 最初に出てきたシーンから寝たきりになってしまうまで、わずか1年くらい。観察映画ともいえる。そして、もうほとんど口もきけず、表情もほとんどなく、天井をみつめているだけだったり、ずっと横向きのまま、体位を変換するシーンもありません。もしかして体位変換などしていないのかもしれません。
ワンルームの部屋のベッドそばには、娘や息子、嫁、孫が何人もいるシーンがあったり、もうそろそろ危ないという状態になってきた頃には、方さんや亡き夫の兄弟姉妹らしい年代の人も、入れ替わり入ってきて、「その時」が来るのを待っているような状態。方さんに声はかけたりするけど、しかし、腕や身体をさすったり、体位変換したり、身体を起こしたりというような、介護や看病するようなしーんは映っていなて、なぜ?とも思った、ただ、ベッドを囲んで見守っているだけ。介護についての考え方が浸透していないのか、あるいは死に向き合う考え方の違いか。そのへんはわからなかったけど、ただそばにいるだけでなく、そういうことをしないの?と思いながら観ていた私。
しかも、男たちは、手持ちぶたさになると、近くの湖に魚捕りに行ってしまう。気を紛らわすためや、食料のためもあるのかもしれないけど、男たちの方さんに対する接し方は見ているだけで、もっと他にやり方あるだろうと、ちょっとイライラしてしまった。
そして「死」が間近に迫ってきた数日、最後を看取ろうと3世代に渡る親族が集まってきた姿をカメラは捉えていたけど、方さんが寝ているすぐ横で、見世物のように見ているところとか、葬式の規模や料理の話まで出るような無神経さまで映し出され、そういうことをここで言うかと思ってしまい、なんだかいたたまれなかった。
寝たきりになってからの方さんの撮り方は、本当に定点カメラのようにずっと同じ場面を捉えたロングショットが多かったのだけど、目の動きや、表情が克明に映され、観ていて辛かった。それにしてもワンシーンが長い。よく撮ったなとは思うけど、こんなに長くなくてもいいじゃないかと思ってしまった。しかし、臨終シーンは映し出されずほっとした。
それにしても唐突に始まったけど、途中で、方さんはどんな人生を送ったんだろうとか、方さんとこの家族と監督との関係はどういう繋がりなんだろうとか、どういういきさつでこの人たちのことを撮ることになったのかとか、そういうことを考えてしまった。そういう説明を王兵監督はしない。
それにしても王兵監督の作品は、『鉄西区』(545分=9時間5分)、『鳳鳴(フォンミン) 中国の記憶』(183分=3時間3分)、『三姉妹 雲南の子』(153分)というように長いものが多いけど、この作品は87分で、王兵監督の作品としては短いけど、一つのシーンが長くて、けっこう疲れました(笑)。


『馬を放つ』Centaur 監督:アクタン・アリム・クバト
キルギス、フランス、ドイツ、オランダ、日本 / 2017 / 89分

キルギスの草原地帯の村。祖先が騎馬遊牧民だったキルギスの民は、自然豊かな大地を馬で駆け抜け、馬と共に生きてきた。アクタン・アリム・クバト監督がメガホンをとり、自ら主演を務め、馬に対する信念を秘めた人物に扮し、失われそうなキルギスに伝わる伝説や文化への思いを込めた。

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村人から「ケンタウロス」と呼ばれる寡黙な男は、妻と息子の3人で慎ましい暮らしをしていたが、古くからの伝説を信じ、夜な夜な馬を盗んでは野に放つ。ある日、買ったばかりの競争馬を盗まれた権力者が、犯人を捕まえようと罠を仕掛けたが、なんと捕まえたのは親戚筋(甥?)のケンタロウスだった。そして、ケンタウロスは(叔父)にキルギスの民が失なってしまった馬への思いを語る。(叔父)も馬への思いに気づき、(甥)の気持ちを汲み、罪を免除し、自分の厩舎で働かすことにしたのだが、それでは終わらなかった。
監督は上映が終わってからのトークで「キルギスの民は深く遊牧に関わっていたので<馬は人間の翼>であるという諺もあります。<翼>だからこそ自由でなければいけないと馬を解き放ったわけです」と語っていた。監督が住んでいた場所での実話を元にして、ストーリーを組み立てたという。

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ケンタロウスは、元は映写技師をやっていた。以前は映画館だった場所が、今はモスクとして使われていて、そこでケンタロウスやイスラム教徒が礼拝をしている時、ケンタロウスが映写室に行き、映画の上映を始めたシーンが印象的だった。以前は映画館だったのに、モスクになってしまっていたんだと思った。Q&Aでも「映画館が現在はイスラム教の礼拝所になっていましたが、キルギスではイスラム教徒が映画を排斥したのでしょうか?」という質問が出て、監督は「そうです。旧ソビエト時代には、いろいろな村に映画を上映する場所がありましたが、ソビエト時代が終わると、映画は大きな街の映画館でしか上映されなくなりました。これは私の村で実際に起こったことで、映画を上映していた場所がモスクになったんです。私の村だけでなくあちこちでそういうことがありました。もう一つはイスラム教徒の人々は文化をこんな風に扱っているというのを示すために描いたのです」と監督は語っていたけど、監督の映画への思いも込められていたと思った。
監督は「本作は何々に反対という映画ではありません。反イスラム教の映画ではないんです」と言っていたけど、ところどころにイスラム教の押し付けに対する抵抗的なことがあったと思う。シャーマン的な存在も出てきたし、女性が何か意見を言った時に、イスラム教の導師のような人が「女が意見を言うな」と言ったら、そこにいた男の人が「キルギスでは自治を得る戦いで女性も戦った。意見を言う権利がある」というようなことを言うシーンがあった。これは、とても大きな抵抗の意志だと思った。そして最後に「キルギスの女性はヘジャブを強制されることはありません。女性議員もいます」と語っていた。
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You Tube 『馬を放つ』アクタン・アリム・クバト監督Q&A
https://www.youtube.com/watch?v=MkjYr1iyi7g


『とんぼの眼』Dragonfly Eyes / 蜻蛉之眼 監督:シュー・ビン
中国 / 2017 / 82分 / 監督:シュー・ビン(XU Bing)

監視カメラや車載カメラの映像素材を使って作った作品だという。ストーリーのために撮った映像はなく、監視カメラの映像素材を繋ぎ合わせて作ったフィクションというから驚き。トンボの眼は20000くらいの複眼から成っているという。この作品は監視カメラや車載カメラの映像をトンボの眼の複眼になぞらえて、それらから拾い集めた11,000もの映像素材を繋ぎ合わせたという。
「尼僧になる修行をやめ、俗世間に戻った若い女性チンティン。やがて彼女を一方的に愛していた若者クーファンはインターネットの動画サイトで活躍するアイドルがチンティンなのではないかと思い始める……」と、フィルメックスの作品詳細に書かれているように、継ぎ接ぎの映像なのに、ストーリーが作り出されているから不思議。
先にストーリーがあって、それに合う素材を見つけ出したのか、それとも先に映像があって、それに合わせてストーリーを作っていったのかですが、上映後のQ&Aでの監督の話では、「先に簡単な脚本があって、でもそれに合う素材のあるなしで、脚本の変更が余儀なくされ、素材が見つからないと脚本を変更し、それにあう映像を探すという作業を繰り返していった」とのこと。
こういう形でストーリーがあるような作品ができあがることは面白い試みとは思ったけど、インターネットで監視カメラの映像を見ることができるということに驚いたし、しかもそれをダウンロードまでできて、映画までできてしまうということに驚愕してしまった。プライバシーも何もあったものではないよね。ちなみに日本でも、そういう監視映像をネットで見ることができたりするのかな? もしそうなら、それは監視社会の始まりかもしれないと疑ってしまう。

You Tube 『とんぼの眼』シュー・ビン監督Q&A
https://www.youtube.com/watch?v=_e7SPB_0NBs





posted by akemi at 22:41| Comment(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月10日

12/16公開『Mr. Long/ミスター・ロン』 東京国際映画祭でのチャン・チェン&SABU監督トークイベント

『Mr. Long/ミスター・ロン』が、12月16日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開されるのにあわせ、第30回東京国際映画祭の折に行われたトークイベントの模様をお届けします。(映画祭の会期中、力尽きて報告できないまま、今に至る・・・です!)
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特別招待作品として上映された10月27日、上映を前に六本木ヒルズアリーナの舞台に主演のチャン・チェンとSABU監督の登壇するイベントが開かれました。
誰でも入場できるアリーナの舞台前には、大勢のファンが駆けつけました。

アリーナの大きなスクリーンに映し出される予告映像。
台湾の腕利きの殺し屋ロンが、ワケあって日本の地方の町で台湾牛肉麺の屋台を開くという物語。
司会の伊藤さとりさんから、「劇中で呼ばれている“ロンちゃん”で呼び込みしてくださいね」との合図で、皆で「ロンちゃ〜ん!」と叫びます。
牛肉麺の屋台を引いて出てきたのは、ロンちゃんならぬ、三ちゃんの愛称で親しまれている三中元克。
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「太りすぎで、どうみても、ロンちゃんじゃないですよね」と伊藤さん。
めちゃくちゃ面白い映画なので、応援隊長を買って出たという三ちゃん。

今度こそ、ほんとにチャン・チェンを呼び込みます。SABU 監督と登壇するチャン・チェン。
「東京国際映画祭に来られて嬉しいです。この後の上映をぜひ楽しんでください」と挨拶。
SABU 監督は「大家好!」と中国語で挨拶。
続けて、「学生服みたいで、中2のよう!」とチャン・チェンをからかう監督。
「代わりに出てきて申し訳ありませんでした。カッコ良さが全然違う! ごめんなさい!」とひたすら謝る三ちゃん。そんな三ちゃんに、「可愛いですよ」と声をかけるチャン・チェンでした。
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左から三中元克、チャン・チェン、SABU監督

さて、ここから真面目に映画の話に。
MC:SABU 監督というと人気の監督。チャン・チェンさんとの出会いは?

監督:2005年のモントリオール国際映画祭で初めて出会いました。2年前(2015年)に、『天の茶助』の台湾公開のキャンペーンで台湾に行ったら、打ち上げに来てくれて、映画を撮ろうということになりました。

チャン・チェン:ずっとSABU監督のファンで、作品はすべて観てます。もっと監督のことを知りたいと思って話しかけました。思ったより寡黙な人でした。なので、撮り終っても、まだ聞きたいと思って聞けてないことがあるんです。

MC:何を聞きたいのでしょう?

チャン・チェン:監督のインスピレーションの強さに興味を持ってます。

監督:僕は寡黙なので・・・(と、笑う監督) 思い浮かんだことが降ってくる事も多いんです。特に、明大前から笹塚に向かう時によく降って来ました。

三中:牛肉麺、食べてみたいです。

チャン・チェン:今度!
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監督:ほんとにかっこいいんですよ。クールな殺し屋が似合うかなと。それが、人を喜ばせる道具になると面白いかなと。日本で形が変わっていって、文化の違いも描いてます。なにより泣けるんです。そこを言ってもらいたい。

三中:チャン・チェンさんは、ほんとにふだん料理するんですか?

チャン・チェン: たまに (と、日本語で)

三中:得意料理は?

チャン・チェン:牛肉麺

監督:この間、トン汁と言ってましたけど!

MC:昨年の9月から撮影スタートされました。六本木でも撮影されたとか。日本での撮影の思い出は?
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チャン・チェン:(笑って)東京の町はとても好き。プライベートでもよく来て散歩してます。初めて国際映画祭に参加したのも東京でした。15 歳のときで、『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991 年)で参加しました。

MC: 台湾でも撮影されてますが、どんなところが違いますか?

監督:違うというより、昔の日本のようなところもあって、スタッフとも親交が深まりました。

MC:裏話は?

監督:男前でスタッフが皆惚れてまして、撮り甲斐のある絵になる方。

MC:日本のスタッフと仕事していかがでしたか?

チャン・チェン:日本のスタッフの仕事はとてもよかったです。日本での撮影は初めてじゃなかったのですが、仕事を分担されていて、すんなりと撮影に入れました。日本のクルーはとてもプロフェッショナル。スタッフの努力で完成されるもの。スタッフに皆さんに感謝したいです。

MC:監督からご覧になって、子役の男の子バイ・ルンイン君との関係はいかがでしたか?

監督:あまり覚えてないんですけど・・・ いい感じでしたよ。

チャン・チェン:バイ・ルンインの日本語は僕より上手でした。とてもすごい子だなと。感情豊かな子です。眠いと怒る以外は、とてもよかったです。

監督:普通、俳優は子どもの頭をなでたりするけど、1回、突き飛ばして泣かしてました。それくらい本気!

三中:陶芸をしていましたが・・・

チャン・チェン:台湾で子どもの頃やってました。

三中:映画に出たことないので次回出させてもらえますか?

チャン・チェン:この映画がヒットして、Part2が出来たら!

監督:はい、大丈夫ですよ!

MC:最後にひとことお願いします!

チャン:チェン:僕の宝物。とにかく名作です。

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このトークを聞いただけでは、どんな映画かあまりよくわからなかったのですが、その後、観てみたら、確かにクールな殺し屋がとてもよく似合うチャン・チェン。ワケあって日本の地方の町で、身を潜めるようになってからは、言葉が通じないから、自然、寡黙になるのですが、なんとも可笑しい雰囲気をかもしだしています。

作品の内容はこちらで



posted by sakiko at 20:51| Comment(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする