インド映画通の友人から、ボリウッドの俳優スシャント・シン・ラージブートさん自殺という悲しいニュースが飛び込んできました。
(Yahoo newsなどでも報じられていました。気が付かなかった・・・)
主演作『きっと、また会える』の日本公開が、当初4月24日の予定だったのですが、新型コロナウィルスの影響で、8月21日(金)に先送りされています。
過去の日本公開作品では、『PK/ピーケイ』(2014)でパキスタン人留学生を演じていたのが印象に残っています。長身のイケメン♪ まだ34歳。いったい、なぜ?
自宅で亡くなっているのが見つかったのが、6月14日。前の週に、元マネージャーの女性ディシャ・サリアンさんが自殺し、それにショックを受け落ち込んでいたと報じられています。
友人からの続報で、自殺でなく、他殺じゃないかという説が浮上し、警察が調査に乗り出しているとのこと。
スシャントさんの彼女が、かなり年上の大物俳優と「関係」があって、その大物俳優が手を回して殺したのではないかという噂が出ているのだそうです。その大物俳優の娘は有名な女優。縁故主義のドンによる他殺説という次第。
親の七光りで、スター俳優の2世3世が早々に映画デビューする中で、スシャントさんはテレビドラマでの経験を積んでから初めて映画に出るまで苦労しているとのこと。
『きっと、また会える』で、ぜひ彼の演技にご注目ください。
『きっと、また会える』原題:Chhichhore
監督:ニテーシュ・ティワーリー(『ダンガル きっと、つよくなる』)
*物語*
アニルッド(通称アニ)の息子が受験に失敗して病院に運び込まれる。アニと息子を励まそうと、アニのボンベイ工科大学時代の寮の悪友たち7人が駆けつける。アニたちのいた4号寮は、建物もボロボロで、競技大会でもどの種目も最下位。他の寮からは負け犬と呼ばれていた。汚名を返上しようと団結して頑張ったエピソードを、息子に次々に聞かせる・・・
☆皆で馬鹿をやった1990年代の学生時代が、ほろ苦くもユーモア満載で語られます。
人生、失敗したっていいんだと勇気づけられます。
2019年製作/143分/G/インド
配給:ファインフィルムズ
公式サイト:http://www.finefilms.co.jp/chhichhore/
★2020年8月21日(金) 、シネマート新宿、シネマート心斎橋
◆インド映画『WAR ウォー』
スシャントさん自殺のニュースを聞いた翌日、試写で観たインド映画『WAR ウォー』が、どこか懐かしい香りのする『きっと、また会える』と対照的に、近未来的な雰囲気もあって、しかも主役二人がスターの2世でした。
国際的なイスラム過激派テロリストをめぐるスパイアクション。ポルトガル、イタリア、オーストラリア等々、海外ロケにもお金かけてます。
映画の詳細はいずれ紹介しますが、主役二人についてだけ、ここでご紹介。
リティク・ローシャン(カビール役)
父は1970&80年代の二枚目スターで、監督でもあるラーケーシュ・ローシャン。
タイガー・シュロフ(ハーリド・ラフマニ役)
父は1980・90年代のトップスターで、今も『チェイス!』(2013)や『サーホー』(2019)で渋い演技を見せているジャッキー・シュロフ。母も元女優で、現在はプロデューサー。
公式サイト:https://war-movie.jp/
★2020年7月17日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森ほか全国順次公開
2020年06月29日
2020年06月07日
1928年の映画『Shiraz』は、私の原点タージ・マハルがモチーフ (咲)
世界21の映画祭が参加して開催されているオンライン映画祭 「We Are One: A Global Film Festival」で上映されている『Shiraz: A Romance of India』のことを、facebookに大学の先輩、麻田豊氏や、イスラーム映画祭主宰の藤本高之さんが紹介していて、これは是非!と観てみました。
シーラーズといえば、イランの古都が真っ先に思い浮かんだのですが、そうではなくて、主人公の陶工の名前でした。物語はタージ・マハルにまつわるものとあって、俄然、惹かれました。(理由は後ほど♪)
『Shiraz: A Romance of India』

製作:Himansu Rai
監督:Franz Osten,
1928年にインドで撮影された無声映画をthe British Film Instituteがデジタル修復し、Anoushka Shankarによる音楽をつけたもの。音楽がとてもマッチしていて素晴らしいです。
https://m.youtube.com/watch?v=dOSvq8EncXg&feature=youtu.be
*物語*
沙漠をいく駱駝や馬の隊列。
(冒頭のこの場面で、ラージャスターンのタール沙漠を駱駝に揺られて散策したことを思い出しました。なお、字幕には、the Persian desertとありました。)
隊列が襲われて、女性が亡くなり、幼い少女が取り残されます。沙漠に住む陶工ハサンは少女を連れ帰り、サリーマと名付けて、息子シーラーズと共に育てます。兄妹のように育った二人ですが、ほのかな恋心が。ある日、サリーマは奴隷商人に連れ去られ、奴隷市場で売り飛ばされます。売られた先はムガル王朝の宮廷。美しいサリーマは、フッラム皇子(後のシャージャハーン)に見初められます。
フッラム皇子との結婚を望んでいたダリアが嫉妬して、サリーマとシーラーズの密会を画策し、フッラム皇子に目撃させます。フッラム皇子は怒って、シーラーズを象の足で踏ませる死刑を命じます。寸でのところで、ダリアの仕業だと判明し、シーラーズは命拾いします。 皇子のところに連れてこられたシーラーズを前に、サリーマは皇子に「シーラーズのことは兄として慕っていただけ、愛するのはあなた」と答えます。シーラーズは、サリーマが奴隷商人に連れ去られた時に残していったお守りを差し出します。そのお守りは、皇后ヌール・ジャハーンが姪のアルジュマンド皇女に譲ったもので、サリーマは皇女の娘だと判明します。
フッラム皇子はサリーマにムムターズ・マハル(ペルシア語で「宮殿の光」、「宮廷の選ばれし者」の意)の名を与えます。フッラム皇子もまた王位を引き継ぎ、シャー・ジャハーンとなります。二人が幸せに暮らす姿をシーラーズが宮殿の外から覗きこみ見守る姿が涙を誘います。
18年後、ムムターズ・マハルが亡くなります。シャー・ジャハーンは愛する妻のために、これまで誰も見たことのないような美しい霊廟を作ることを決意します。模型を作らせるのですが、なかなか気にいったものがありません。ようやくこれはという模型を見つけます。それは、シーラーズが作ったものでした。これ以上美しいものを作れないようにと、シャー・ジャハーンはシーラーズの目が見えないようにしろと命じます。でも、すでにシーラーズの目はほとんど見えなくなっていたのでした。
やがて、霊廟タージ・マハルが完成。庭には、ムムターズ・マハルを愛した二人の男、シャー・ジャハーンとシーラーズが仲良く霊廟を眺める姿がありました・・・
タージ・マハル誕生秘話外伝といった感じですが、史実と異なることも多々あり、あくまで物語。
実は、50年前、高校3年生の時に、タージ・マハル建設にまつわる史実を調べたことがあるのです。
世界史の中川先生から、夏休みに何かテーマを決めてレポートをまとめなさいという宿題が出て、さて、何にしようと世界史の教科書をぱらぱらとめくって、目に止まったのがタージ・マハルの写真でした。
調べるうちに、ムガル王朝の宮廷公用語がペルシア語であることや、タージ・マハルを建設するのにペルシアから大勢の職人を呼んだことなどを知りました。もともと、何か外国語を学びたいと思っていたのですが、ペルシア語を学びたい!と閃きました。大阪外国語大学にはペルシア語科があったのですが、東京外国語大学には、ペルシア語科はなくて、ウルドゥー語科に入れば、2年生からペルシア語が必修と判明。模擬試験で、合格率25%と出たのですが、担任の野間先生から「受けてみれば」と、あっさり言われ、受験してみたら、競争率が低くて運良く受かりました。
という次第で、今の私があるのは、世界史の中川先生のお陰です。(野間先生もですね!)
夏休みが終わって、研究発表の時に、図書室から大きな写真集を借りてきて、タージ・マハルの写真を見せながら話したのですが、中川先生はタージ・マハルにいらしたことがあって、具体的に色々とお話してくださいました。中川先生は山男で、ヒマラヤやキリマンジャロに登ったことも。東大の学生の頃は、株で儲けて、かばん一杯にお札を入れて歩いていたそうです。ぼ〜っとした雰囲気の方だったのですが、さすが世界史の教師。世界の動きをしっかり見極めて株の取引をなさっていたようです。
10年程前に、アフガン研究会に参加されたという話を、アフガン研究会の事務局をしていた高校の先輩から聞きました。その時に参加していればお会いできたのにと残念です。
シーラーズといえば、イランの古都が真っ先に思い浮かんだのですが、そうではなくて、主人公の陶工の名前でした。物語はタージ・マハルにまつわるものとあって、俄然、惹かれました。(理由は後ほど♪)
『Shiraz: A Romance of India』

製作:Himansu Rai
監督:Franz Osten,
1928年にインドで撮影された無声映画をthe British Film Instituteがデジタル修復し、Anoushka Shankarによる音楽をつけたもの。音楽がとてもマッチしていて素晴らしいです。
https://m.youtube.com/watch?v=dOSvq8EncXg&feature=youtu.be
*物語*
沙漠をいく駱駝や馬の隊列。
(冒頭のこの場面で、ラージャスターンのタール沙漠を駱駝に揺られて散策したことを思い出しました。なお、字幕には、the Persian desertとありました。)
隊列が襲われて、女性が亡くなり、幼い少女が取り残されます。沙漠に住む陶工ハサンは少女を連れ帰り、サリーマと名付けて、息子シーラーズと共に育てます。兄妹のように育った二人ですが、ほのかな恋心が。ある日、サリーマは奴隷商人に連れ去られ、奴隷市場で売り飛ばされます。売られた先はムガル王朝の宮廷。美しいサリーマは、フッラム皇子(後のシャージャハーン)に見初められます。
フッラム皇子との結婚を望んでいたダリアが嫉妬して、サリーマとシーラーズの密会を画策し、フッラム皇子に目撃させます。フッラム皇子は怒って、シーラーズを象の足で踏ませる死刑を命じます。寸でのところで、ダリアの仕業だと判明し、シーラーズは命拾いします。 皇子のところに連れてこられたシーラーズを前に、サリーマは皇子に「シーラーズのことは兄として慕っていただけ、愛するのはあなた」と答えます。シーラーズは、サリーマが奴隷商人に連れ去られた時に残していったお守りを差し出します。そのお守りは、皇后ヌール・ジャハーンが姪のアルジュマンド皇女に譲ったもので、サリーマは皇女の娘だと判明します。
フッラム皇子はサリーマにムムターズ・マハル(ペルシア語で「宮殿の光」、「宮廷の選ばれし者」の意)の名を与えます。フッラム皇子もまた王位を引き継ぎ、シャー・ジャハーンとなります。二人が幸せに暮らす姿をシーラーズが宮殿の外から覗きこみ見守る姿が涙を誘います。
18年後、ムムターズ・マハルが亡くなります。シャー・ジャハーンは愛する妻のために、これまで誰も見たことのないような美しい霊廟を作ることを決意します。模型を作らせるのですが、なかなか気にいったものがありません。ようやくこれはという模型を見つけます。それは、シーラーズが作ったものでした。これ以上美しいものを作れないようにと、シャー・ジャハーンはシーラーズの目が見えないようにしろと命じます。でも、すでにシーラーズの目はほとんど見えなくなっていたのでした。
やがて、霊廟タージ・マハルが完成。庭には、ムムターズ・マハルを愛した二人の男、シャー・ジャハーンとシーラーズが仲良く霊廟を眺める姿がありました・・・
タージ・マハル誕生秘話外伝といった感じですが、史実と異なることも多々あり、あくまで物語。
実は、50年前、高校3年生の時に、タージ・マハル建設にまつわる史実を調べたことがあるのです。
世界史の中川先生から、夏休みに何かテーマを決めてレポートをまとめなさいという宿題が出て、さて、何にしようと世界史の教科書をぱらぱらとめくって、目に止まったのがタージ・マハルの写真でした。
調べるうちに、ムガル王朝の宮廷公用語がペルシア語であることや、タージ・マハルを建設するのにペルシアから大勢の職人を呼んだことなどを知りました。もともと、何か外国語を学びたいと思っていたのですが、ペルシア語を学びたい!と閃きました。大阪外国語大学にはペルシア語科があったのですが、東京外国語大学には、ペルシア語科はなくて、ウルドゥー語科に入れば、2年生からペルシア語が必修と判明。模擬試験で、合格率25%と出たのですが、担任の野間先生から「受けてみれば」と、あっさり言われ、受験してみたら、競争率が低くて運良く受かりました。
という次第で、今の私があるのは、世界史の中川先生のお陰です。(野間先生もですね!)
夏休みが終わって、研究発表の時に、図書室から大きな写真集を借りてきて、タージ・マハルの写真を見せながら話したのですが、中川先生はタージ・マハルにいらしたことがあって、具体的に色々とお話してくださいました。中川先生は山男で、ヒマラヤやキリマンジャロに登ったことも。東大の学生の頃は、株で儲けて、かばん一杯にお札を入れて歩いていたそうです。ぼ〜っとした雰囲気の方だったのですが、さすが世界史の教師。世界の動きをしっかり見極めて株の取引をなさっていたようです。
10年程前に、アフガン研究会に参加されたという話を、アフガン研究会の事務局をしていた高校の先輩から聞きました。その時に参加していればお会いできたのにと残念です。
2020年05月17日
モロッコ、アマズィーグ族の姉妹『ハウス・イン・ザ・フィールズ』 ★オンライン公開中 (咲)
緊急事態宣言で映画館が休館を余儀なくされている中、公開予定作品の一足早いオンラインでの配信が続々!
その中に、モロッコのアトラス山脈の村で暮らすアマズィーグ族の姉妹を追ったドキュメンタリーがあります。
アマズィーグ族というとピンとこないかもしれませんが、蔑称で、ベルベルと呼ばれてきた人たちです。フェニキアやローマやアラブが北アフリカに侵攻する前から、暮らしていた人たち。今も、エジプトからモロッコに至る北アフリカに点在して暮らしていて、モーリタニア、ニジェール、マリにもいます。モロッコは特に多くて、人口の半分を占めています。
ベルベルが蔑称だということは知っていたのですが、彼ら自身の言葉では、アマズィーグ(自由の民)だということを知ったのは、2016年3月、上智大学アジア文化研究所の連続講座「ベルベルの言語と文化」でのことでした。
この講座で教わったことは後で触れるとして、まずは映画のことから。

『ハウス・イン・ザ・フィールズ』
原題: TIGM N IGREN
2017年/モロッコ、カタール/アマズィーグ語他/1:1.85/86分
監督・撮影:タラ・ハディド
監督のタラ・ハディドは、世界的建築家ザハ・ハディドを叔母に持つ方。写真家としても活躍しています。5年にわたって現地に通って、寝食をともにして本作を作りました。女性だからこそ映せる女性の世界。
冒頭、手作りの素朴な弦楽器を弾く男。
遠くからアザーン(モスクからのお祈りを呼びかける声)が聴こえてきて、男は手を止め、アザーンに耳を傾けます。
イスラームの教えが暮らしの礎になっていることを感じさせてくれる始まりです。
この弦楽器を弾く姿、季節の節目節目に挿入されています。
物語の中心になるのは、19歳の姉ファティマと妹のカディジャ。
ちなみに、ファティマは、預言者ムハンマドの娘でムハンマドの従弟アリー(後の第4代正統カリフ)と結婚した女性の名前。
カディジャ(Khadīja)は、日本では通常ハディージャと表記されますが、「カ」でも「ハ」でもない、日本語にはない発音。ムハンマドの最初の妻で、ファティマの母親の名前。
ファティマはラマダン明けに結婚することが決まって、学校をやめます。結婚に怖れはあるけれど、結婚は義務だからと親の決めた相手を受け入れています。(クルアーンに「結婚はすべきもの」と書かれています)
カディジャは、いつも一緒に遊んだりイチジクを積んだりしていた姉と離れるのが寂しくてなりません。弁護士になりたいと思っていますが、姉と同様、結婚のために学校をやめなくてはいけないかもという不安も抱えています。それも父次第。父はカディジャは頭がいいから卒業させたいと実は思っています。
朝5時から食事の用意をする母。ラマダン(断食)月なので、日が昇る前に食事を済ませないといけません。暗い中、食事をする一家。
イチジク、アーモンド、りんご・・・自然の恵みに囲まれて、静かに暮らす人々。
やがて羊が屠られ、断食明けのお祭り。
男たちの太鼓にあわせて歌う女たち。
花嫁に仕立てられたファティマのはにかむ姿。
白い鳩を花嫁に例えて、門出を祝う弦楽器の弾き語り。
カディジャは、町に旅立つ姉を寂しそうに見送る・・・
*******
カディジャが、国王令で男女同権をうたっていることを話題にしています。
モロッコの現国王モハメド6世は、2002年3月に結婚したときに、王妃の写真を公表したことで一躍話題になりました、これまでモロッコ王室では王妃の写真どころか名前も公表しないのが慣例だったのです。ラーラ・サルマ妃が民間出身なのも、一夫一婦制を宣言したのも、これまでなかったことでした。
モハメド6世、いろいろと問題も漏れ聞こえてきますが、これまでの慣習を打ち砕こうとしているのは確かです。
言語に関しても、モロッコの公用語はアラビア語で,第二言語はフランス語でしたが、2003 年からアマズィーグ語が義務教育の授業に導入され、2011年の憲法改正時に公用語として認められました。
先に述べた上智大学アジア文化研究所での<旅するアジア2015>第6回連続講演会「ベルベルの言語と文化」では、堀内里香さんより、アマズィーグ語の手ほどきを受けました。
3日間の予定が、補修を含めて5日間。無料で、テキスト付という太っ腹でしたが、2回目にはティフィナグ文字の単語を読ませるというスパルタ教育でした。
ティフィナグ文字は,カルタゴのポエニ文字(新フェニキア文字)と密接な関係がある古代のリビア文字の直系。アラビア文字とは全く異なります。
モロッコの小学校の先生は、アラビア語とアマズィーグ語の両方を教えなくてはならなくて、母語でない方の言葉を教えるのはかなり大変なのではと思います。
でも、同じ国で暮らす違う民族の人たちが、お互いの言葉を学ぶというのは、相互理解を深める基本。それをまだ頭の柔らかい小学生の時から学ばせるのは素晴らしいことだと思います。
映画の中で、友人(?)がアラビア語でクルアーンかハディースの一節を語る場面があって、「習った?」と聞かれたカディジャが「まだ」と答えていました。アラビア語の授業もあるのですね。
フランス語の絵本を読む場面もあって、3つの言語を習得するのが、モロッコの人たちにとって当たり前のことなのだなぁと感じました。
映画では、ティフィナグ文字のアマズィーグ語が冒頭や、合間に季節などを表わす言葉として使われています。エンドロールの一番最後だけ、アマズィーグ語とフランス語が並んでいて、アラビア語はドーハの組織名のみでした。

IRCAMティフィナグ文字表
出典:http://www.chikyukotobamura.org/muse/wr_africa_10
珍しいアマズィーグ語を知ることのできる味わい深いドキュメンタリー。
ぜひ、いち早くオンラインでどうぞ!
『ハウス・イン・ザ・フィールズ』
配給:アップリンク
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/fields/
配信期間:5月1日(金)〜5月28日(木)/価格:1900円(税込み)/視聴期間:2日間
☆オンライン配信にて緊急公開
☆2020年に公開予定がコロナ禍で延期になりオンライン配信で緊急公開されましたが、この度、劇場での公開が決まりました。
★2021年4月9日(金)アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
★タラ・ハディド監督インタビュー (アップリンク提供)
その中に、モロッコのアトラス山脈の村で暮らすアマズィーグ族の姉妹を追ったドキュメンタリーがあります。
アマズィーグ族というとピンとこないかもしれませんが、蔑称で、ベルベルと呼ばれてきた人たちです。フェニキアやローマやアラブが北アフリカに侵攻する前から、暮らしていた人たち。今も、エジプトからモロッコに至る北アフリカに点在して暮らしていて、モーリタニア、ニジェール、マリにもいます。モロッコは特に多くて、人口の半分を占めています。
ベルベルが蔑称だということは知っていたのですが、彼ら自身の言葉では、アマズィーグ(自由の民)だということを知ったのは、2016年3月、上智大学アジア文化研究所の連続講座「ベルベルの言語と文化」でのことでした。
この講座で教わったことは後で触れるとして、まずは映画のことから。

『ハウス・イン・ザ・フィールズ』
原題: TIGM N IGREN
2017年/モロッコ、カタール/アマズィーグ語他/1:1.85/86分
監督・撮影:タラ・ハディド
監督のタラ・ハディドは、世界的建築家ザハ・ハディドを叔母に持つ方。写真家としても活躍しています。5年にわたって現地に通って、寝食をともにして本作を作りました。女性だからこそ映せる女性の世界。
冒頭、手作りの素朴な弦楽器を弾く男。
遠くからアザーン(モスクからのお祈りを呼びかける声)が聴こえてきて、男は手を止め、アザーンに耳を傾けます。
イスラームの教えが暮らしの礎になっていることを感じさせてくれる始まりです。
この弦楽器を弾く姿、季節の節目節目に挿入されています。
物語の中心になるのは、19歳の姉ファティマと妹のカディジャ。
ちなみに、ファティマは、預言者ムハンマドの娘でムハンマドの従弟アリー(後の第4代正統カリフ)と結婚した女性の名前。
カディジャ(Khadīja)は、日本では通常ハディージャと表記されますが、「カ」でも「ハ」でもない、日本語にはない発音。ムハンマドの最初の妻で、ファティマの母親の名前。
ファティマはラマダン明けに結婚することが決まって、学校をやめます。結婚に怖れはあるけれど、結婚は義務だからと親の決めた相手を受け入れています。(クルアーンに「結婚はすべきもの」と書かれています)
カディジャは、いつも一緒に遊んだりイチジクを積んだりしていた姉と離れるのが寂しくてなりません。弁護士になりたいと思っていますが、姉と同様、結婚のために学校をやめなくてはいけないかもという不安も抱えています。それも父次第。父はカディジャは頭がいいから卒業させたいと実は思っています。
朝5時から食事の用意をする母。ラマダン(断食)月なので、日が昇る前に食事を済ませないといけません。暗い中、食事をする一家。
イチジク、アーモンド、りんご・・・自然の恵みに囲まれて、静かに暮らす人々。
やがて羊が屠られ、断食明けのお祭り。
男たちの太鼓にあわせて歌う女たち。
花嫁に仕立てられたファティマのはにかむ姿。
白い鳩を花嫁に例えて、門出を祝う弦楽器の弾き語り。
カディジャは、町に旅立つ姉を寂しそうに見送る・・・
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カディジャが、国王令で男女同権をうたっていることを話題にしています。
モロッコの現国王モハメド6世は、2002年3月に結婚したときに、王妃の写真を公表したことで一躍話題になりました、これまでモロッコ王室では王妃の写真どころか名前も公表しないのが慣例だったのです。ラーラ・サルマ妃が民間出身なのも、一夫一婦制を宣言したのも、これまでなかったことでした。
モハメド6世、いろいろと問題も漏れ聞こえてきますが、これまでの慣習を打ち砕こうとしているのは確かです。
言語に関しても、モロッコの公用語はアラビア語で,第二言語はフランス語でしたが、2003 年からアマズィーグ語が義務教育の授業に導入され、2011年の憲法改正時に公用語として認められました。
先に述べた上智大学アジア文化研究所での<旅するアジア2015>第6回連続講演会「ベルベルの言語と文化」では、堀内里香さんより、アマズィーグ語の手ほどきを受けました。
3日間の予定が、補修を含めて5日間。無料で、テキスト付という太っ腹でしたが、2回目にはティフィナグ文字の単語を読ませるというスパルタ教育でした。
ティフィナグ文字は,カルタゴのポエニ文字(新フェニキア文字)と密接な関係がある古代のリビア文字の直系。アラビア文字とは全く異なります。
モロッコの小学校の先生は、アラビア語とアマズィーグ語の両方を教えなくてはならなくて、母語でない方の言葉を教えるのはかなり大変なのではと思います。
でも、同じ国で暮らす違う民族の人たちが、お互いの言葉を学ぶというのは、相互理解を深める基本。それをまだ頭の柔らかい小学生の時から学ばせるのは素晴らしいことだと思います。
映画の中で、友人(?)がアラビア語でクルアーンかハディースの一節を語る場面があって、「習った?」と聞かれたカディジャが「まだ」と答えていました。アラビア語の授業もあるのですね。
フランス語の絵本を読む場面もあって、3つの言語を習得するのが、モロッコの人たちにとって当たり前のことなのだなぁと感じました。
映画では、ティフィナグ文字のアマズィーグ語が冒頭や、合間に季節などを表わす言葉として使われています。エンドロールの一番最後だけ、アマズィーグ語とフランス語が並んでいて、アラビア語はドーハの組織名のみでした。

IRCAMティフィナグ文字表
出典:http://www.chikyukotobamura.org/muse/wr_africa_10
珍しいアマズィーグ語を知ることのできる味わい深いドキュメンタリー。
ぜひ、いち早くオンラインでどうぞ!
『ハウス・イン・ザ・フィールズ』
配給:アップリンク
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/fields/
配信期間:5月1日(金)〜5月28日(木)/価格:1900円(税込み)/視聴期間:2日間
☆オンライン配信にて緊急公開
☆2020年に公開予定がコロナ禍で延期になりオンライン配信で緊急公開されましたが、この度、劇場での公開が決まりました。
★2021年4月9日(金)アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
★タラ・ハディド監督インタビュー (アップリンク提供)
2020年04月22日
中国の映画業界(白)
映画.comに中国の映画業界に関するニュースが紹介されていました。
「中国の映像関連会社5328社がコロナ禍で倒産! 映画館の営業再開は見込みなし」
ひゃー!!
https://eiga.com/news/20200421/8/
「中国の映像関連会社5328社がコロナ禍で倒産! 映画館の営業再開は見込みなし」
ひゃー!!
https://eiga.com/news/20200421/8/
2020年04月16日
目標額1億円を突破しました!!(白)
未来へつなごう!!
多様な映画文化を育んできた全国のミニシアターをみんなで応援
ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金
多様な映画文化を育んできた全国のミニシアターをみんなで応援
ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金
1億円の目標額をなんと3日で越えました。
すごい〜〜〜!!(自分が始めたわけでもないのに嬉しくて泣きそう)
募集期間はあと29日残っています。応募締め切りは5月14日23:59まで。
詳しくは↓のリンクから。寄付だけも、リターンのあるのも、金額も選べます。
https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid
シネマスコーレさんの続報