6月20日(日)10時半からの『食の安全を守る人々』完成披露プレミア上映会へ。
最終試写に伺えなくて、公開されたら・・・と思っていたのですが、上映後に関係者のトークもあるとの案内をいただいたので、いそいそと出かけてきました。
『食の安全を守る人々』
種子法廃止、種苗法の改定、ラウンドアップ規制緩和、そして表記無しのゲノム編集食品流通への動き・・・ 日本の農と食にこれまで以上の危機が押し寄せている。そんな中、本作は、日本で、海外で農と食の持続可能な未来図を描く人たちを追ったドキュメンタリー。
公式サイト:https://kiroku-bito.com/shoku-anzen
★2021年7月2日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町およびアップリンク吉祥寺にて公開
上映後、監督・撮影・編集を務めた原村政樹氏(写真右)と、プロデューサーの山田正彦氏(写真左)のトークが行われました。
食の安全が心配になる現状をずっしり感じた映画でしたが、お二人から「未来に希望を持って貰えるような映画を心掛けた」との言葉がありました。
食の安全を考えて実行する人たちがいる限り、未来は明るいと思いました。トークの模様は、別途お届けします。
会場が大井町だったので、キネカ大森でインド映画と思ったら、観たかった『グレート・インディアン・キッチン』の上映は、この日はなく、セシリア・チャン主演の香港映画『忘れえぬ想い』にしようかなと思ったのですが、久しぶりにもう一度観たいというワケでもなかったので、この間、満席で観られなかった『クルエラ』にしようと、新宿シネマカリテのサイトを見てみました。
上映中の映画の中に『田舎司祭の日記』がありました。チラシを見て、すごくそそられた映画です。14:15からという開始時間もばっちり! こちらに決定。
(20日の夕方、山手線が4時間にわたって止まるというアクシデントがあり、大森に行っていたら帰りが大変だったかも)
『田舎司祭の日記 4Kデジタル・リマスター版』
(シネマカリテでは、2Kで上映)
原題:Journal d'un cure de campagne
監督:ロベール・ブレッソン
出演:クロード・レデュ,アルマン・ギベール,ジャン・リビエール,ニコル・ラドラミル
フランス/1951年/115分
製作から70年を経て、劇場初公開!
劇場の入口で、B4版の作品紹介の詳細が書かれたものをいただきました。
一般上映では珍しいですね。
お陰で、作品内容が書けます♪
北フランスの寒村に赴任してきた神学校を卒業したばかりの若い司祭。体調はすぐれないが、気力だけはあり、住民たちの悩みを聞き善行を行おうとするが、苦しい生活を送る村の人たちには、経験の浅い司祭を暖かく迎える余裕はない。
それでも、一日が終わると、ペンを執り、その日の出来事を記すのが日課だ。
楽しみは、子どもたち相手の教義問答の授業
青少年のスポーツクラブ設立支援を依頼に領主のもとを訪れ、幼い息子を亡くし沈んでいる夫人と出会う。夫が娘の家庭教師と浮気していることも、夫人を悩ませていることを知る。そんな夫人に成す術もない司祭。
領主の娘も父親の不貞を知って、司祭に激しく不満をぶちまける。
数日後、夫人から、司祭によって気持ちが救われたとの手紙が届き、喜んだのも束の間、夫人は狭心症で亡くなってしまう。
司祭自身の体調はますます悪くなり、赤ワインにパンを浸して食べることしかできなくなる。それを酒浸りになっていると誤解されてしまう。
血を吐き道で倒れた司祭は、医者に診てもらうため町に出る。
町で、かつて神学校で共に学んだが、今は神の道を捨て世俗的な暮らしをしている仲間に会う。彼の体力はもう限界を超えていた・・・
最後、Fin と出て終わり!
昔の映画は、そうだった! と懐かしく思い出しました。
実は、チケットをネットで購入する前に、「シネマカリテ スクリーン2の見やすい席」を検索したときに、「正面に向かって左奥に扉があるので、左の通路側はエンドロールの途中で出ていく人がいると落ち着かない」とあって、右の通路側を取ったのです。
(ヒューマントラスト有楽町で苦い思いをしたので! →その時のスタッフ日記)
今回、あっけなく終わったので、まったく杞憂に終わりました。
長ったらしいエンドロールが続くより、こういう終わり方もいいものだなぁ〜と思いました。
なんとも寂しく息苦しい若い司祭の人生が、あとあとまで心に残っています。
味わい深い映画でした。
2021年06月27日
2021年04月11日
『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』にリーダーのあるべき姿を思う。(咲)
1年1回発行のシネマジャーナル本誌104号の入稿日が間近に迫っているのですが、4月6日(火)、1時からロシアのアニメ『クー!キン・ザ・ザ』の最終試写があって渋谷まで出かけてきました。
2016年に観た実写版『不思議惑星キン・ザ・ザ デジタル・リマスター版』が何とも不思議な世界で面白かったので、これは絶対見逃せないという次第でした。
実写版の方がインパクトありましたが、アニメも負けず劣らず脱力系の作品で楽しみました。
この日の試写予定は、これ1本。渋谷まで行くので、何か観るべき映画はないかと検索したら、ありました!
しかも、映画美学校試写室での『クー!キン・ザ・ザ』が終わってから8分後から、同じ建物3階のユーロスペースでの上映。
という次第で、『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』を観てきました。
これは見逃してはいけない映画でした。
『クー!キン・ザ・ザ』の試写で会ったK氏に、このあと、この映画を観ると言ったら、「順序が逆の方がいいんじゃないの?」と言われましたが、いえいえ、逆だったら、『クー!キン・ザ・ザ』を観ることができないほど衝撃を受けました。
『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』
監督:佐古忠彦 2021年/DCP/5.1ch/118分
公式サイト:http://ikiro.arc-films.co.jp/
1945年(昭和20年)1月12日、大阪府内政部長(大阪府のナンバー2)だった島田叡氏は、沖縄県知事の辞令を受け取ります。前年の10月10日、米軍の大空襲で那覇は壊滅的な打撃を受け、前任の県知事は東京に行ったまま帰任せず空席になっていたのです。選挙で選ぶ今と違って、県知事は内務省官僚が任命されていたと知りました。
当然のことながら、家族全員から反対されます。
「これが若い者ならば、赤紙1枚で否応なしに行かなければならないのではないか。それを俺が固辞できる自由をいいことに断ったとなれば、もう卑怯者として外も歩けなくなる。俺は死にとうないから誰かが行って死んでくれとは、よう言わん」と決意を変えず、1945年1月31日、佐世保経由、沖縄へ。
着任してすぐ、県民の食糧不足を補うため、台湾に交渉して米を運んで貰います。沖縄の隅々まで行き渡る様、手配しますが、軍に横取りされたケースも多々あったようです。
沖縄南部の人たちを疎開させなければいけない戦況とわかっているのに、行政が滞っていた為に疎開できないでいたことにも心を痛めたようです。
佐古忠彦監督は、米軍上陸必至の死地であることを悟って県知事として赴任し、60万県民の命を委ねられた内務官僚・島田叡の人物像を、映像も音声も存在しない中で、当時を知る人々の証言で浮き彫りにしています。
玉砕しろと日本軍から散々言われてきた沖縄の人たちが、島田叡氏の「命を大事にしなさい」という言葉にびっくりしながらも、お陰で生き延びたと証言していました。
島田叡氏は、神戸市須磨の生まれで、父が長く勤務した兵庫高校の前身、神戸二中の卒業生でした。17歳で志願して、沖縄戦を経験した方が、やはり兵庫県出身で、島田叡氏は同郷であることを喜び、煙草を1本差しだそうとして、「未成年だね」と、紙に包んだ黒砂糖をくださったそうです。無事故郷に帰れよという思いが籠っていたのではないでしょうか。
家に帰って父に話したら、兵庫高校の正門近くに島田叡氏の銅像があって、有名な人物だと知っていたけれど、詳しい功績は知らなかったとのこと。以前は、校庭の奥にあるプールのそばにあった銅像が、校舎の建て替えの時に正門のそばに格上げになったことも教えてくれました。
島田叡氏は、沖縄戦組織的戦闘終結直後、摩文仁の軍医部壕を出てから消息を絶たれていて、どんな最期を迎えられたのかは不明です。
摩文仁の丘にある慰霊塔「島守の塔」に、島田叡の名が刻まれていて、本土出身の内務省の官僚が、個人名まで記され沖縄で慰霊の対象となっていることに、沖縄の人たちの思いを感じます。
映画は、日本軍が沖縄を捨て石にしたことも、またまたずっしり教えてくれました。
権力を持つ者のあるべき姿を考えさせられたドキュメンタリーでした。
生き証人のいるうちに映画を作ってくださったことに感謝です。
2016年に観た実写版『不思議惑星キン・ザ・ザ デジタル・リマスター版』が何とも不思議な世界で面白かったので、これは絶対見逃せないという次第でした。
実写版の方がインパクトありましたが、アニメも負けず劣らず脱力系の作品で楽しみました。
この日の試写予定は、これ1本。渋谷まで行くので、何か観るべき映画はないかと検索したら、ありました!
しかも、映画美学校試写室での『クー!キン・ザ・ザ』が終わってから8分後から、同じ建物3階のユーロスペースでの上映。
という次第で、『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』を観てきました。
これは見逃してはいけない映画でした。
『クー!キン・ザ・ザ』の試写で会ったK氏に、このあと、この映画を観ると言ったら、「順序が逆の方がいいんじゃないの?」と言われましたが、いえいえ、逆だったら、『クー!キン・ザ・ザ』を観ることができないほど衝撃を受けました。
『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』
監督:佐古忠彦 2021年/DCP/5.1ch/118分
公式サイト:http://ikiro.arc-films.co.jp/
1945年(昭和20年)1月12日、大阪府内政部長(大阪府のナンバー2)だった島田叡氏は、沖縄県知事の辞令を受け取ります。前年の10月10日、米軍の大空襲で那覇は壊滅的な打撃を受け、前任の県知事は東京に行ったまま帰任せず空席になっていたのです。選挙で選ぶ今と違って、県知事は内務省官僚が任命されていたと知りました。
当然のことながら、家族全員から反対されます。
「これが若い者ならば、赤紙1枚で否応なしに行かなければならないのではないか。それを俺が固辞できる自由をいいことに断ったとなれば、もう卑怯者として外も歩けなくなる。俺は死にとうないから誰かが行って死んでくれとは、よう言わん」と決意を変えず、1945年1月31日、佐世保経由、沖縄へ。
着任してすぐ、県民の食糧不足を補うため、台湾に交渉して米を運んで貰います。沖縄の隅々まで行き渡る様、手配しますが、軍に横取りされたケースも多々あったようです。
沖縄南部の人たちを疎開させなければいけない戦況とわかっているのに、行政が滞っていた為に疎開できないでいたことにも心を痛めたようです。
佐古忠彦監督は、米軍上陸必至の死地であることを悟って県知事として赴任し、60万県民の命を委ねられた内務官僚・島田叡の人物像を、映像も音声も存在しない中で、当時を知る人々の証言で浮き彫りにしています。
玉砕しろと日本軍から散々言われてきた沖縄の人たちが、島田叡氏の「命を大事にしなさい」という言葉にびっくりしながらも、お陰で生き延びたと証言していました。
島田叡氏は、神戸市須磨の生まれで、父が長く勤務した兵庫高校の前身、神戸二中の卒業生でした。17歳で志願して、沖縄戦を経験した方が、やはり兵庫県出身で、島田叡氏は同郷であることを喜び、煙草を1本差しだそうとして、「未成年だね」と、紙に包んだ黒砂糖をくださったそうです。無事故郷に帰れよという思いが籠っていたのではないでしょうか。
家に帰って父に話したら、兵庫高校の正門近くに島田叡氏の銅像があって、有名な人物だと知っていたけれど、詳しい功績は知らなかったとのこと。以前は、校庭の奥にあるプールのそばにあった銅像が、校舎の建て替えの時に正門のそばに格上げになったことも教えてくれました。
島田叡氏は、沖縄戦組織的戦闘終結直後、摩文仁の軍医部壕を出てから消息を絶たれていて、どんな最期を迎えられたのかは不明です。
摩文仁の丘にある慰霊塔「島守の塔」に、島田叡の名が刻まれていて、本土出身の内務省の官僚が、個人名まで記され沖縄で慰霊の対象となっていることに、沖縄の人たちの思いを感じます。
映画は、日本軍が沖縄を捨て石にしたことも、またまたずっしり教えてくれました。
権力を持つ者のあるべき姿を考えさせられたドキュメンタリーでした。
生き証人のいるうちに映画を作ってくださったことに感謝です。
2021年02月27日
オンライン試写(白)
コロナ禍のため、試写室が閉まっていたのは去年のこと。緊急事態宣言が解かれてからは、入場前に検温、アルコール消毒をし、座席は1つ空きにして、と配給・宣伝さんも苦慮しながらぼちぼちと開いてきました。
一方配信やオンラインでの試写が増えて、きづけばコロナ前の1〜2割減くらいの数を観ていました。オンライン試写は日時指定のもありますが、自宅で好きな時間に見られるので、日時がバッティングしたり移動したりの問題がありません。それで数こなせます。
お客様にしてみれば、管理に心砕いている劇場はともかく、そこに行くまでの混みあった交通機関が心配な人や、今どこかで感染して家に持ち込んだら大変という気持ちもありますよね。
作品紹介に劇場で観てくださいと書くのが毎回ジレンマです。ときどき自分も劇場に行って、鑑賞&現況確認。空席が多いと運営は大丈夫か心配になります。昨年スクリーン数も上映本数もぐんと減りました。こちら。
ワクチン接種が始まっています。これが功を奏して収まってくれますように、と普段はしない神頼み。図書館では菜の花が、京橋の試写室の近くでは河津桜が咲いていました。春はちゃんと来ています。みなさまお大事に。(白)
2021年01月24日
映画に出てくるお弁当(暁)
出てくる映画
『燕 Yan』『フォーの味』『461個のおべんとう』『さくら』『チャンシルさんには福が多いね』
●その国独自の食文化や人間関係を表した弁当
『燕 Yan』
2020大阪アジアン映画祭 一般公開
お弁当を作った母と息子の思いとのギャップ
監督:今村圭佑
脚本:鷲頭紀子
出演:水間ロン(早川燕)、山中崇(林龍心)、一青窈(母)、テイ龍進(龍心の友人)、平田満(父)
2019年/日本
2020年6月5日から全国公開
『フォーの味』
2020大阪アジアン映画祭
ベトナム人の父が作ったお弁当とポーランド人女性とのハーフの娘の思いのギャップ
監督:ボブリックまりこ
出演
タン・ロン・ドー、レナ・グエン、アレクサンドラ・ドマニスカ、ボグスワヴァ ・パヴェレツ、ザー・カイ・トン
2019年/ドイツ・ポーランド
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/c11.html
お弁当が出てくる映画はけっこうあると思うけど、去年(2020)ほどお弁当が出てくる作品を多く観た年はないかもしれない。あるいは認識したというべきか。お弁当そのものがテーマの作品もあるけど、多くは映画のちょっとしたエピソード、調味料的に出てくる。これまでもいろいろな映画の中に弁当は出てきていたけど、そんなに認識していなかったのかもしれないが、去年は、映画の中のお弁当に意識が行っていたのかも。きっかけは、3月に大阪アジアン映画祭で観た『燕 Yan』と『フォーの味』。この中で親と子供の思いの隔たり、アイデンティティをあらわすのに弁当が使われていて印象的だった。『燕 Yan』はお母さんが台湾人(一青窈が演じていた)で、日本人の夫(平田満)と結婚。日本で生まれた息子燕(Yan/イエン、次男:水間ロン)の母との葛藤が描かれていた。母との幼い頃の記憶。たぶん小学校1,2年生くらいまで一緒暮らしていたけど夫と別れ、長男(山中崇)を連れて台湾に帰ってしまった。その母との思い出のシーンの中にお弁当がでてきた。周りの日本人の母親が作ったお弁当はカラフルで、自分の母親が作ったお弁当は全体的に茶色が多い弁当(魯肉飯/ルーローファンなど)で、みんなと違うのがなんだか恥ずかしく、学校でお弁当を開けるのがいやだったというシーンで出てきた。
そして、『燕 Yan』に続いて観たのが『フォーの味』(ボブリックまりこ監督)。ポーランドが舞台の映画だったけど、日本人の監督が作った作品。ベトナム難民でポーランドに渡った人が結構いて、ベトナム人コミュニティがポーランドにもあることを知った。そのベトナムからポーランドに渡った男性(ベトナム料理店の雇われシェフ)とポーランドの女性が結婚し女の子が生まれたけど、母親は女の子が学校に入る前に死んでしまい、団地に住む父と娘の生活が描かれていた。父は小学校に通い始めた娘のために食事を作り、スカートのアイロンかけをしたりとかいがしく面倒を見て、お弁当も作ってくれるのだけど、そのお弁当がご飯(お米を使った弁当)ばかり。学校ではほとんどの生徒がパン食(ポーランドでもお弁当があることを知った)。娘はみんなと同じようなお弁当だといいのにと思う。そんな父と娘の葛藤が描かれていた。この『燕 Yan』と『フォーの味』に出てくる子供たちは、住んでいる国でない国出身の人が作るお弁当が周りの同級生たちと自分のお弁当が違うことで仲間はずれになるのを嫌がっていた。いろいろな国との交流出会いの中で、他国の人との結婚でハーフの子も増えているが、その中で文化習慣の違いによる子供の葛藤があることが描かれていた。
スタッフ日記「第15回大阪アジアン映画祭へ行ってきました」参照
http://cinemajournal.seesaa.net/article/474046141.html
●お弁当の存在感を表した映画
『461個のおべんとう』一般公開
監督:兼重淳
原作:渡辺俊美
脚本:清水匡、兼重淳
主題歌:井ノ原快彦、道枝駿佑
出演:井ノ原快彦(鈴本一樹)、道枝駿佑(鈴本虹輝)
2019年/日本 2020年11月6日(金)公開
公式HP
弁当そのものが重要な意味を持ち、タイトルにもなっている『461個のおべんとう』。井ノ原快彦が弁当を作るお父さん役で出ているというのと、お父さんが高校生になった息子に3年間、お弁当を作った話ということを知り、面白そうと観にいった。実話を元に作った作品とのこと。
ミュージシャンのお父さんと高校生の息子のお弁当物語。離婚して男手ひとつで息子を育てている父と、高校受験に失敗して一浪して高校に入った息子。中学と違って給食がない。虹輝の希望は「お父さんのお弁当」。父一樹は「卒業まで3年間、毎日お弁当を作ること」、虹輝は「一日も休まず高校に行くこと」を約束する。以来、地方に行って遅く帰っても、二日酔いでも、井ノ原快彦扮する父親は、朝早く起きて毎日お弁当を作り続けた。同じものが続かないよう工夫し、作った様々な卵焼きは見事だった。私はワンパターンの卵焼きしかできないから、真似してみたいと思った。
1歳下の同級生の中で、虹輝は最初孤独だったが、お弁当のおかげで、同級生たちと仲間になっていく姿を見てほっとした。なにがきっかけになるかわからない。ここでは『燕 Yan』や『フォーの味』と違って、お弁当は仲間はずれではなく、仲間になるものとして出てきた。私の学生時代はどうだったろうか。もう50年以上も前のことでよく覚えていないが、私の学生時代はまだ給食が完全ではなく年下の世代からだった。小学6年生の数ヶ月だけ給食だった。なので小学校から高校まで給食はなかったのだけど、中学まではお弁当を持っていった気がする。でも、机を囲んでお弁当を食べたという記憶はないので、きっと授業の時の机の並びで、それぞれ黙々と食べていた気がする。それに物が豊富にあった時代でないから、みんなで一緒にだとちょっと恥ずかしかったような記憶がある。それに、今みたいなたくさんのおかずとカラフルなお弁当は、そんなになかったと思う。それにしても、一樹お父さんの作る弁当はすごい! 卵のバリエーションが半端ない。ちょっとした工夫でバリエーション豊富になるんだと思った。そして人間関係を豊かにしてくれるお弁当に感謝。
●大事な一場面としてお弁当が出てくる映画
『さくら』 一般公開
恋人が兄に作ったお弁当
監督:矢崎仁司
原作:西加奈子「さくら」(小学館刊)
脚本:朝西真砂
出演:北村匠海(長谷川薫)、小松菜奈(妹:美貴)、吉沢亮(兄:一)、寺島しのぶ(母:つぼみ)、永瀬正敏(父:昭夫)
2019年/日本/配給:松竹
c2020「さくら」製作委員会
公式HP
2020年11月13日(金)公開
『チャンシルさんには福が多いね』
2020大阪アジアン映画祭 一般公開
チャンシルさんが、恋した?フランス語講師(韓国人)に作ったお弁当
監督・脚本:キム・チョヒ
製作:ソ・ドンヒョン キム・ソンウン
カン・マルグム(イ・チャンシル)、ユン・ヨジュン(ポクシル)、キム・ヨンミン(レスリー・チャンらしき男)、ユン・スンア(ソフィ)
2019年製作/96分/韓国
劇場公開 2021年1月8日 公式HP
『さくら』と『チャンシルさんには福が多いね』では、お弁当が出てくるシーンは一瞬だったけど、出てくる場面は少なくても、映画の中で大きな役割をしていた。『さくら』では、吉沢亮演じる兄、一の恋人が励ましのためにお作ったお弁当。何気ないシーンだったけど、この場面があるだけで悲しさが倍増する。『チャンシルさんには福が多いね』では、チャンシルさんがバイト先で知り合ったフランス語講師と仲良くなり、「彼は私に気がある?」と勘違いして、彼に恋心を持ってしまったがゆえに作ったお弁当。お弁当を持って彼がいる公民館?に行って、一緒にお弁当を食べるシーンはちょっとユーモラス。ここに彼女のユニークな側面が出てきた。
それにしても「日本のお弁当文化」、世界で注目されていますね。NHKの「BENTO」という番組があり世界中の弁当が紹介されていますが、「BENTO」とタイトルがついているように、世界のあちこちで「BENTO」と言われているようです。各家庭のお弁当も魅力ですが、昔は弁当が旅の楽しみでした。最近は旅に出られないので、京橋での試写の帰りに東京駅構内にある「祭」という日本全国の弁当を集めたショップに寄るのが楽しみです。その地方に行かなくてもどんなお弁当があるのかわかります。そして日本全国のお弁当をそこで買うことができます(暁)。
『燕 Yan』『フォーの味』『461個のおべんとう』『さくら』『チャンシルさんには福が多いね』
●その国独自の食文化や人間関係を表した弁当
『燕 Yan』
2020大阪アジアン映画祭 一般公開
お弁当を作った母と息子の思いとのギャップ
監督:今村圭佑
脚本:鷲頭紀子
出演:水間ロン(早川燕)、山中崇(林龍心)、一青窈(母)、テイ龍進(龍心の友人)、平田満(父)
2019年/日本
2020年6月5日から全国公開
『フォーの味』
2020大阪アジアン映画祭
ベトナム人の父が作ったお弁当とポーランド人女性とのハーフの娘の思いのギャップ
監督:ボブリックまりこ
出演
タン・ロン・ドー、レナ・グエン、アレクサンドラ・ドマニスカ、ボグスワヴァ ・パヴェレツ、ザー・カイ・トン
2019年/ドイツ・ポーランド
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/c11.html
お弁当が出てくる映画はけっこうあると思うけど、去年(2020)ほどお弁当が出てくる作品を多く観た年はないかもしれない。あるいは認識したというべきか。お弁当そのものがテーマの作品もあるけど、多くは映画のちょっとしたエピソード、調味料的に出てくる。これまでもいろいろな映画の中に弁当は出てきていたけど、そんなに認識していなかったのかもしれないが、去年は、映画の中のお弁当に意識が行っていたのかも。きっかけは、3月に大阪アジアン映画祭で観た『燕 Yan』と『フォーの味』。この中で親と子供の思いの隔たり、アイデンティティをあらわすのに弁当が使われていて印象的だった。『燕 Yan』はお母さんが台湾人(一青窈が演じていた)で、日本人の夫(平田満)と結婚。日本で生まれた息子燕(Yan/イエン、次男:水間ロン)の母との葛藤が描かれていた。母との幼い頃の記憶。たぶん小学校1,2年生くらいまで一緒暮らしていたけど夫と別れ、長男(山中崇)を連れて台湾に帰ってしまった。その母との思い出のシーンの中にお弁当がでてきた。周りの日本人の母親が作ったお弁当はカラフルで、自分の母親が作ったお弁当は全体的に茶色が多い弁当(魯肉飯/ルーローファンなど)で、みんなと違うのがなんだか恥ずかしく、学校でお弁当を開けるのがいやだったというシーンで出てきた。
そして、『燕 Yan』に続いて観たのが『フォーの味』(ボブリックまりこ監督)。ポーランドが舞台の映画だったけど、日本人の監督が作った作品。ベトナム難民でポーランドに渡った人が結構いて、ベトナム人コミュニティがポーランドにもあることを知った。そのベトナムからポーランドに渡った男性(ベトナム料理店の雇われシェフ)とポーランドの女性が結婚し女の子が生まれたけど、母親は女の子が学校に入る前に死んでしまい、団地に住む父と娘の生活が描かれていた。父は小学校に通い始めた娘のために食事を作り、スカートのアイロンかけをしたりとかいがしく面倒を見て、お弁当も作ってくれるのだけど、そのお弁当がご飯(お米を使った弁当)ばかり。学校ではほとんどの生徒がパン食(ポーランドでもお弁当があることを知った)。娘はみんなと同じようなお弁当だといいのにと思う。そんな父と娘の葛藤が描かれていた。この『燕 Yan』と『フォーの味』に出てくる子供たちは、住んでいる国でない国出身の人が作るお弁当が周りの同級生たちと自分のお弁当が違うことで仲間はずれになるのを嫌がっていた。いろいろな国との交流出会いの中で、他国の人との結婚でハーフの子も増えているが、その中で文化習慣の違いによる子供の葛藤があることが描かれていた。
スタッフ日記「第15回大阪アジアン映画祭へ行ってきました」参照
http://cinemajournal.seesaa.net/article/474046141.html
●お弁当の存在感を表した映画
『461個のおべんとう』一般公開
監督:兼重淳
原作:渡辺俊美
脚本:清水匡、兼重淳
主題歌:井ノ原快彦、道枝駿佑
出演:井ノ原快彦(鈴本一樹)、道枝駿佑(鈴本虹輝)
2019年/日本 2020年11月6日(金)公開
公式HP
弁当そのものが重要な意味を持ち、タイトルにもなっている『461個のおべんとう』。井ノ原快彦が弁当を作るお父さん役で出ているというのと、お父さんが高校生になった息子に3年間、お弁当を作った話ということを知り、面白そうと観にいった。実話を元に作った作品とのこと。
ミュージシャンのお父さんと高校生の息子のお弁当物語。離婚して男手ひとつで息子を育てている父と、高校受験に失敗して一浪して高校に入った息子。中学と違って給食がない。虹輝の希望は「お父さんのお弁当」。父一樹は「卒業まで3年間、毎日お弁当を作ること」、虹輝は「一日も休まず高校に行くこと」を約束する。以来、地方に行って遅く帰っても、二日酔いでも、井ノ原快彦扮する父親は、朝早く起きて毎日お弁当を作り続けた。同じものが続かないよう工夫し、作った様々な卵焼きは見事だった。私はワンパターンの卵焼きしかできないから、真似してみたいと思った。
1歳下の同級生の中で、虹輝は最初孤独だったが、お弁当のおかげで、同級生たちと仲間になっていく姿を見てほっとした。なにがきっかけになるかわからない。ここでは『燕 Yan』や『フォーの味』と違って、お弁当は仲間はずれではなく、仲間になるものとして出てきた。私の学生時代はどうだったろうか。もう50年以上も前のことでよく覚えていないが、私の学生時代はまだ給食が完全ではなく年下の世代からだった。小学6年生の数ヶ月だけ給食だった。なので小学校から高校まで給食はなかったのだけど、中学まではお弁当を持っていった気がする。でも、机を囲んでお弁当を食べたという記憶はないので、きっと授業の時の机の並びで、それぞれ黙々と食べていた気がする。それに物が豊富にあった時代でないから、みんなで一緒にだとちょっと恥ずかしかったような記憶がある。それに、今みたいなたくさんのおかずとカラフルなお弁当は、そんなになかったと思う。それにしても、一樹お父さんの作る弁当はすごい! 卵のバリエーションが半端ない。ちょっとした工夫でバリエーション豊富になるんだと思った。そして人間関係を豊かにしてくれるお弁当に感謝。
●大事な一場面としてお弁当が出てくる映画
『さくら』 一般公開
恋人が兄に作ったお弁当
監督:矢崎仁司
原作:西加奈子「さくら」(小学館刊)
脚本:朝西真砂
出演:北村匠海(長谷川薫)、小松菜奈(妹:美貴)、吉沢亮(兄:一)、寺島しのぶ(母:つぼみ)、永瀬正敏(父:昭夫)
2019年/日本/配給:松竹
c2020「さくら」製作委員会
公式HP
2020年11月13日(金)公開
『チャンシルさんには福が多いね』
2020大阪アジアン映画祭 一般公開
チャンシルさんが、恋した?フランス語講師(韓国人)に作ったお弁当
監督・脚本:キム・チョヒ
製作:ソ・ドンヒョン キム・ソンウン
カン・マルグム(イ・チャンシル)、ユン・ヨジュン(ポクシル)、キム・ヨンミン(レスリー・チャンらしき男)、ユン・スンア(ソフィ)
2019年製作/96分/韓国
劇場公開 2021年1月8日 公式HP
『さくら』と『チャンシルさんには福が多いね』では、お弁当が出てくるシーンは一瞬だったけど、出てくる場面は少なくても、映画の中で大きな役割をしていた。『さくら』では、吉沢亮演じる兄、一の恋人が励ましのためにお作ったお弁当。何気ないシーンだったけど、この場面があるだけで悲しさが倍増する。『チャンシルさんには福が多いね』では、チャンシルさんがバイト先で知り合ったフランス語講師と仲良くなり、「彼は私に気がある?」と勘違いして、彼に恋心を持ってしまったがゆえに作ったお弁当。お弁当を持って彼がいる公民館?に行って、一緒にお弁当を食べるシーンはちょっとユーモラス。ここに彼女のユニークな側面が出てきた。
それにしても「日本のお弁当文化」、世界で注目されていますね。NHKの「BENTO」という番組があり世界中の弁当が紹介されていますが、「BENTO」とタイトルがついているように、世界のあちこちで「BENTO」と言われているようです。各家庭のお弁当も魅力ですが、昔は弁当が旅の楽しみでした。最近は旅に出られないので、京橋での試写の帰りに東京駅構内にある「祭」という日本全国の弁当を集めたショップに寄るのが楽しみです。その地方に行かなくてもどんなお弁当があるのかわかります。そして日本全国のお弁当をそこで買うことができます(暁)。
2020年10月17日
アイヌ工芸作品展とTIFFの上映作品など(白)
マリオン11階朝日ホールで21日まで。昨日観てきましたが、すばらしい手仕事でした。ちょうど刺繍を習っているという方ともお話しできて、良かった!撮影禁止なので、ほかの作品はこちらで。作ってみたいのは使えるバッグかな。マスクやハンカチに刺繍するならすぐできそう。
この後は15時半から渋谷で『佐々木、イン、マイマイン』試写。俳優の細川岳さんが自分の高校時代のヒーローを映画化したいと、内山拓也監督にもちかけて誕生したもう戻らない日々をつづった切なくなる青春映画。バカだなぁと笑いながら、また会いたくなる佐々木を細川岳さんが演じています。『蒲田行進曲』のヤスを演じた平田満さんを思い出しました。
11月27日公開ですが、TIFFのジャパンプレミアで11月3日と5日に上映されます。こちら。
ほかに『僕の帰る場所』の藤元監督の『海辺の彼女たち』がワールドフォーカス部門で11月1日と3日に上映。こちら。サンセバスチャン映画祭参加でしたね。
今回同時期になった、フィルメックスでは『かぞくへ』の春本雄二郎監督第2作『由宇子の天秤』がコンペに選出されています。日比谷シャンテにて11月1日上映。公開は来年。
今から時間のやりくりに頭が痛い。身体が二つほしいよ〜コピーロボットでも可。(白)
この後は15時半から渋谷で『佐々木、イン、マイマイン』試写。俳優の細川岳さんが自分の高校時代のヒーローを映画化したいと、内山拓也監督にもちかけて誕生したもう戻らない日々をつづった切なくなる青春映画。バカだなぁと笑いながら、また会いたくなる佐々木を細川岳さんが演じています。『蒲田行進曲』のヤスを演じた平田満さんを思い出しました。
11月27日公開ですが、TIFFのジャパンプレミアで11月3日と5日に上映されます。こちら。
(C)映画「佐々木、イン、マイマイン」
ほかに『僕の帰る場所』の藤元監督の『海辺の彼女たち』がワールドフォーカス部門で11月1日と3日に上映。こちら。サンセバスチャン映画祭参加でしたね。
(C)2020 E.x.N K.K.
今回同時期になった、フィルメックスでは『かぞくへ』の春本雄二郎監督第2作『由宇子の天秤』がコンペに選出されています。日比谷シャンテにて11月1日上映。公開は来年。
今から時間のやりくりに頭が痛い。身体が二つほしいよ〜コピーロボットでも可。(白)